9 生徒会会議
遅くなりましたm(__)m
それから瞬く間に王子様ことオリバー様が現れた。
「やほー、メイソン!
どしたのー?ルビー様のドラゴン化の件?」
ノリ軽っ!エイハブさんの様に、かなり真実の部屋の影響を受けているのか……と思ったけど、オリバー様の年齢は12歳。まぁ、(王子様ということを除けば)年相応と言える。
「違うよ。今はルビー様じゃなくてルビィだよ、オリバー様。」
ソコなの?……いや、そうだけど。
王子様って、もっとこー、ねぇ?
「ごめん、ごめん。」と、テヘっとしながらこちらを見るオリバー様にかくかくじかじかと説明するエイハブさん。
「ふむふむ…つまり、リリィちゃんはデュエトーナメントでルビィをドラゴン化させたい。そして、その為のドラゴン化の方法を探すことは王国的に大丈夫かどうか…ってことだね。」
的確に問題点を纏めてくれたオリバー様。でも、悩んでいらっしゃる様子だ。
「正直、僕の一存で決めることは厳しいかな。でも、もう皆に噂が広がっちゃったなら生徒会のメンツ的にドラゴン化させたいよね〜。」
じっとメイソンを睨むエイハブさん。「……すみませんでした」と落ち込むメイソン。
「むぅ。……僕だけの一存じゃ駄目だけど、生徒会役員全員の押しもあればまだ良いんだけどなー
何で、シャーロットさんはリリィちゃんを敵対視したんだろうね?」
……。今度は私が落ち込むことになった。私、恨まれる覚えが無いんだけどなー…彼女は湖でイベントがあると言っていた。…でも、ルビィを汚らわしいって言うなんて正直むかつく。むしろ、ルビィは水の浄化に貢献してるのになぁ〜…
「おいコラ、アネット。真面目に考えろ。」
おっと、エイハブさんに言われて反省からは遠退いてしまったことに気がつく。
「あの、昨日って何か湖でイベントがあったのですか?」
「?…湖でイベント?そんなもの無いけど…」
取り敢えず聞いてみたが、やはりイベントは無い様だ。じゃあ、私は一体何の邪魔をしたと言うのだろう?
「とにかくさ、生徒会を集めて会議をしてみない?」
この続く沈黙に痺れを切らしたメイソンが提案した。それに同意したエイハブさんは「今からシャーロットを呼ぶ」とこれまた“伝達魔法”を使った。
《あら。丁度私からも言いたいことがありましたの。良い機会ですわ。でも、私からそちらへ出向くのは御免ですわ。真実の部屋がある第一生徒会室は、生徒会役員の憩いの場…私はまだリリィ=アネットを生徒会役員として認めていませんの。皆様ご勝手に決めて仕舞われた様ですけどね?…第二生徒会室へ来なさい!》
顔を青ざめさせたエイハブさんは私達に第二生徒会室に行く様に促した。…何があったのだろう?
「凄い…こんな所に生徒会室があったんだ……」
生徒会室なんて落ちこぼれの私に縁が無かったから気が付かなかっただけなのか、意外と単純な場所にあった。…でも、生徒会室ってどんなに“探知魔法”が得意な人でも探せないとか色々叫ばれていたのになぁ…どういうことなのだろうかと思って、メイソンの顔を見るがメイソンは「フフッ」と笑うだけで答えてはくれない。…さっきまで…真実の部屋にいた時なら、答えてくれていただろう。他にも、さっきまでならエイハブさんは「フン。お前なんかじゃ見つけることなんて出来ねーよ」と憎まれ口を叩くはずだ。私が観察していたのは、さっきまでの2人。…もし、この会議が失敗をすれば…私が生徒会役員になる、という話も無くなる…。
第二生徒会室に入ると
「こんばんは、リリィ=アネットさん?」とシャーロット=イベリアが待ち構えていた。
「既に知っている様だけど、一応自己紹介させて頂きますわ。私はシャーロット=イベリア。今召喚することは出来ないけれど、相棒はジュエルですの。」
改めて正面から見ると、彼女は美人、というよりは可愛らしい女の子という印象だ。でも、単に可愛らしいと表現するのは難しい。低い身長ではあるが凛とした態度のおかげで弱々しさを感じさせない。またお人形の様な大きくてパッチリとした目からは強い眼光により意思の強さが表れている。
確かに『女狐』と呼ばれるだけのことはある。こんなに可愛い見た目なのにキツイ性格……
「……む、なんか失礼なことでも考られてる気がするんだけど……」
膨れた様な…違う雰囲気の彼女の声が聞こえたが気の所為だろう。初見の印象とはかけ離れている。うん。幻聴だろう。
「おい、それより会議を始めるぞ。」
エイハブさんの言葉でハッとする。
「議論は、生徒総会やデュエトーナメントの為にルビィをドラゴン化させるかどうかだ。もし、ドラゴン化させるなら…ここにいる4人全員の請求が必要となる。」
「お待ちを。先程も言いましたが、私はまだリリィ=アネットを生徒会役員として認めていませんわ。」
そう反論させるのは仕方が無い。私の役員の話は、全て彼女抜きで決めてしまった。
「もちろん、彼女はまだ仮生徒会役員だよ。承認されて無いからね。」
私はそのメイソンの一言に不安となった。
…メイソンは今中立の立場なんだ。
あくまで予想だが、
真実の部屋を離れることで“本来の自分の性質を表す効果”が薄くなっている。そのせいで、彼は今「ドラゴンの研究がしたい!」という気持ちも薄くなっている。「出来れば研究はしたいが、話合いで決まったことならば諦める。」つまりは、私とイベリアとの中立な立場に立っている。
…エイハブさんはどうなんだろう?
メイソンが中立ならば、エイハブさんの立場も同じなのだろうか?…多分同じであろう。仮に(既に城に帰ってしまわれた)オリバー様がここにいたとしても、中立の立場をとられたであろう。
普通ならエイハブさんは同じ生徒会役員であるイベリアの味方をするかもしれないと考えかもしれない。でも、真実の部屋で見た姿が彼の本来のものならば…彼は1度自分の認めたものは最後まで認める。(仮と言われているから、完全に認められた訳じゃないけど…;)ならば、わざわざイベリアとの間に口を挟まないだろう。
ーこれは、私とイベリアの問題ー
私が彼女を認めさせなければいけない。私は口を開いた……