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第二十四章 巨石

石舞台古墳は、田の向こうに静かに横たわっていた。


巨大な天井石。


灰白色の岩肌。


千三百年の風雨が刻んだ傷。


沈帰塵は立ち止まった。


見上げる。


清乃も隣で見上げた。


「大きいですね。」


「そうだ。」


沈帰塵はゆっくり歩き始めた。


石の周囲を一周する。


ときどきしゃがむ。


土へ手を当てる。


草を見る。


石を見る。


何も言わない。


清乃も黙って後ろを歩いた。


西側まで来る。


沈帰塵の足が止まる。


しゃがみ込む。


掌を土へ置く。


長い時間、そのままだった。


「何かありますか。」


「温度が違う。」


清乃も手を当てた。


冷たい。


石の冷たさしか分からない。


沈帰塵は『石舞台発掘調査概報』を開く。


石室の図面。


墓道の位置。


静かに指を置く。


「ここだ。」


「石室の真下。」


「空間がある。」


「空間?」


「まだ残っている。」


沈帰塵は珠を取り出した。


掌に載せる。


風が吹く。


珠は静かだった。


彼は目を閉じる。


しばらくして開いた。


「西村さんも、ここまで来ていた。」


清乃は驚いた。


「分かるんですか。」


「分かる。」


「掘らなかったんですね。」


沈帰塵は静かにうなずいた。


「掘れなかったんじゃない。」


「掘らなかった。」


風が石をなでる。


草が揺れる。


「どうしてですか。」


「守るためだ。」


清乃は石舞台を見上げた。


「先生は知っていた……。」


「知っていた。」


沈帰塵は小さく言った。


「知っていて、待っていた。」


「誰を。」


沈帰塵は答えなかった。


珠を見つめる。


千三百年前から。


誰かが残したもの。


百年前。


誰かが探したもの。


二十年前。


誰かが守ったもの。


風だけが吹いていた。

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