第2話 産業遺産の前で
『ターフのカノジョ外伝 = チャリティーアイドルホースベコ =』は北陸復興支援と地方競馬(金沢競馬含む)の繁栄を目的に「お座敷ちゃんねる」が展開している北陸復興支援プロジェクト(タフカノベコプロジェクト)から出てきた2.5次元[3次元ベース]の『ターフのカノジョ外伝 = 北陸復興姫ベコ =』と2次元ライトノベル『ターフのカノジョ』を実際の競走馬ベコを介して世界を繋ぐ2.5次元ノベル。
ベコを現実へ引き出しリアルな陣営の想いとベコのブログ部分とターフのカノジョとクロスオーバーさせた物語です。
小松の石切り場。
これが日本遺産、金色ともいえる荒れた岩肌がむき出しになったこの場所は夏の湿気を含んだ風が重く流れどこか“人が踏み入ってはいけない場所”のような気配を漂わせていた。
さなとまりあは車の横で腕を組んだまま立ち尽くしていた。
到着してからすでに三十分。
応援に来るはずのチームDは影も形もない。
「・・・いっこうに来ないね」
まりあがため息をつき、スマホを取り出す。
「まーなに連絡してみる。さすがに遅すぎる」
通話ボタンを押す指が、わずかに震えていた。
「これまずい。かなりまずいかも…」
白衣の女性が焦りを隠せずキーボードを叩く指が早くなる。
その肩にスーツ姿の女性が静かに手を置いた。
「どうしたの?」
「チームDが・・・違う場所に向かっています。誤情報を流された可能性が高いです!」
スーツの女性は眉ひとつ動かさずただ冷静にモニターを見つめた。
「・・・少しはやるようね」
白衣の女性は唇を噛みながらさらに端末を操作する。
画面に映る地図は指令本部の想定とはまったく違う方向へ進むチームDの位置を示していた。
「まりあ、まーなからの返事は?」
さなは苛立ちを隠そうともせず足元の砂利を蹴った。
「チームDもどこ行ったかわからないし・・・これ結局取引は本当なの?嘘なの?どっちなの?」
まりあは通話を続けながらさなを横目で見た。
「まりあです。石切り場の取引誤情報?本当なの?」
数秒後、まりあはさなに向かって小さく頷いた。
スマホから声が漏れる。
『衛星と防犯カメラの情報から取引が行われているのは確実です。ただし人数的に二人で乗り込むのは危険で―』
その言葉を聞き終える前にさなはスマホを乱暴に切った。
「もう待てないって!この場を逃したら終わりじゃん!悪がのうのうとはびこるだけなんだし行くしかないでしょ!」
さなは車から飛び出し石切り場の山の上へ向かって走り出した。
まりあは慌てて後を追いながら本部へメッセージを送る。
「まずいです!さなさん動き出しました!」
さなのスマホが鳴るが振り返りもせず叫んだ。
「もういいって!捕まえちゃえばいいだけのこと!どうせ取引現場なんだし二人か三人でしょ!やっちゃえばいいんだって!」
二人は銃を構え坂を駆け上がる。
広場に出るとアタッシュケースを持った男が二人、取引の真っ最中だった。
「相手は二人か・・・まりあ、行っちゃおうか!」
「いや、さなさん危ないですって!応援を待ったほうが―」
「来ないって言ってるでしょ!もうやるしかないって!」
さなは銃を構えたまま前進する。
「はいストップ!そこまでだよ!こんなところで白昼堂々と取引なんてお天道様も許さないよ!観音下だから観音様か~」
男の一人がさなを見て鼻で笑った。
「なんだおめえ?まさかRISEってやつか?」
「だったらどうしたの?悪を成敗するのがあたしらの仕事。はい、手を挙げて床にうつぶせになりなさい」
男は銃口を向けられているにもかかわらず余裕の笑みを浮かべた。
「勝った気でいるのか?」
まりあは周囲を見渡し背筋に冷たいものが走った。
「金髪のお嬢ちゃん鋭いね。お前たちが俺たちを追い詰めたと思ってるだろ?でもな―追い詰められてるのはお前らのほうだよ。
石切り場の上を見ろ」
さなは反射的に視線を上げた。
岩場の上。四人の男がライフルを構え、こちらを狙っていた。
「そういうことだよ。武器を下ろせRISEさんよ」
石切り場の空気が一瞬で凍りついた。
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【ターフのカノジョとは】
競馬が繁栄し、法改正によって人々の日常に深く根付いた世界。
競馬産業は大きな変革を遂げ馬の生産頭数は適切に管理されるようになった。
競走馬は単なる経済動物ではなく一頭一頭がかけがえのない命として尊重され、引退後の第二の人生まで見据えた新たな産業構造が確立されていた。
その変革の中で誕生した第三の競馬体系――「学園競馬」。
専門職に就く大人たちから直接指導を受け、騎乗技術や予想技術、馬の生産・育成・管理、さらには競馬産業の運営に至るまで競馬に関わるあらゆる分野を体系的に学ぶ教育制度。
人々は、それを「競馬道」と呼んだ。
競馬道学部に集う生徒たちはそれぞれの専門分野で知識と技術を磨き、互いに競い合いながら次世代の競馬界を担う存在へと成長していく。
夢と誇りを胸に仲間と切磋琢磨する日々。
その先には、誰もが目指す栄光の舞台が待っていた。
しかし繁栄する競馬産業に目を付けた者たちもいた。
競馬界の光の裏に潜む欲望と野望に満ちた悪の影。
その脅威から競馬界と人々を守るため暗躍する者たち。
そして特殊能力「スキル」を駆使し勝負を有利に導こうとする者たちの出現。
新たな力が競馬界の在り方を変え、さらなる激動の時代へと突入していく。
これは競馬の未来を切り拓こうとする者達の物語。
馬と人が紡ぐ新たな競馬の時代。
学園競馬を舞台に少女たちの熱き青春と競馬界の光と闇が交錯する。
『ターフのカノジョ制作委員会とは』
みんなで創り未来へ受け継ぐ参加型ノベルプロジェクト
ターフのカノジョは、作者だけで物語を完成させるのではなく参加者からアイデアや意見を募り、みんなで世界を創り上げていく参加型ノベルプロジェクトです。
発起人である中原牧人だけでなく、一人ひとりの参加者が持つ発想や想いを大切にしそれぞれの視点やアイデアを物語の可能性へとつなげていきます。
さまざまな意見やアイデアを持ち寄り、互いの個性を尊重しながら一人では生み出せない新たな物語を共に創造していく。
それが『ターフのカノジョ制作委員会』の目指す創作のかたちです。
そして、このプロジェクトが目指すものは物語を完成させることだけではありません。
参加者一人ひとりの想いとアイデア、そして共に創り上げた創作の軌跡を日本の書籍というかたちで次世代へ受け継いでいくこと。
時代を超えて読み継がれ後世の人々が当時の参加者の情熱や創造性に触れられるような文化的・歴史的価値を持つ作品と記録を残すことを目指します。
誰か一人の物語からみんなの物語へ。
その想いを未来へつないでいくプロジェクトです。
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