第1話 闇が動き出す
『ターフのカノジョ外伝 = チャリティーアイドルホースベコ =』は北陸復興支援と地方競馬(金沢競馬含む)の繁栄を目的に「お座敷ちゃんねる」が展開している北陸復興支援プロジェクト(タフカノベコプロジェクト)から出てきた2.5次元[3次元ベース]の『ターフのカノジョ外伝 = 北陸復興姫ベコ =』と2次元ライトノベル『ターフのカノジョ』を実際の競走馬ベコを介して世界を繋ぐ2.5次元ノベル。
ベコを現実へ引き出しリアルな陣営の想いとベコのブログ部分とターフのカノジョとクロスオーバーさせた物語です。
福井県の牧場。
そろそろセミが鳴き始める季節、湿った夏の気配が馬房の空気に混じり始めていた。
その薄暗い馬房の中で、二つの人影がゆっくりと動いていた。
「RISEってすごいですよね。チャリティアイドルホースを使って、本当に北陸復興支援プロジェクトを進めるなんて」
金髪の女性まりあが感心したように言う。
「当たり前じゃん!誰が考えたと思ってるのよ」
もう一人の女性さなが腰に手を当て胸を張った。
「いや、私が提案したんですけど…」
まりあが控えめに返すと、さなはすぐさま言い返した。
「あたしが予算取りとかしたんだし、あたしがリーダーなんだからあたしのプロジェクトじゃん!」
「はいはい、わかりました。さなさんのお手柄です」
まりあは少し呆れたように肩をすくめる。
「まりあ、何よそれ!心こもってないじゃん!」
さなが声を張り上げるとまりあは慌てて手を振った。
「もうベコが驚くから大声はやめてください」
二人の言い合いを私はじっと見つめていた。
――さなとまりあ。
この人間は前にも会ったことがある。
今日も人参をくれるだろうか。
まりあが近づいてきて私の首元をそっと撫でてくれた。
その手は優しくて私は思わず鼻を鳴らした。
その直後さなのスマホが鳴った。
「もしもし―」
さなが応答した瞬間、スマホから溢れんばかりの声量が馬房に響いた。
『スキルプラスの取引現場を発見。直ちに急行せよ!場所はまーなが送る。チームDが先に到着しても待機させて』
「…うん、わかった」
通話を切るとさなは深く息を吐いた。
「せっかく福井に到着したばっかなのに…ベコ、また会いに来るね!」
二人は馬房の入口へ向かう。
「さなさん、緊急徴集ってどういうことですか?」
「獅子戸組みたい。まーなから場所来るから、とりあえず向かおっか」
二人の影が馬房から離れていく。
外では、パドゥドゥのオーナーが二人と話をしていた。
「あれ?今来られたばかりですがもう帰られるのですか?」
「ちょっと急用が出てきまして…」
さなは車から段ボール箱を取り出しオーナーへ手渡した。
「これ、みんなで食べてください」
「結構重いな…なんだろ」
オーナーが段ボールを開けると―
「人参…ベコにね…」
私は嬉しくて思わず耳を立てた。
車が走り出すと外の景色が流れていく。
「さなさん、ここから向かって一時間かかるのに…取引終わっているのじゃないですか?」
まりあが不安そうに言う。
さなは窓の外を見つめながらぽつりと答えた。
「だったら走らせないよ…」
その言葉がすべてを物語っていた。
さなは“終わらせる側”の人間だ。
「今回はRAWかユニコーン、どちらが情報を掴んだのでしょうね」
「まーなに場所を特定させるって言ってるからまーなじゃない?ベコとの時間を奪ったんだから、帰ったら飽きるほど胸揉んでやるんだから!」
まりあは運転しながら呆れた顔で言った。
「まーなちゃんに訴えられますよ…」
「場所は小松の石切り場。ナビ入れるよ」
さなは真剣な顔でナビを操作する。
―さなさんって、本当にキャラ作ってるんだ。
毎日大変だろうな。
まりあはそう考えながらハンドルを握った。
ピロリン。
さなのスマホが鳴る。
メッセージを返した直後、また着信音。
ピロリン。
「はぁ…まーな舐めてんの?」
急にさなが不機嫌になった。
「びっくりした!さなさん、どうしたんですか?」
「まーなに『場所わかった?なんであたしにメッセージ送ってきたの?やっぱまりあよりあたしの方が好きなんでしょ』って送ったら…」
さなはスマホを突き出す。
『どうせ、まりあさんに運転させて助手席で暇だろうと思ったので…』
「だって…どう思う?」
まりあは答えにくそうに視線をそらした。
図星だからだ。
「上司はゆっくりしていただいて…」
その言葉に、さなが敏感に反応する。
「ゆっくりしてないし!作戦考えてるんだって!」
もうこうなったら、熱が冷めるまで待つしかない。
そうこうしているうちに、集合場所の観音公民館前に到着した。
チームDはまだ来ていない。
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【ターフのカノジョとは】
競馬が繁栄し、法改正によって人々の日常に深く根付いた世界。
競馬産業は大きな変革を遂げ馬の生産頭数は適切に管理されるようになった。
競走馬は単なる経済動物ではなく一頭一頭がかけがえのない命として尊重され、引退後の第二の人生まで見据えた新たな産業構造が確立されていた。
その変革の中で誕生した第三の競馬体系――「学園競馬」。
専門職に就く大人たちから直接指導を受け、騎乗技術や予想技術、馬の生産・育成・管理、さらには競馬産業の運営に至るまで競馬に関わるあらゆる分野を体系的に学ぶ教育制度。
人々は、それを「競馬道」と呼んだ。
競馬道学部に集う生徒たちはそれぞれの専門分野で知識と技術を磨き、互いに競い合いながら次世代の競馬界を担う存在へと成長していく。
夢と誇りを胸に仲間と切磋琢磨する日々。
その先には、誰もが目指す栄光の舞台が待っていた。
しかし繁栄する競馬産業に目を付けた者たちもいた。
競馬界の光の裏に潜む欲望と野望に満ちた悪の影。
その脅威から競馬界と人々を守るため暗躍する者たち。
そして特殊能力「スキル」を駆使し勝負を有利に導こうとする者たちの出現。
新たな力が競馬界の在り方を変え、さらなる激動の時代へと突入していく。
これは競馬の未来を切り拓こうとする者達の物語。
馬と人が紡ぐ新たな競馬の時代。
学園競馬を舞台に少女たちの熱き青春と競馬界の光と闇が交錯する。
『ターフのカノジョ制作委員会とは』
みんなで創り未来へ受け継ぐ参加型ノベルプロジェクト
ターフのカノジョは、作者だけで物語を完成させるのではなく参加者からアイデアや意見を募り、みんなで世界を創り上げていく参加型ノベルプロジェクトです。
発起人である中原牧人だけでなく、一人ひとりの参加者が持つ発想や想いを大切にしそれぞれの視点やアイデアを物語の可能性へとつなげていきます。
さまざまな意見やアイデアを持ち寄り、互いの個性を尊重しながら一人では生み出せない新たな物語を共に創造していく。
それが『ターフのカノジョ制作委員会』の目指す創作のかたちです。
そして、このプロジェクトが目指すものは物語を完成させることだけではありません。
参加者一人ひとりの想いとアイデア、そして共に創り上げた創作の軌跡を日本の書籍というかたちで次世代へ受け継いでいくこと。
時代を超えて読み継がれ後世の人々が当時の参加者の情熱や創造性に触れられるような文化的・歴史的価値を持つ作品と記録を残すことを目指します。
誰か一人の物語からみんなの物語へ。
その想いを未来へつないでいくプロジェクトです。
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