第5話 繋がれる聖女
夏祭りの夜、神社の参道は人で溢れる。
屋台の灯りが熱気に揺れる浴衣姿を照らし、鈴の音が遠くから響く。
そして──待ち合わせ場所に立つ俺の前に、セコが遅れて現れた。
「ごめんなさい……遅れて」
浴衣姿の彼女は、清楚な普段よりもずっと可愛らしく、少し子どもっぽさを残した雰囲気をまとっていた。
夜空に咲く大輪の花火に照らされたその横顔と、結い上げた髪から覗くうなじ。
俺はほんのり艶っぽさを感じ、思わず息を呑む。
「どう……かわいい?」
セコが少し得意げに笑う。
「ああ、めちゃくちゃ可愛い」
俺が即答すると、セコは一瞬固まり、耳まで真っ赤に染めて俯いた。
「……っ、そ、そんなこと言われても……」
袖の端をいじりながら、視線を逸らす仕草がやけに愛らしい。
それから──人混みの中で見物客の波に押され、セコがふらりと離れかけた瞬間、俺は自然に彼女の手を取った。
「ほら、離れるなよ」
その言葉に、セコは驚いたように俺の手を見つめ、そして顔を赤く染めた。
二人の手はしっかりと繋がれていた。
人混みのざわめきの中で、セコの温もりだけがやけに鮮明に感じられる。
セコは少しうつむきながら俺の背中に隠れるように歩く。
境内の石畳を進むうちに、俺は自然と歩幅を落とした。
セコの下駄の音が小さく遅れて響くのを聞きながら、彼女に合わせてゆっくり歩く。
「……ありがと」
セコが小さく呟いた。耳まで赤くしているのが横顔からでも分かる。
やがて──俺は、セコが時折足を気にしているのに気づいた。
「お前……下駄で豆ができたな」
俺は立ち止まり、あらかじめ持ってきていた小さなポーチを開いた。
中にはオキシドール、綿棒、絆創膏。
「ほら、座れ。治してやる」
セコは目を丸くして俺を見つめ、頬を染めながら素直に足を差し出す。
蒸し暑い夜気の中、俺の手が彼女の足に触れると、小さく肩を震わせた。
消毒して絆創膏を貼ると、俺は彼女を背負った。
「タダシって、昔は私より体が小さかったのに……今はこんなに背中が大きいんだね」
背中越しに聞こえたその声は、少し照れくさそうで、でも温かかった。
俺は歩きながら、背中に伝わる彼女の体温を感じていた。
背負った拍子に、浴衣の袖から覗いた右腕の包帯が目に入った。
「セコ、その包帯……どうしたんだ?」
俺が問いかけると、セコは一瞬だけ笑みを貼り付け、すぐに視線を戻した。




