第2話 おかずを貪る聖女
昼休みの教室。
机を囲んだクラスメイトたちが、俺の弁当を覗き込んでざわついていた。
「タダシくんの弁当すごい!全部手作り?」
「まあな。自分で作ってる」
俺が淡々と答えると、みんなが「すげー!」と感嘆の声を上げる。
こういう時くらいは、俺もちょっと誇らしい気分になる。
すると隣で、セコが清楚な笑みを浮かべて弁当箱を開いた。
「実はね、私も、じゃじゃ〜ん!
手作りなの♡」
中身は彩り豊かな唐揚げ、卵焼き、煮物、野菜。見た目だけなら完璧だ。
「わぁ、聖子さんのも美味しそう!」とクラスメイトが絶賛する。
だが俺の目は誤魔化せない。
「それ、スーパーの惣菜だろ」
俺が指摘すると、セコは小さく「ちっ!」と舌打ちした。
「なあ、セコ……お前今、舌打ちしただろ?」
「違うっ……て言おうとしたの!」
耳まで赤くして抗弁するセコ。
やっぱりな。ズルしても俺には勝てない。
俺は半ば呆れながら、セコの弁当から卵焼きを一つ勝手に摘んで自分の口に放り込んだ。
「ちょ、ちょっと!?こらこら、勝手に私のおかず食べんな!」
「う〜ん、この卵焼き、昨日俺が買ったのと同じ味じゃね?」
すると、セコは一瞬固まり、すぐに清楚スマイルを貼り付ける。
だが耳まで真っ赤だ。
俺が「わ、わりい」と口を拭うと、セコは慌てて言い訳を始めた。
「べ、別におかず一つ取られたからって怒ってるんじゃないし!
私そんな食い意地張ってないし!ただ……」
……たく、白々しいにも程がある。
その直後──俺は自分の弁当に違和感を覚えた。
「……おい。なんで俺の弁当にピーマン入ってんだよ!」
セコは一瞬清楚スマイルを浮かべるが、なぜかすぐに後ろを向く。
「は? そもそもお前が自分の弁当に嫌いなもの入れてくる意味がわからん。俺へのあてつけかよ!」
しかし、セコは相変わらず後ろを向いたまま返事をしない。
「なあ、なんとか言えって!」
俺が回り込むと、セコは唐揚げを頬張ったまま目を丸くして固まった。
「ち、違うの!これは……唐揚げさんが勝手に私の口に飛び込んできただけ!」
いやいや、バクバク食ってただろ。
「お前、弁当までズルするな!」
「はぁ!? ズルじゃないし!ただ……その……ムカつくだけ!」
顔を真っ赤にして逆ギレするセコ。
クラスメイトが「仲良しだね〜」と茶化す声が飛ぶ。
俺はため息をつきながら、つい口にしてしまった。
「ほんとお前はセコいよな」
「うぅ……もう、恥かいちゃったじゃん。タダシくんのせいなんだから!」
セコはツンと横を向き、耳まで赤く染めていた。
セコいことしかやってないくせに、コイツなんでこんなにゲス可愛いんだよ。




