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チートでもらった【アクセサリ制作】はおまけでした。本命は装備枠無制限だけど、カードに載らないし関係ないよね?   作者: めざし


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第二十七話 仲間のために

あの日から、ティアさんの様子は、おかしかった。

ホームに帰ってからも、ずっと、俯いたまま。いつもの、おっとりとした笑顔は、影をひそめていた。


「ティア。……無理すんな」


バルトさんが、静かに言う。


「あんな奴の言うこと、気にすんな。お前は、銀の羽に必要だ。それだけは、変わらねえ」

「……はい。……ありがとうございます」


ティアさんは、そう言って、少しだけ笑った。

でも、その笑みは、どこか無理をしていた。震えを、必死に抑え込んでいるような。長い年月、心の奥に刺さっていた棘はそう簡単には抜けないのだ。

俺たちはただティアさんのそばにいた。

急かさず、追い詰めず。ティアさんが、自分の足で立ち直るのを、待つように。


──それで、済むと思っていた。


セイという男が、あそこまで、腐っているとは思っていなかった。


異変に気づいたのは、数日後だった。

いつものように、素材を卸しにギルドへ行くと──空気がいつもと違った。

俺たちが入ってきた瞬間あちこちでひそひそと声がする。ちらちらと、こちらを見る視線。特に、ティアさんに向けられる好奇の目…


「……ねえ、あれ」

「ああ、噂の……」

「前の街で、パーティを追い出されたんだろ? なんでも、素行が……」


その言葉が耳に届いた瞬間。ティアさんの肩が、びくりと震えた。


「……なに、これ」


ミレイさんが、眉をひそめた。

受付で俺は、事情を知る職員からこっそり聞いた。


「……ここ数日、妙な噂が、流れてるんです。聖騎士のセイ様が……あちこちで、話してるみたいで」


セイ。


「ティアさんが、前の街で、いかに使えなかったか。品行が悪くて、パーティを追い出されたとか……その、あることないこと」


あることないこと。


でたらめだ。ティアさんは、誰よりも、真面目で、誰よりも、仲間思いだ。それを、あの男は──自分に、都合のいいように、捻じ曲げて、言いふらしている。


「セイ様は、SSランクの聖騎士ですから。……ギルドでも、顔が利くんです。あの人の言うことを、みんな真に受けて……」


強者の言葉。それは、真実よりも…重い。

セイが「そうだ」と言えば、それが、事実になってしまうのだ少なくともこの街では。


「……くだらない」


ミレイさんが、吐き捨てた。


「そんな、嘘っぱち。……あたしたちが、否定してやれば」

「やめて、ミレイちゃん」


ティアさんが、消え入りそうな声で、言った。


「……いいんです。わたしが……我慢すれば」

「よくないわよ!」


ミレイさんが、声を荒げる。だが、ティアさんはただ俯くばかりだった。

我慢すれば。

その言葉が、俺の胸を締めつけた。

ティアさんは、ずっと、そうやって、生きてきたんだ。自分さえ、我慢すれば。自分さえ、役に立てば。捨てられずに、済むと思って。

その心に、また、あの男が、爪を立てている。


噂は、日に日にひどくなった。

ギルドに行くたび、ひそひそ声は、増えていく。ティアさんに向けられる視線は、冷たくなっていく。

そして、ティアさんは──日ごとに、やつれていった。

食事も、喉を通らない。

夜も、眠れていないらしい。

あの、優しくて、おおらかだったティアさんが。目に見えて、削られていく。


その日も俺たちは、ギルドにいた。


ティアさんは、みんなの後ろに、隠れるように、立っていた。それでも、聞こえてくる。


「……見ろよ、あの聖者。よく、平気な顔で……」

「セイ様が言うには、相当な好きものらしいぜ」

「へえ。あんな顔して……」


くすくす、と。嘲るような、笑い声。

ティアさんの目に涙が滲んだ。唇を噛んで、必死に、耐えている。

──その、瞬間だった。


ダァンッ!!


俺の手が、目の前の机を叩いていた。

いや、"叩いた"なんて生易しいものじゃない。

ガラガラと頑丈な木の机が、真っ二つに砕け落ちた。

Aランクの一撃。無意識に振り下ろした手が、ギルドの机を粉々にしていた。

しん、と。ギルド中が、静まり返った。


全員の視線が、俺に、集まる。


「……お、おい。今の……」

「あの、ひょろい兄ちゃんが……机を素手で……?」

「あいつ、確か……銀の羽根の、荷物持ちじゃなかったのか……?」


ざわ、と。困惑が、広がる。

そうだ。この街の連中は、知らない。俺のことなんて、"冴えない荷物持ち"くらいにしか思っていない。

そんな男が、机を、素手で叩き割った。

わけがわからないんだろう。

でも──今は、どうでもよかった。

俺は、静かに立ち上がってギルドの入り口を見た。

ちょうど、そこに。


「──おや。ずいぶん、騒がしいな」


噂の、張本人が悠然と入ってくるところだった。

セイは、砕けた机と俺を見て面白そうに目を細めた。


「これはこれは。……何かあったのか?」


しらじらしい…

全部、こいつが仕組んだくせに。

俺は、まっすぐセイを見据えた。腹の底の怒りを、抑えながら。


「……セイさん」

「なんだい?冒険者くん」

「聖騎士様は……よっぽど、お暇なんですね」


セイの、片眉が上がった。


「……ほう?」

「SSランクの大した御方が……女性一人を貶めるために、あることないこと言いふらして回るなんて。……ずいぶんとご立派な聖騎士様ですね」


ギルドがどよめいた。

セイに、面と向かって皮肉を言う奴なんていない。ましてや"荷物持ち"だと思われている俺みたいな男が。

セイの笑みが、すっと、消えた。


「……口の利き方に、気をつけろよ。誰に向かって言っている」

「聖騎士様あなたに…ですよ」


俺は、退かなかった。


「そんなに、俺たちが気に入らないなら。……陰でこそこそ噂を流すんじゃなくて。正々堂々勝負でもしませんか?」

「……勝負?」


セイの目が、興味深そうに光った。


「そうです」


俺は、はっきりと、言った。


「俺たち銀の羽根とあなたたち……どちらが、上かはっきり決めましょう」


ギルド中が、固唾を呑んで見守っていた。

セイは、しばらく俺を眺めていたが、やがてくっくっくと喉を鳴らして笑い出した


「……面白い。いいだろう。で? 何で、勝負するつもりだ」

「二十五階のフロアボス」


俺は言った。


「どちらが、早く倒せるか……それで、決めましょう」


二十五階…金剛級の壁だ。

セイは、その言葉にますます笑みを深めた。

(──こいつら、まだ二十二階が、やっとのはずだ。俺たちは、もう二十四階を狩場にしている。二十五階のボスなんて造作もない)

その顔に、そう書いてあった…勝てると確信している。


「いいぞ。……乗ってやろう…だが」


セイが、舌なめずりをするように言った。


「タダで、というわけにはいかないな……何を、賭ける?」


来た!と思った。

こいつは、必ず何か要求してくる…俺たちから、何かを奪おうとする。


「……何なら、勝負に乗ってくれるんですか?」


俺が、聞き返すと。

セイは、ゆっくりと俺の仲間たちを見回した。その視線が、フィーネさんとバルトさんの上で止まる。

嫌な目つきだった。

品定めするような。


「そうだな……」


セイが口を開いた。


「あの、バルトという男とフィーネという女を……俺のパーティによこせ」


ざわ、と空気が揺れた。


「代わりに──ガロと、ザイドを、くれてやる。悪い取引じゃないだろう? お前らからすれば、格上の二人が手に入るんだ」


人を…

まるで、物みたいに…

交換する…とこの男は言った。


「それは……」


俺は、言葉に詰まった。

バルトさんと、フィーネさんを賭ける? 仲間を賭けのコマにする?

そんなこと──できるわけが。


「いいじゃねぇかレイ──」


その声は、俺じゃなかった。

バルトさんだった。


「バルトさん!?」

「……乗ってやろうぜ、その勝負」


バルトさんが、にやりと笑った…

その目には、静かに闘志が燃えていた。


「わたしも、構いません」


続いてフィーネさんが、静かに前に出た。


「わたしと、バルトさんを賭ける。……いいですよ。その代わり──負けたら、あなたが行った非道な嘘を認めなさい。その、覚悟はおありですか?」


フィーネさんの声は、氷のように冷たかった。あの、光の消えた目でセイを、見据えている。


「フィーネさん、バルトさん……!」


俺が、止めようとすると。


「レイ、大丈夫だ」


バルトさんが、俺の肩を叩いた。


「俺たちは負けねえ。……お前らを、信じてるからな」


その言葉に、俺は胸が熱くなった。

賭けに、乗ったんじゃない。

二人は──"負けない"と信じているんだ。

俺たちのことを【銀の羽根】のことを。


「……おいおい」


そのとき、呆れたような声が割り込んできた。

ガロさんと、ザイドさんだった。

二人とも、頭を抱えている。


「お前ら……勝手に、話を進めやがって」


ガロさんが、ため息をつく。だが、その顔はどこか楽しそうでもあった。


「……まあ、いいぜ。やるからには、真剣にやらせてもらうぜ。手加減はしねえ」


そう言って、ガロさんはセイのほうを振り返った。

その目が、鋭く光る。


「──だがな、セイ。俺たちは、先に言っておく」


ガロさんの声が低くなった。


「この勝負が、どうであれ。……俺たちは、お前のパーティを抜ける。決定事項だ」

「……なに?」


セイの、顔色が変わった。


「ずっと、思ってたんだ。……お前のやり方は、間違ってる。人を、駒みたいに扱いやがって。……俺は、昔、それで、大事なものを失いかけた」


ガロさんの目が、ちらりと俺を見た。

かつて、俺を、切り捨てたその過ちを、ガロさんは忘れていない。


「二度と、同じ轍は踏まねえ。……勝っても、負けても俺たちは、お前とは袂を分かつ」

「そうだ」


ザイドさんも、静かに、頷いた。


「強さだけで、人はついてこない。……お前は、それを、学ぶべきだったなセイ」


セイの顔が、屈辱に歪んだ。

自分のパーティの主力二人に面と向かって、見限られたのだ。しかも、こんな、衆人環視の中で。


「……いいだろう」


セイが、絞り出すように言った。


「勝負で、目にもの見せてやる。……お前たちが、俺を、選ばなかったことを。後悔、させてやる」


こうして。

俺たち銀の羽根と、セイのパーティの勝負が決まった。

二十五階のフロアボスをどちらが早く倒すか。

賭けるのは──バルトさんと、フィーネさん。

負ければ、二人は、あの男のパーティに、渡ってしまう。


「……レイさん」


ギルドを出た、その帰り道の道中でティアさんが、そっと俺の隣に来た。


「……ごめんなさい。わたしのためにこんな……」

「謝らないでください、ティアさん」


俺は、首を振った。


「ティアさんは、俺たちの仲間です。……仲間を、傷つけられて黙ってられませんよ」

「……レイさん」

「それに」


俺は、拳を握った。

胸の奥に、しまってあるあの"手応え"を、思い出しながら。

(……見せてやる)

スキルリングの合成。まだ、誰にも見せていない、俺の切り札。

二度とあの男にティアさんを──俺の仲間を、"替えが利く"なんて、言わせない。


「……勝ちますよ。絶対に」


俺がそう言うと。

ティアさんは、少しだけ泣きそうな顔で。

それでも、確かに頷いた。

決着をつける

二日後開始の勝負で!必ず俺たち銀の羽が勝利を掴む!

そしてこの優しい人の笑顔を取り戻してみせる!


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