↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートでもらった【アクセサリ制作】はおまけでした。本命は装備枠無制限だけど、カードに載らないし関係ないよね?   作者: めざし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/24

第十六話 見る目のない王

模擬戦の日が来た。

場所は、ギルドの闘技場。

正式に、ギルドが認めた公式の模擬戦だ。

職員が立ち会い木剣と模擬武器で戦う。殺傷能力の高い魔法は禁止。そういう決まりだった。


そして――


闘技場の観客席は、驚くほど、埋まっていた。


「見ろよ、あの王狼の牙だ」

「金級で、威張り散らしてる、あいつらか。いけ好かねえよなあ」

「それに挑むのが、あの銀の羽根だろ? 見ものだぜ」

「銀の羽も俺達のフィーネさんを独占してるんだぜ!!畜生め!!!」


ざわめきが、聞こえてくる。金級【王狼の牙】。かたや、まだ正式には金級に認定されていない【銀の羽根】。

格上への挑戦。

しかも、王狼の牙は、その傲慢さで街中の冒険者から煙たがられていた。

だから――

観客の多くは、俺たちの側についていたが一部の人たちからはフィーネさんをさらった大悪党のレッテルをはられていた。


「……ふん。ずいぶんと、ギャラリーが多いじゃねえか」


正面に立つガロさんが鼻を鳴らす。

その後ろに、ケイルさん、ドグさん、バズさん。そして

――黒装束の、ザイド。


「せいぜい、無様な負け方を、見せてやれよ。荷物持ち」

「……いえ」


俺は、静かに木剣を構えた。


「今は、荷物持ちじゃありません。銀の羽根のレイとして。……よろしくお願いします」

「はっ!せいぜい粋がってろっ」


そんなやり取りをしている最中にギルドの職員さんがルールを説明しいよいよ合図がなる。


「――始め!」


職員の合図。


その瞬間。


ザイドが、動いた。

速い。

暗殺者の縮地。一瞬で間合いを詰めてくる。その狙いは

―後衛のミレイさんと、フィーネさん。


しかし...

ヒュッ、ヒュッ、ヒュンッ!


三本の矢が、ザイドの足元を縫うように突き立った。


「――っ」


ザイドの、足が止まる。踏み込もうとしたその先を次の矢がまた封じる。

フィーネさんの狙撃でザイドの動きを完全に封じ込んだ。


「あなたの相手は、わたしです」


フィーネさんが、静かに次の矢を番える。


「動けば射ます。動かなくても射ます。……さあ、どうしますか?」


ザイドの、額に汗が滲む。動けば、確実に射られる。

かといって止まっていても削られる。リンドールの弓聖。その圧倒的な狙撃の精度に上位職の暗殺者が

――完全に、釘付けにされていた。


その間に。


「レイ、行きなさい! ガロはあんたよ!」

「はい!」


俺は、ガロさんへ向かった。


「はっ、来やがったか、荷物持ち!」


ガロさんが、巨大な、模擬の大剣を、振りかぶった。


ぶうんっ!


凄まじい風圧。さすがは、豪傑。

かすっただけでも吹き飛ばされる一撃。

......だが!!!

俺は、それを半歩横に避けた。


「なにっ!!」


大剣が空を切る。速さが違う。

ガロさんの力は確かに圧倒的だ。

でも、当たらなければ意味がない。俺の敏捷は210。ガロさんより倍近く速い。

その差が、この間合いを支配する。


「ハアッ!」


バシッ!!


俺は、がら空きになったガロさんの胴を模擬剣で打った。


「ぐっ!? ……こ、この、ちょこまかとっ!」


ガロさんが、怒りに任せて模擬剣を振り回す。だが、当たらない。

俺は、その全てを見切ってかわしそのたびに一撃を返す。


ダッ!ドゥッ!!


「~~~!!!くそっ! 止まれ! 逃げ回ってんじゃねえぇっ!」


打ち合いは一方的だった。


力は、ガロさんが上。

でも、その力がまるで届かない。振っても、振っても、当たらずそのたびに確実に打たれる。上位職の豪傑がC ランクの....俺に。手も足も出せずにいた。


観客席がどよめく。


「おい、あのガロがまったく当てられてねえぞ!?」

「逆に、一方的にやられてる……あの黒髪の子何者だ!?」

「くそっ、くそっ! おい、お前ら! 何、見てやがる! 手を貸せ!」


追い詰められたガロさんが、味方に怒鳴った。


「ケイル! 魔法だ、あいつを、動きを止めろ! ドグ、バズ、囲め! ……俺の、指示通りに動けよ!!」


その、余裕のなさ。統率など、そこにはなかった。ただ、焦って喚き散らすだけ。

味方を、道具みたいに怒鳴りつける。……ああ。二年間、俺が見てきたあの姿だ。


「ちっ……仕方ねえ!」


ケイルさんが、舌打ちして、杖を掲げた。その、切っ先に、赤い炎が渦を巻く。

それは――

明らかに、模擬戦で禁止されている殺傷力の高い炎の魔法だった。


「フレアランスッ!」


炎の槍が、俺めがけて放たれる。

ルール違反。

だが、頭に血が上ったケイルさんは気にしなかった。


…しかし。


「――させるかよっ!」


どんっ、と。


俺の前に、バルトさんが、割り込んだ。木の大盾を構えて。炎の塊を真っ向から受け止め

――そして、盾で殴りつけるようにかき消した。


瞬間で炎が霧散する。


「おい、ケイルだったか?」


バルトさんが、あきれ顔でケイルさんを見た。

それから、闘技場中に響く声で言い放った。

「模擬戦で、殺傷魔法かよ。……なあ、お前らこんな威力で本当にブレイズファングを倒したのか?」


その、一言に。


観客席が、ざわりと揺れた。

ブレイズファング。

十五階の壁。王狼の牙が金級として当然、越えているはずの階層主。

その名を、バルトさんはあえて口にした。


ガロさんの、顔が強張る。図星だった。王狼の牙は、ここ数ヶ月あの階層主に勝てていなかった。……その事実を突きつけられた。


その時だった。

ずっと、フィーネさんに、釘付けにされていた、ザイドが。

すっ、と。

構えを解いた。


「……もう、いい」


低い声だった。


「ザイド? 何、してやがる! 早く...そいつを―」

「やってられるか」


ザイドの、一言がガロさんの言葉を断ち切った。

彼は、ゆっくりと闘技場を見回した。

焦って喚くガロ。

ルールを破ったケイル。

統率の、欠片も、ない、味方たち。

そして回復役の、いないパーティ。


その視線が、銀の羽根の、ティアさんで、止まった。


ザイドが、ふっと、乾いた笑いを、漏らした。


「だから、俺は、言ったんだ。ガロ。回復役を入れろと。何度も。ダンジョンに潜ったら、僧侶のいないパーティは詰む。……なのに、お前は聞かなかった。『回復なんざ、アイテムで賄える今まではそうだった!』と」


ガロさんの、顔が青ざめる。


「―だが、その、アイテムを運べた奴をお前は自分から手放した。……そうだろう?」


その、視線が。ちらりと俺に向いた。


「戦力は、正直大差ない。銀の羽の連中も、うちも。……だが、お前らには基本がないんだ。回復役も、統率も仲間への信頼も。何もかも。……こんなパーティ、やってられるか。俺は、今日限りで抜けさせてもらう」

「な...ま...まてザイド! お前が抜けたら――」

「あばよ」


ガロさんの、制止を振り切ってザイドは闘技場から歩き去ろうとしたその途中俺の前で足を止めた。


「悪かったな。しょうもないことに、付き合わせて」


意外な..言葉だった。


「あいつらは、お前という大事な戦力を自分たちの力だと過信して手放したんだ。……とんだ間抜けさ」

「……ザイドさん」

「ふふん。当然よ」


横から、ミレイさんが腕を組んで得意げに言った。

ザイドは、その様子に少しだけ口の端を上げる。


「どうして、あなたみたいな、優秀な暗殺者が。あんなパーティに、いたんですか?」


ティアさんが、尋ねるとザイドは肩をすくめた。


「俺にも、事情があってな。……リンドールで、いちばん伸びしろのあるパーティに入るつもりだったんだ。上位職がいて金級。……悪くない、選択に見えたのさ」


彼は、自嘲するように、笑った。


「とんだ、見込み違いだったがな。……本当に、伸びしろがあったのは俺が、選ばなかった方のパーティだったってわけだ」


その視線が、俺たち銀の羽根をぐるりと見渡す。


「まあ、いい。……また、やり直すさ」


そう言って、ザイドはひらひらと手を振り闘技場を後にした。

上位職の暗殺者。

王狼の牙の二枚看板の片翼が。

あっさり...と、去っていく。


その背中を、見送りながら。俺は、なんとなく思った。

あの人は、たぶん悪い人じゃない。

ただ、見る目が正しかっただけだ。

だからこそ、腐ったチームに、見切りをつけられた。


ザイドが、去った闘技場。

王狼の牙は、もう、ぼろぼろだった。二枚看板の片方が抜けガロさんは俺に手も足も出ず、ケイルさんは、反則を暴かれ。統率は、完全に崩壊していた。


「……くそ。くそっ!」


ガロさんが、拳を握りしめてうつむいている。

その姿を見て、バルトさんがまた口を開こうとした。


「で、結局、お前ら――」

「……バルトさん」


俺は、そっとそれを遮った。


「ガロさんたちは、確かにブレイズファングを倒してましたよ」

「……あ?」

「俺が、まだ王狼の牙にいた頃。……俺、後ろで荷物を抱えて隠れて見てただけですけど。でも、ちゃんと見てました。ガロさんの、大剣があの双頭を断ち切るところを。……あの頃のガロさんは、本当に強かったんです」


嘘は、言っていない。あの頃の王狼の牙は確かに金級の実力があった。


俺の言葉に。


うつむいていた、ガロさんが。ゆっくりと、顔を上げた。

その目が俺を見る。

追い出した荷物持ちに。今、この公衆の面前でかばわれている自分を。


「……ちっ」


ガロさんが、小さく舌打ちした。それから、ぼそりと呟いた。


「結局俺は……俺は。間違えて、いたのか」


その呟きが。俺の耳にも届いた。


だが、ガロさんがそうつぶやいた静寂は...

突然、破られた。


「―ふざけるなっ!!くそっ!くそっ!くそぉっ!!」


叫んだのは、ドグさんだった。

模擬戦の屈辱に血が上っていた。彼は腰から模擬剣ではなく

――本物の、剣を抜いて無防備な俺の背後へ。


「調子にぃぃぃっ、乗るなよぉぉぉぉっ、荷物持ちの分際でぇぇぇぇっ!!」


誰も、気づいていなかった。

俺も、ガロさんに気を取られて背後の殺気に反応が遅れた。


「レイ君、危ないっ!!」


フィーネさんの、悲鳴。

だが――

間に、合わない。剣が、俺の背中へ振り下ろされる。


「レイく...」


その、瞬間。

どんっ!

大きな体が、俺とドグさんの、間に割って入った。

ガロさんだった。ドグさんの、剣を、腕で受け止め

――そして、その顔面を思い切り殴りつけた。


ごっ


鈍い音とともにドグさんが、白目を剥いて、崩れ落ちる。

一撃で、気絶していた。


「……もう、やめろ」


ガロさんが、腕から血を流しながら低く、言った。


「みっともない、真似は、するな。……これ以上、俺を、惨めにする気か」


闘技場が、静まり返る。ガロさんは気絶したドグさんの襟首を掴んでずるずると引きずった。


「……帰るぞ。ケイル、バズ」


負けを、認める。それ以上に、何かに打ちのめされた背中だった。

ガロさんは、闘技場を、後にしようとして

――その途中。

ミレイさんの、前で足を止めた。


「……おい小娘」

「なによ」

「この間は。……悪かった」


ミレイさんが、目を見開く。


「許してくれ、とは、言えねえ。俺が、こいつから...いやレイから、奪っちまった二年間は。取り返しがつかねえ。それは、わかってる」


ガロさんは、俺の方を、見なかった。見られなかったのだ...たぶん。


「……だが俺が奪っちまった二年の償いはいつか必ずする。……それだけは、覚えといてくれ」


それだけ、言い残して。

ガロさんは、気絶したドグさんを、引きずりながら。ぼろぼろの王狼の牙を連れて闘技場を去っていった。


その背中を、俺は黙って見送った。


不思議と、胸にあったのは。怒りでも勝ち誇りでもなかった。ただ少しだけ。リンドールにきて初めて迎え入れてくれた金級パーティの……憧れたあの人にまた名前を呼んでもらえたといううれしさだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。