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好きだった幼馴染に消えちゃえと言われた俺は〜〜いまさら好きと言われてももう、あの頃には戻れない  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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十話


【帰還者専用東京支部ダンジョン配信】


 帰還者のための組織がこの世界には存在している。また、その上位組織が存在しているのも事実。


 東京に点在している数個のダンジョン。C~Fランクの中級ダンジョンは、異世界からの帰還者にとって鍛えるのにはちょうどよいランクだ。


「えっと、配信準備完了です。……東京神楽坂支部長、御剣桃子。A級ダンジョンの攻略開始します。……今回は同行者として、新人帰還者を研修として連れてきます」


 私、御剣桃子は戸惑っていた。昨夜、観察対象者である牧島蓮夜が私に接触をしてきたのであった。


『組織もダンジョンというものをもっているのか?』

 という質問だった。


 私の背筋が凍りついた。ダンジョンは組織関係者しか知り得ない重大な情報。私たちは少し彼を甘く見ていた。平均一年しか生存できないと言われている異世界で、七年間という膨大な時間を異世界で生き抜いた彼を……


『なあ、俺を組織に勧誘したいなら、ダンジョン、見せてくれないか? この世界にもあるんだろ?』 


 私が返事に困り、上官に状況を説明し、判断を仰いだ。


 結果――新しく生まれたA級ダンジョンを一緒に攻略しろ、とのことであった。


 本来ならダンジョンは4人から6人のパーティで攻略を進める。組織が管理しているダンジョンだとしても、死の危険が伴う。それはC~F級ダンジョンでも同じだ。


 A級ダンジョン……。私にとって未知の領域。異世界ににいた時は、私は道半ばで死んでしまった。といっても、私は現実世界で厳しい訓練を受けている。

 たとえ、牧島君が相手をしたとしても、負けない自信があるもん。


「これは……壁に目が生えてるのか?」


「ええ、神の目と呼ばれるカメラみたいなものです。私たちはこれからダンジョンを攻略します。その様子を……世界の一分の人間と……その上位種に見せるんです」


「攻略も光景を見せる? まるで見世物のような物言いだな」


 牧島君の指摘は合っている。これは上流階級の人間と上位種にとってはただの見世物。また、契約を交わした。とある界隈では、この配信を見ることができる。


「間違っていないです。といっても、今回はただの視察みたいなものです。目的は、異世界からの帰還者である君にダンジョンを見せる、というだけです」


「話が長いな。早く行こう」


 その物言いにイラッとしたが、私は我慢した。なぜかわからないけど、私の上司である聖女様もその上の人間も、牧島君を組織に引き込みたいみたいだ。


 魔力がないのに? 


「あ、ちょっと待ってくださいです! ここは異世界のダンジョンと勝手が違います! ちゃんと班長である私の言う事を――」




 ***




 上級国民専用配信コメント欄。


 ・おっ、御剣ちゃんの配信始まったね! やっぱり若い子はいいよね。


 ・なんだ、男と同伴かよ。俺、聖女ちゃんのチャンネルに行くわ。


 ・A級ダンジョンっていっても、題名の通り、簡単な探索で終わるみたいだ。


 ・二人で大丈夫なのか? おじさん心配だよ。


 ・それにしても、すごい世の中になったもんだ。ふふっ、普通の奴らはこの配信を知らねえもんな。


 ・ちょ、まって。あの魔物なんだ? 帰還者WIKIで調べろ。


 ・……あ、レッサーデーモンだ。レッサーって名前ついているクセに強敵だぞ。このレベルだと、御剣ちゃんは厳しいかも


 ・はっ?


 ・えっ?


 ・なあ、いま見えたか? 俺、元帰還者なんだがいまの動きが見えなかった。


 ・あの男がレッサーデーモンに近づいた瞬間、首が落ちた。


 ・武器なんて持ってねえぞ!


 ・おい、あいつの名前はなんだ?


 ・まて、急かすな。……牧島蓮夜16才。16の見た目じゃねえだろ!?


 ・牧島か。おっ、運営がトップページにこの配信を置いたぞ。世界各地の機関の連中が注目するぜ。


 ・ちょ、まてよ。あいつ、今度はレッサードラゴン一撃だぞ。御剣ちゃんが腰抜かしてるよ……。ちょっとかわいいよ。


 ・なあ、あいつ、魔法使ってるか? 帰還者なんだろ? 魔法が強いんだろ?


 ・いや、画面の魔力メーターに変動はねえ。あいつ、魔力使ってねえ。


 ・……白髪のバケモンか。


 ・おいおい、どんどん同接増えるぞ! これは……まつりだ!



 ・【神域観測ログ】観測対象確認。



 ***



 帰還者組織大本部、円卓の間。

 異世界から帰還せし七人の幹部帰還者たちが集っていた。視線の先はA級ダンジョン配信。


「ねえ、面白い子が帰ってきたって聞いたよ? ……A級ダンジョン程度で遊んでいるけど、期待はずれじゃない」


「悪くねえ。だが、俺に比べて強くもねえ」


「聖女ちゃんはどうしたんだろうね? この男が帰還したからって、すごく焦っていたけど」


「そんなことより、魔王の転生体をどうするかだ。現在、三人の魔王転生体候補を確認した。ふっ、上は様子を見ろとさ」


「ぶっ殺したいわね。だって若くて可愛いんでしょ〜」


 一人を除いて、幹部帰還者はA級ダンジョンの配信なんて興味を持てず、魔王をどうやって倒すかの談義に花を咲かせている。


 帰還者組織管理職常務であり、この幹部会を束ねる立場に実力者、菊川高次は足を震わせていた。彼は牧島蓮夜と異世界で出会ったことがある。


 菊川の息が荒くなる。トラウマが刺激される。あれは……絶対に興味本位で手を出しては駄目な存在だ。


 聖女が討ち取ったと言っていたが、正攻法ではないだろう、と彼は思っている。


「……ジーザス」


 この世界に正しい神なんていない。だが、彼はそれでも祈りたい心境となっていた。


 どうせ、牧島の恐ろしさを幹部に言ったところで伝わらない。


 辞職して、田舎で余生を暮らそうか、とネットで検索をし始めるのであった。








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