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小さな魔王は皆の推しになりました  作者: 光流
第四章 それは偶然か必然か

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29 コガネと黄金


 地震は短い間隔で頻発しているようであった。また、強い揺れが起き収まった後に、とんとんと扉が叩かれた。涼風が外へと出ていく。しばらくして、家に入ってきた涼風は蒼白な顔をして言った。


「村の代表から今晩に儀式を行うと言われた」


 カラクは震える烏野の前に立つと、ポンっと姿を変えた。


「えっ!?」


 驚く烏野の前に、全く同じ姿をした女の子が現れていた。烏野に変身したカラクはにこりと笑った。


「これで替え玉になるの!」



 涼風と烏野には家の中の奥に隠れてもらった。村人の代表がやってきて、烏野に変身したカラクは村長の館へと連れて行かれ、支度をされた。湯浴みを手伝われ、真っ白な衣装に着替えさせられる。

そして、豪華な食事を振る舞われた。とても美味しそうだったので、むしゃむしゃと食べると、やがて眠くなってきた。



 これは夢の中だと分かることがある。カラクはその認識の中でパチリと目を見開いた。闇の中に浮かぶ一人の男がいた。


『やあ、カラク』

「アシュラ!! 暁はどうしたの!?」

『あれから戦い続けて、暁に負けちゃったんだぁ。暁は決勝でも勝って、南平原となぜかボクも暁のものにされちゃった……暁は面白いね。ボクの想像をいつも超えてくる。最期まで見切らずに、そのありようを見届けることにしたよ。カラクもそれで安心するんでしょ?』

「暁はアシュラを大切に思ってるんだよ」

『よく分かったよ。けどね……ボクにはその心がわからないんだ。ねえ、カラクにはわかるのかな? 魔王カラはわかったのだろうか? ねえ、カラク。……カラはなぜ死んだんだろう?』

『俺は覚えていないの』

『……カラはボクたちに力を与えたんだよ。言ってみれば、ボクの母であり、父であり、創造主だ。それなのに、全てを置いて死を選んで何がしたんかったんだろう? カラが負けるなんてありえない。ねえ、カラク。そこに……君の中に答えてくれるカラはいるのかい?』



 ゆらゆらと揺れるのを感じてカラクは目を開いた。薄暗く狭いところにいる。周りから聞こえてくる声で、カラクは輿こしに乗ってどこかへと運ばれていることに気づく。


 どさっと下ろされて、人々の気配が去っていく。四つん這いで輿から這い出ると、小さな小屋のような場所だとわかった。小屋の外は薄暗い。


 カラクは扉を開けようとしたが、何かがひっかかっているようで、開かない。


(志伯はどこにいるんだろう?)


 志伯は傍観すると言いつつも、近くで見ていると言っていた。カラクには志伯のいる場所がわからなかった。


 ふと、小屋の奥の方にふすまのようなものがあることに気づいた。カラクは、それを横に滑らせる。すると、とても大きな穴が襖の向こう側の床に空いていたのだった。


 そして、……ずるずる……ずるずる……という微かな音が近づいてくる。何かが這うような音である。


「なんだか嫌な予感がするの?」


 カラクは心の中に小さな炎を思い描いてみた。ぷかぷかと鬼火のような炎が現れる。


「えいっ」


 そうして穴の中に放り込む。ピカピカきらめくなにかが見え、カラクは目をこらす。すると、はるかに下の方から、黄金色に輝く巨大な大蛇が上がってこようとしていたのだ。


「やーーーー」


 ムンクのような顔をしてカラクは叫ぶ。しかし、無常にもずるずるという音は近づいてくる。


「……もしかして、あれがコガネ?」


 そして、生贄ということは、あれの餌になれということなのでは? とカラクは思い至った。


「えいっ」


 頭の中に思い描いて、大きな鎌を取り出した。


「これで魔獣退治なの。……一人でできるもん!」


 ドッドッと鼓動が高鳴りつつも、穴から距離を取りじっと見つめる。と、鬼火が穴から飛び出してきたと同時に、巨大な黄金色の大蛇が顔を出した。


「いやーーーー! 思ったより大きいのーーーー!」


 ゆらりと空中で、巨大な鎌首をもたげた蛇は、カラクに向かって突撃してきた。


「うわっ、ほっ! よっと」


 カラクは身軽さを活かして、曲芸のようにかわしていく。そして、空中でくるりと回転すると、蛇の尻尾に飛び乗って頭の方へと駆けた。


 すると、カラクの走っているところから皮がめくれていく。カラクは鎌を下向きに持ち、皮に引っかけていたのだった。


 しゅるりと、全身の皮を脱いだ大蛇は、一回り小さく真っ白になっていた。


「さあ、穴に戻って! ここに君の餌はない! もう二度と来ないで!」

「お前は甘いな。カラク」


 そう言った声が聞こえたかと思うと、目の前の大蛇が一刀両断され、穴の中に崩れ落ちていく。


「いやーーーー」


 カラクは愕然として、振り向くとそこには、大きな剣を抜いて立つ志伯がいた。


「生かしておけば、また時をおいてやってくる。お前は、殺したくないのか?」


(たしかに、二度と生贄を出さないためには、退治してしまうのが一番いい)


「殺したくないと思ってしまったの」

「お前は楽太よりも甘いな。魔王と混ざって、より甘くなるということは不思議だな? 頭も悪くなるし……」

「うるさいのーー!」


 失礼な志伯にカラクは怒ると、志伯は少し笑ってから、蛇の残した皮を指差した。


「それが、村人が生贄を捧げ続けた理由だな」

「……これはなに?」

「……黄金だ」


 カラクが鎌で引っかいて、めくった蛇の皮は、黄金色に煌めいていた。


「この鉱山のどこかに金脈があるのだろう。あの大蛇は金を食べて、脱皮していたのかもしれない」

「……なんのために?」

「金に目のない人間を利用することを、いつしか知ったのかもしれないな」


 カラクはこのままここに置いておけば、村人たちが回収にくるのだろうと思った。それは面白くない。


「えいっ」


 カラクはイメージをすると、黄金の皮は何千匹もの黄金色の蝶になって、羽ばたいていく。


「綺麗なのー」

「……」


 志伯は何も言わず、ただ黄金色の蝶の行き先を見つめていた。




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