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小さな魔王は皆の推しになりました  作者: 光流
第四章 それは偶然か必然か

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27 伝説のある村


 とてとて歩いているカラクの後ろから志伯はゆっくりとついてきている。縄は相変わらずカラクの腰に巻かれている。


「お前……少し、大きくなっていないか?」

「ふふん!」


 カラクはひらりと振り返り、胸を張った。


「魔力を吸収し、成長しているんだよ。その内、こんな縄なんて引きちぎって逃げてやる」

「言葉も前よりもはっきりと喋っているな……頭は相変わらず悪そうだが……」

「なんだとー!!」

「だが、楽太。これほど早く成長してくれるなら、前の楽太にすぐに戻れるな」


 カラクは思いっきり顔をしかめてみせたが、志伯はとても嬉しそうに笑うと、カラクの頭を撫でた。反抗のために、ブンブンとカラクは頭を振って、その手から逃れる。


「もうすぐ、村に着く。魔王討伐の途中で、以前も楽太と立ち寄った村だ。何かを思い出すかもしれない」

「村?」

「ああ、伝説で過去に災厄をもたらしたコガネという魔物が眠っていると言われる村だ」

「魔物?」

「ああ。一目見るだけで、人は命を奪われるそうだ」


 カラクは気配を探ってみたが、それほどつよい魔物の気配も、魔力も感じず首を傾げる。


「魔王討伐は、あなたと楽太の二人だけだったの?」

「まさか……討伐軍も共にだった。多くは脱落したが。まあ、あの村に泊めてもらったのは、わずかな者だけだったが。ほとんどの軍の者は野営をした。お前が村に泊まりたいと言ったんだ」

「俺じゃないよ。楽太がだよ」


 そう話をしている内に、その村へとたどり着いたようだった。カラクには楽太が泊まりたいと言った理由が分かった。煉瓦造りの白く塗られた家々が、立ち並ぶ様子は、村というよりは小さな街のようで、とても綺麗な景観だった。村の真ん中には小さな湖があって、白い花が浮かんでいた。そして、南側には鉱山があり、トロッコの鉄道が敷かれているのが見えた。


「ふわぁーっ! 綺麗な村だねー」

「ああ。……まずは、何か食うか?」


 カラクは、いつも腹を空かせているように見られていることに憤慨し、抗議をしようと志伯を見上げると、グーグーとお腹が鳴った。


「……うん」


 連れて行かれた料理屋は湖の前にあった。外に並べられた席に座り、湖を眺めながら食事を取ることができるようだった。


「この湖には、ここにしかいないクワンツという固有種がいるんだ。この魚は腐りやすく、ここでしか食べられない。焼いても揚げてもとても美味しい」

「生では?」

「毒があり、生で食べると一日は痺れて動けなくなる。まあ、その痺れが快感となってあえて食べる者もいるらしいが……」


 志伯は半眼になって、カラクを見つめた。


「なんだよ……食べないよ」

「楽太は生で食べた。止める間もなく。あれは好奇心旺盛で、俺はいつも苦労していた……」

「あなたは……」

「俺のことは志伯と呼べ」

「志伯は楽太とは友だち?」


 志伯は、その問い掛けにすぐには答えなかった。湖に浮かぶ白い花を見ていた。


「命の恩人だ。そして、話したように衣食住も世話になった。ただの友人というには、返しきれないほどの恩がある。他の勇者候補だった者たちも、楽太を崇拝していた」

「崇拝? それは、きっと楽太は寂しかったと思う。小さな頃から一緒にいた幼馴染なら、貸し借りなんて不要だと言ったんじゃないかな」


 カラクは不思議と深く考えずに、言葉が出てきた。カラクは楽太ではない。けれど、何となくそんなふうに思っていたんじゃないかと、思ったのだ。


「……そうか。たしかに、あいつなら、そういう事を言いそうだ……。とんでもない事を仕出かし、けろりとしている。誰にでも優しく、多くを助けた。けれど、楽太はいつも、どこか遠くを見ているようだった……」

「遠く?」

「ああ……話をしていても、ぼんやりと月を見つめて心ここにあらずだったり。この村で食事をした時も、湖を眺めてぼんやりしていたな」

「……月……湖……」


 カラクの脳裏に月の光に輝く銀色の鱗がよぎった。


「なあ、楽太。お前は何に心を奪われていたんだ?」


 志伯は笑みを浮かべているが、光の無い瞳で見られ、カラクは思わずごくりと唾を飲み込んだ。


「知らないよ。俺はカラクだって!」

「お兄さん! 久しぶり!!」


 カラクが振り向くと、志伯に向けて一人の少年が声を掛けていた。十代半ばくらいの年代の少年だ。栗色の瞳と淡い茶色のさらさらの髪に、勝ち気な印象を与える弓なりの眉と表情をしている。


「ああ。お前は……」

涼風すずかぜだよ。忘れちゃった?」


 涼風と名乗った少年は、おどけたようにくりくりと瞳を動かすも、どこかその表情には余裕がない。


「また、俺の家に来てよ」


 カラクは、志伯が当然断るのだろうと思っていたが、その誘いに頷いたので驚いた。食べ終わっていたので、志伯が立ち上がると、カラクも続いた。歩き出そうとすると、ぐらぐると地面が大きく揺れる。


「ひゃっ!!」

「伏せろ!」


 驚くカラクを抱え込むようにして、志伯は地面に伏せ、様子をうかがった。


「……また地震だ」


 涼風は驚いた様子はなく、だが緊張した表情を浮かべ、その場に立ち尽くしている。


「地震が増えているのか?」

「うん。コガネが目覚めようとしているんだって……。お願い。俺たちを助けて」


 



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