表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな魔王は皆の推しになりました  作者: 光流
第三章 空虚を埋めるもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/38

18 魔法の訓練


 もちろん、カラクの武闘大会への出場は皆からは反対された。大会の勝敗は、闘技場の白い闘技台の上から落ちることや、負けを認めることでつくため、死傷者は少ない。だが、アシュラも出場するため、彼が対戦相手となった場合は、ほとんどの相手を殺してしまうという。


「けれど、俺も出てみたい」


 この南凱へきてから数日が経ち、わずかに背も伸びてカラクは成長しつつある。たどたどしかった言葉もしっかりしてきた。南凱には武闘大会のために、どんどん人々が集まりつつあり、祭りが開かれるような活気に溢れていた。


 ここに来てから、アシュラはカラクに魔法の使い方を教えてくれる。


「カラクは今でも魔法が使えるはずだよ。この前、変身魔法を使っていただろう。小さい身体でも、眠る力を感じるよぉ」


 南凱から離れた平原の真ん中に、飛翔して連れてきてくれたアシュラはそう言う。カラクは付いてこようとする皆を止めて修行中である。大きくなった時に使う力をいつでも使えるようにしたいとカラクは思う。そのため、皆には、修行の邪魔をしないように、一生懸命頼んだ。でも、どこかから、こちら見ている幾つもの強い眼差しのようなものは感じる。


「うーん、変身するときは、頭の中にその光景が浮かぶんだけど、攻撃の魔法は具体的な光景が浮かばないんだ」

「そっかぁ。カラクは頭の中の想像が大事なのかも。じゃあ、ボクが見本をみせるから、よく見ててよぉ」


 そう言って、アシュラは手のひらに魔力を集めて、幾つかの魔力が凝固した円球を作り出した。それは銀色に輝き、凄まじい圧を感じる。


「これは、ボクの魔力を集めたもので自在に動かせる。触れれば、このあたり一帯が吹き飛ぶほどの力が込められている。一度、実戦でやってみようか。想像して魔法を使うんだ。さあ、これで君を追い掛けるから、魔法を使って逃げてみてよ」


 そう言うと、手のひらの上の銀球が凄まじい速度でこちらに向かってくる。


「うわぁ!」


 カラクは声を上げると、頭の中で勢いよく走る姿を思い浮かべた。すると身体が動き出し、銀球が顔に触れるぎりぎりで避けることができた。そのまま、駆け出し、走り回るも、上下左右あらゆる角度から銀球が追いかけてくる。


「ほらほら〜。避けてるばかりじゃ当たって死んじゃうよー」


 カラクは頭の中で、同じように動き回る魔力で作った何かを思い浮かべた。


「えいっ」


 ぽんっと音がして出てきたそれは、金色の小鳥だった。一直線に凄まじい速さで銀球に飛んでいくとぱっくりと食べてしまう。他の銀球にも追い付いて全てを食べ尽くしてしまった。


「へー! すごいね〜。君は面白いなぁ。魔王カラの匂いと他の魔力の匂いもするなぁ。武闘大会で戦うのが待てずに、今、本気でやりたくなっちゃうよぉ」


 にこにこと笑いながらそう言うアシュラの目が、どこか怖くて、カラクは一歩後退った。アシュラの魔力の圧が強くなり、ゆっくりとカラクに近付いてくる。


「アシュラ」

「あれ? 暁! どうしたの?」

「アシュラが事前に、カラクを壊そうとしたら止めろと言ったので……」

「ああ!! そうだったっけ? ダメだなぁ。ボクはお気に入りのものでもすぐに夢中になって壊しちゃうんだぁ。壊れなかったのは暁くらいだもんねぇ。アハハ」


 あっけらかんと笑うアシュラの姿にカラクはぞっとする。とんっとんっと、軽やかに跳ねるように近付いてきたアシュラは、上からカラクを観察するように覗き込む。


「けれど、カラクの魔力は面白いなぁ。魔力が足りなくて小さいはずなのに、今使える魔力はおそらく成長とは関係ない魔力なんだね。まるで、一つの身体に別の種類の魔力が何種類も入っているみたいだ」

「魔力の種類……」

「うん、君の今使った魔法は、昔、見たことがあった気がするよぉ。たしか、砂礫国という強大な国の魔術師たちが、そういった魔法を使っていたなぁ」

「砂礫国?」

「うん! そういえば、魔王を倒した? と言われている勇者を送った国が砂礫国だよぉ。滅ぼしにいくかい?」


 カラクは砂礫国という名前を聞いて、少し心臓がドキリと動くのを感じた。


「勇者?」

「うん! ボクは戦ったことがないけれど、今の君を見ていると、本当に魔王カラは勇者に倒されたのかもしれないと思うよ。だって、魔王カラが生まれ変わったんだよね? 君は。それなら、砂礫国は君の復讐する相手となるんじゃないのかなぁ?」

「俺は……何もよく覚えていないし……復讐なんて興味ないよ」

「あれ? じゃあ、君のイトラとレフはどうなんだろぉ? 魔王カラが倒された時は近くにいたんじゃないの?」

「…………」


 カラクは、アシュラの問い掛けに言葉が出てこなかった。とくに、必要に迫られず、昔のことを掘り返す必要はないと思っていた。イトラやレフは、カラクをとても大切に想ってくれているので、言いたくないことを聞き出す必要はないと。


「あれ? 黙っちゃった? ごめんね。ボク、好きな子には、とても意地悪をして泣かせてみたくなるたちだったみたい。君に出会って初めて新しい自分のことが分かったよぉ。誰かを好きになるって素敵だねぇ」

「アシュラ。わたしにこの国をカラクに案内させてもらえませんか?」


 突然、暁がそう言い出したので、アシュラは驚いたように目をパチパチさせた。それでもにっこりと笑うと、「いいよぉ~」と言ってその場を去っていった。アシュラには多方面から複数の殺気が送られている。


「……あの、わたしは貴方と話がしたかったので。案内をしてもいいでしょうか?」

「うん。ありがとう」


 カラクは、暁を見つめて笑うと、ゆっくりと手が差し出された。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ