表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱くてキツイニューゲーム  作者: 竜崎 龍郎
第二章 異世界人との遭遇編
21/28

第十九話 測定の結果


「どれで測るのかな? 」


とニコラスは机の上に広がった魔道具達を見ながら優しく尋ねてきた。賢也の考察通りこの机の上の道具達は、形は違えど全てが魔力を測るための魔道具であったのだ。そのため、どれで測ろうが魔力を測ることができた。ただ、ニコラスは気を利かせてか魔力測定の道具を選ばせてくれた。


賢也はその問いに少し悩んだものの、魔力測定の道具は水晶球に決める。これが一番賢也にとってステータスを測るに相応しいものであったからだ。


賢也は水晶玉を手に取って


「これで測ります」


とワクワクした気持ちを言葉に乗せるように言う。目は果てしなく輝いている。そんな賢也を微笑ましく思いながらニコラスは


「水晶玉だね。いいね。それじゃあ、準備するよ」


と言った。そして、机の上を水晶玉以外を片付ける。片付けたと言っても、一瞬のことであった。一瞬で目の前から消えたのである。それは︎︎もう"︎︎︎︎魔法"︎︎のようにだ。


賢也は目の前で魔法を使われたことに感動しながら、自分の魔力がどれぐらいあるのかドキドキしていた。おそらく、犬猿の二人もドキドキしているだろうと賢也は予想する。何故なら、2人の顔が少しばかり強ばっているように感じられたからだ。その緊張感に周りの冒険者達も少しドギマギしているようであった。


そんな心臓の鼓動が鳴りあっている所にニコラスは


「それじゃあ、その水晶玉に魔力を流してみて。流したら文字が浮かんでくるから、それを見せてね」


と優しく言った。その一言に賢也の心臓の高鳴りは最高潮になっていた。いくら完璧人間であろうと初めての経験は緊張するのである。その上、昔から憧れてきたことなので、余計に気が張った。


そんな緊張を抱きながらも、賢也は魔力を流すイメージをする。イメージはあのドラゴンモドキと戦った時の感じを思い描く。あの時抱いた恐怖、後悔、羨望なども同時にイメージしたのだ。


そのイメージを抱いた瞬間、水晶玉は青く光出す。その光は何よりも青く、強く、美しく物だった。その眩しさはこれが第2の太陽であると言っても納得できるほどの光である。その上、その光はただ眩しいのではなく、その場にいた誰もが感動する美しさも併せもつものだった。あのガンテツでさえその光に感動をしていた。


その光のせいで水晶玉など全く見えない。隣にいるニコラスの顔など全く見えない。そんな光なのだから文字なんてもっての外、全く見えなかった。そんな光の中で


「こっ、この光は!? 絶対魔力が高いやつだー!! やったあぁぁー 」


とレイチェルは驚きと歓喜の声をあげている。彼女は賢也の魔力が凄いことを喜んでいるより、賭けで勝てたことの方が嬉しいようだった。それでも、賢也はその反応が嬉しくガッツポーズをする。


この世界に来て間もない賢也ですら、これが物凄いことだと理解出来た。期待に胸を踊らせている。


アリスも目を見開き、


「これ、凄い」


と感動していた。彼女も初めて見る輝きに見とれていたようだ。


「こんな光今まで見たことがない」

「やっぱり、すごい人なの?」

「俺は最初から分かっていたぜ!! 」


と誰かが言っているのも聞こえた。冒険者達もザワザワしている。ある者は


「伝説の勇者の誕生だあぁぁ」


と声高々に叫んでいる。冒険者達は自分達が伝説となる人物の魔力測定に参加出来たことを心から喜んでいた。


賢也は自分の魔力がどのぐらいなのか楽しみであった。他の冒険者達を圧巻させるほど輝きを放つこの光、つまり、自分がかなりの魔力ということを確信していたのだ。ようやく自分が物凄い人間だと周りに理解されるとワクワクしている。賢也は期待を胸に膨らませて光が消えるのを待った。




数分後、その光は一瞬で消えた。先程まで輝いていたことが嘘のように消えたのだ。その呆気なさに冒険者達は少し驚きながらも、水晶玉に写った文字を直ぐに気にした。


賢也は光が消えた瞬間、直ぐに水晶玉を見る。その速さはどんなものより速かった。言語石が文字を翻訳出来ないことを忘れるぐらいの速さだ。


文字を読めないと気づいた賢也は直ぐに、ニコラスに駆け寄り水晶玉を見せる。賢也はニコラスを信頼して、ニコラスに見せた。そのはずだった。それなのに、レイチェルが奪うように横から現れた。


そして、ニコラスに渡す前にそれを強奪し、目を輝かせながら水晶玉を覗く。その目はもう勝利を確信している目であった。覗いた瞬間、レイチェルは絶句する。あのうるさいレイチェルが何も喋らなくなったのだ。賢也はその反応に、これラノベで読んだことがあると既視感を覚える。何度も読んだ︎︎"︎︎︎︎小説家なろう"︎︎でだ。そして、胸の高まりを抑えられなくなっていた。次のレイチェルの言葉を知らずに……


「えっ…嘘? 」


この言葉を聞いた瞬間、賢也はドヤ顔をしていた。自分が褒められると分かっていたからだ。しかし、次の言葉は違った。


「これ····· 低すぎじゃない」


世界が一瞬静まり返る。賢也は一瞬何を言っているのか分からなかった。恐らく、その場にいた全員が何を言っているのか理解できないようだ。その予想外の言葉に賢也は


「えっ? 何? 聞こえなかった。もう一度言ってくれ」


と鈍感主人公のように尋ねる。脳裏に一瞬最悪の想像をしたが、気のせいだと自分に言い聞かせレイチェルの返答を待つ。そんな期待も虚しく、その最悪の想像が当たっていた。当たっていたのだ。


「だ・か・ら 魔力が物凄い低いって言ってんの」


レイチェルはそうハッキリと言い切る。今度は聞き間違うことがないくらいはっきりと言い切っていた。


部屋には沈黙が続く、全員が驚愕していた。あんな神々しく光っていたのに、魔力が低いとは誰も予想出来なかった。そんな驚愕の中、誰かが笑いながら発言する。


「レイチェル、ついに数字すら読めなくなったのか? 」


そんな賢也にとって希望のようなことを誰かが言う。その言葉に多くの者は納得した。


「なんだー、ただレイチェルが馬鹿なだけか」

「それもそうか。あんな輝いてたのに魔力が低い訳ないよねー」

「確かに、レイチェルなら見間違うことありそう」


と冒険者は口々に納得したように同意する。賢也も納得であった。あんな人前で訳の分からないことを言うレイチェルなら納得であった。それは決して現実を信じたくないからでは無かった。


かのレイチェルは


「私が数字を読み間違える訳ないでしょ。このアホんだら!!! そんなに言うなら自分たちで見なさいよ!! 」


と口をすぼめながら怒っている。賢也は往生際が悪いやつと思っていた。そんなことを考えていると、あるお調子者の冒険者はレイチェルから水晶玉を強奪し、文字を読んでいた。


「どれどれー? あんなに輝いてたのに低い訳…… 」


賢也はうんうんと頷いていた。低いわけないだろとレイチェルに向かって怒鳴りたいぐらいである。実際、後で怒鳴ってやろうとも思っていた。しかし、次の言葉は


「えっ!? 何これ? めっちゃ低い!? 魔力が50しかない!? えっ? えっ!? これって、農民の魔力しかないんじゃない? 弱くね」


と驚きが含まれた言葉だった。その言葉を聞きその場にいた全員は感づき始める。賢也の魔力が低いことに……


「あの光ハリボテだったのかな? 」

「やっぱり、すごい人じゃないよねー」

「俺は最初から分かってたぜ!! 」


と誰かが言っているのも聞こえる。それは噂話のようにコソコソとだ。冒険者達はザワザワしていた。


そんな状況に賢也自身も自分が弱いということを理解し始めていた。否が応でも理解させられたのだ。ただ、それは賢也にとっては受け入れ難い事実だった。今までの賢也は完璧であった。完壁故、他者から能力の低さを指摘されることは無かったのだ。そんな賢也にとってこの状況は非常にストレスであった。今すぐにも逃げれるなら逃げ出したかった。それでも、賢也はぐっと堪えて平気なフリをする。本当は泣きたいぐらいだったのにだ。


そんな賢也の我慢を気づくことはなく、レイチェルは


「だから言ったでしょ。賢也の魔力弱いって!!私は何回も言ったよ。よ・わ・いって!! 」


と賢也の気持ちを全く考えず、自分の正当性を解いていた。賢也はその発言にかなりのメンタルを削られる。とんでもないダメージが与えられる。そんな状況の中ガンテツが


「それなら、スパゲティ鼻から食う準備出来ているな? 」


と煽るように言う。その発言は賢也を助けようと言ったとも取れるタイミングであった。ただ、そんなことを誰かが気づくことは無かった。そして、その発言を聞いたレイチェルはハッとした様子で


「うそ、そんなぁぁぁぁ!! ヤダヤダ、私女の子だよ!? 女の子にそんなことさせるのありえないよ!! 助けて!! ニコラスさぁーん」


と先程までの態度とは反対に、今まで黙りを決めていたニコラスに助けを求めた。この女クズである。


しかし、ニコラスも何も話す様子はなく何かを考えているようだった。いつものニコラスなら賢也のすぐにフォローに回るはずなのだが、その時のニコラスは何かを考えていてフォローには回れていないようであった。そんな心ここに在らずなニコラスに


「ちょっと、ニコラスさーん。おーい、ニコラス」


とレイチェルが助けを呼ぶ。すると、ニコラスはハッとした様子で


「悪い悪い、少し考え事をしていた。それでなんだい? 」


と答えた。かなり集中して考え事をしていたらしく、レイチェルたちのいざこざなど一切聞いてなかったようである。そんなニコラスにレイチェルは


「ニコラスさん、助けてください。賢也の魔力が低いせいで、私スパゲティを鼻から食べないといけなくなちゃったんです」


と被害者ヅラで言った。その言葉に賢也はメンタルのヒットポイントに大ダメージを受ける。それは傍から見てもダメージを受けているのが分かるぐらいの落ち込み具合だ。それを見て、アリスは心配そうな顔をしていた。何か声をかけようとしているが、かけるにかけられない様子であった。そのぐらい落ち込んでいたのだ。ニコラスはそんな賢也を考慮して、


「それは大変だね。でも、君達は魔力以外の項目を見たのかい? もしかしたら、それが高いのかも知れないね」


とフォローをする。その言葉に賢也のヒットポイントは大幅に回復した。魔力以外にも項目がある。この言葉に賢也は助けられた。魔力だけがこの世界の指標じゃないことに安心した。そして、その言葉に助けられたのは賢也だけでは無かった。レイチェルもその言葉を聴き、先程までの威勢を取り戻す。


「私としたことが、確かに忘れてたわ。魔力以外にもマナ量、魔力感知、魔法適性とか沢山項目があったわ。あまりに賢也の魔力が低くて忘れてた」


と言いながら、お調子者の冒険者から水晶玉を奪い取った。賢也はこの女いつも一言余計だなと思いながらも、まだ自分には可能性があることに喜んだ。


「ふん、ジジイ今更謝っても遅いんだからね。」


とレイチェルは自信満々に言いながら水晶玉を見た。どうやら、レイチェルの中では賢也の能力が低いことは無いらしい。その自信満々のレイチェルを見て、冒険者達も期待の眼差しを向けている。ただ、現実はレイチェルや賢也の期待通りになることは無かった。


「何これ? えっ? 低すぎない」


と彼女は思わず言ってしまった。それぐらい低かったのである。冒険者達は言葉を失っていた。まさか、あんな美しい演出があったのに、能力が低いとは全く思っていなかったからだ。レイチェルもその一人であった。


ただ、この件で最もダメージを受けていたのは賢也である。一度希望を抱き直した分、その心へのダメージは計り知れないものだった。少なくとも、蘇生不能なぐらいのダメージを心に負っていたのだ。


傍から見てもその落胆ぶりは分かった。冒険者達もその落胆さを見て、気を使い始めていたが、それが余計に賢也の心にダメージを与えていた。


もうやめて!賢也のライフはゼロよ!!!


賢也にとって自分の能力が低いとは全く考えてもいなかった。頭にもなかったのだ。まさか、完璧人間である自分が農民如きと同じ能力値とは思っていなかった。まさに、そんなことが起きるのは夢の中、それも悪夢の中だけだと思っていた。


ただ、これはどう足掻こうとも、現実であった。何度頬っぺを引っ張っても目が覚めることは無いのだ。神に祈った所で変わらない現実であった。


そう、賢也はとんでもなく低い能力でとんでもなく危険な異世界に連れてこられてしまったのである。


これが賢也の弱くてキツイ異世界転移であった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ