表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱くてキツイニューゲーム  作者: 竜崎 龍郎
第二章 異世界人との遭遇編
18/28

第十六話 異世界転移と言えば


一同が吹っ飛ばされた老人の方を見ると、そこには壊れた木箱と共に老人が倒れていた。


「えっ… これ不味いよね」


と冒険者の誰かが不安そうに呟く。


それもそのはず、遠くから見た感じではその老人は全く動いていなかったからだ。冒険者達も焦りだす。今の今まで老人のことを忘れていたことも不味いが、死んでいるのに気づかないのはもっと不味かった。


流石のレイチェルとアリスも冒険者達が焦っている光景を見て、何か異常事態が起きていると思った。


そして、レイチェルは


「もしかして、私殺しちゃった!? あのじじいもゴブリン討伐に参加するって言ってたから大丈夫だと思ったのに… 」


と申し訳なさそうに急いで老人の方に向かう。軽口を叩いているが、レイチェルは内心焦っていた。国から認められた治癒士なのに、人しかも老人を殺してしまうとは大問題だ。下手すれば冒険者の資格を剥奪される可能性もあった。彼女はその動かないものに徐々に近づいていく度に呼吸が荒くなる。


「お願い。お願い。やめて」


と小声で願うように呟く。その願いとは裏腹にそれは全く動いていなかった。その事に絶望していたが、皆が老人だと思っている物をよく見てみると、様子がおかしかったのだ。様子がおかしいと言うより人間ですら無かった。


その老人だと思っていた者は、ただ老人の服を着せただけの丸太である。なぜ老人だと思っていたのか不思議に思うぐらい、よく見てみるとただの丸太であったのだ。


「なによこれ? ただの木じゃない? くそじじいじゃないわよ!? 」


と驚いた声で叫ぶ。そこに居た全員は遂にレイチェルが完全に壊れたのかと思ったが、注意深く老人だと思ったものを見てみると、冒険者たちとそれとの距離でも、それはどう見たって丸太であることがわかった。何故自分たちが丸太を老人だと確信していたのか不思議に思う。賢也だって例外なくその事に驚いていた。ただ、一人を除いて。その男は初めから気づいていたのだ。


「そろそろ出てきたらどうですか? ガンテツさん」


とニコラスは優しく言う。


そうすると、


「やっぱりお主は気づいていたか、ニコラス」


と、どこからか声が聞こえてきた。その声は彼を認めている物言いだった。


一同は辺りを見回したが、声の主の姿を見つけることが出来ない。完璧人間である賢也もどこにいるのか全くわからなかった。


そんな彼らを呆れるように老人、もといガンテツは言った。


「少し魔力が流れた木をワシと勘違いする上に、ここまでしても気付かぬお主らが、役に立つとは思えない。全員足でまといになるのが目に見えている」


「なんなのジジイ!? どこにもいないじゃない? 」


とレイチェルが叫ぶ。他の冒険者たちも見つけられず、


「どこにいるんだ? ジジイ」


「どこなんだ?」


「隠れてないで出てこい!!」


と困惑した声をあげていた。アリスでさえ、どこにいるのかわかっていない様子でキョロキョロと周りを見ている。


賢也はガンテツのことを全員がナチュラルにジジイと呼んでいることにひとりウケていた。


そんな賢也以外全員が困惑している中、レイチェルが大きな声を上げる。それは何か思いついたと言わんばかりに叫んでいた。


「あっ!? わかった。ジジイは私のちょーつよいパンチで死んだのよ。それで、死んだジジイは地獄に行きたくないからって地縛霊になったのよ。あの世に行かないなんて、みっともないジジイだね〜」


レイチェルは独り納得している。賢也はこの世界にも地縛霊という概念があることに独り驚く。そんな賢也を置いて


「確かにあのジジイなら地獄に行くのを嫌がって、醜く現世に留まりそう」


と冒険者の誰かが納得するように言った。他の冒険者達もうんうんと頷き、確かに確かにと納得している。


賢也はあのジジイの地獄行きは、みんなの共通認識であることに少し驚きつつも納得していた。あんな態度を他の人にもしていると思うと、そう思われるのは仕方ない。


ただ、そんな話を聞いて、ガンテツが黙っていることはなく、


「お主らの予想は全くの見当違いだ。仮にワシが死んで地獄に落ちていたとしても、死体はどうなったんだ? 死体も消えたのか? 本当にお主らは馬鹿だ。馬鹿すぎる。特に能無し回復師は頭が悪すぎる」


と呆れたように否定している。その言葉を聞いて、冒険者たちは確かにと納得していたが、一人大騒ぎしている女がいた。


「誰があたまがわるいって!? 私こう見えてもバーミール魔法学院主席で卒業しているんですけど!? 」


とレイチェルは怒りながら反論する。その怒り方はめんどくさい女という感じであった。賢也は魔法学校という気になるワードにワクワクする。そんな賢也を他所にガンテツは


「所詮座学で一番になっただけのことだろ。学校での知識が実践では全く役に立たないことは冒険者たる者、分かっていると思ったが、そんなことも知らなかったのか? 本当に馬鹿だな」


と煽る。その言葉に若干レイチェルは意表をつかれたが、すぐにその事を隠して


「そんなことわかってまーす!! 」


とレイチェルは怒りながら反論した。


「それならば、なぜ…


とガンテツが言いかけた所で


「ガンテツさん、そろそろお遊戯は辞めて出てきてください。お願いします」


とニコラスが諭すように言う。それは心からのお願いであるようだった。それに対してガンテツは


「お主がそこまで言うなら仕方ない。馬鹿なおなごをからかうのは辞めよう」


と少し不満気味に言いながらも納得していた。その姿に賢也は再びニコラスの凄さを実感する。それとは別にレイチェルは


「誰が馬鹿女よ。ジジイ」


と小さく怒っている。そして、その怒りを抑えながら


「とっとと、出てきなさいよ。ジジイ」


と煽るように言っていた。


すると、いきなり冒険者達の背後から物凄い勢いで何かが飛び出てきた。大きさは大人一人分はあるであろう物、いや者が突然飛び出てきたのだ。


そんな者が飛び出してきたら、誰だって驚くだろう。かく言う賢也はただ唖然としているだけしか出来なかった。


そんな賢也とは別に冒険者達は度肝を抜かれながらも、反射的に戦闘態勢を取っていた。流石冒険者達である。長年命のやり取りをしている為、体が勝手に動いているようであった。


しかし、数秒後賢也たちは自分達が驚いた正体を知るのである。


それは老人、ガンテツであった。ガンテツは少し怒ってる風に


「ふん、ワシが突然現れてようやく、臨時体制か。これじゃあ、本当に足手まといにしかならないぞ」


とニコラスに言った。それは飲食店で店員に文句を言っているおじさんに似ている。その反応にニコラスは少し困ったように


「ガンテツさんの魔法を見破れるのはこの王国探してもあまり居ないですよ」


と冒険者達の肩を持つ。賢也はまた目を輝かせる。なぜなら、本当に癪であるがこんな意地悪なジジイでも、歴戦の冒険者達を欺き、どぎもをぬかせられることを知ったからである。要するに魔法の凄さに改めて気付かされたのであった。


そんな賢也をよそにガンテツは


「ふん、そんなことあるかい。まぁ、それでも、ワシが飛び出てきた時に対応出来ただけマシだな。ワシが飛び出ても全く反応出来ない不届き者もいたからな」


と賢也の方をじっと見つめていた。賢也は目を逸らし、さも自分が該当者ではないように振舞う。


はたから見たら、その姿は完璧人間のかの字もない恥ずかしい姿である。そんな賢也に


「自分が該当していると思ってるとさえ思わぬ愚鈍さも持ち合わせているな」


とガンテツは嘲笑うように続ける。他の冒険者達も思わず少し笑っていた。


そんな冒険者達を見て、ニコラスは困ったような顔をして賢也のフォローをする。


「彼はまだ異世界に来たばかりなんですから、そんなこと言わないであげてください」


賢也は少し顔を赤くする。賢也にとって誰かにフォローをされるという経験は、少なくとも自我が出てきた段階では一度も無かったのだ。それどころか、他人より劣っていて笑われるという経験も無かった。


そんな馬鹿にされる状況を賢也が耐えられる訳が無かった。賢也はガンテツに近づき、めいいっぱいの力を込めて、ガンテツを殴ろうとする。


その瞬間、


「まっ、待ちなさい」


と大きな声が聞こえた。その大きさは耳を塞ぎたくなるほどである。


そんな大声の主はレイチェルであった。少しドヤ顔で立っている。そして、続けて


「あなた達にとって、反応速度だけが冒険者の資質なの? 大事な物を忘れているんじゃない?」


と煽るような言い方で言う。賢也はレイチェルが自分のことをフォローしてくれたことに驚いた。冒険者達もその事に最初は驚きつつも、数秒後には意図が分かり、確かに確かにと、頷く。ただ、賢也は何の事だかさっぱりだった。


「そうですね。あれですね」


とニコラスも頷きながら言う。アリスも頷いていた。


賢也は全く分かっていなかったが頷いていた。知ったかぶりをしてのである。


そんな賢也を他所にレイチェルは


「みんなも分かってると思うけど。そうよ。魔法よ」


とドヤ顔言った。その言葉に賢也は目を輝かせる。異世界で何度その言葉を聞いただろう。何度聞こうとも、賢也は目を輝かせ、胸を躍らせる。そのくらい、賢也にとって魔法とは憧れの物なのである。


一連の流れを聞き、ガンテツは


「小娘のくせにたまにはいい事言うな。確かに魔法は冒険者を評価する大事な能力だな」


と納得して言う。ガンテツの口の悪さは健在だが、珍しく考えそのものを否定してこないことに賢也は驚いた。


「そうでしょ。だからいくら賢也くんが反応速度がゴミゴミの雑魚冒険者だとしても、魔法さえ素晴らしいければ、そんなの些細な問題よ!! 」


とフォローなのか貶しているのか分からないことをレイチェルは言った。


「それに加え、賢也は異世界人なんだから素晴らしい能力を持ってるはずよ」


と付け加えて言った。それに対して、ガンテツは


「ふん、こんな軟弱な男が強力な魔道士に思えんけどな」


と貶した。賢也のことになるとガンテツはやけに否定を続ける。


「ふん、減らず口を叩けるのも今のうちね。賢也くんを馬鹿にしたことを後悔させてあげる!! 」


とレイチェルは自信満々に言った。賢也の魔力がずば抜けていることはレイチェルにとって確定事項らしい。


賢也はこの流れを知っていた。知っているに決まった。この展開を何度読んできたであろう。周りが主人公の力を認めずに貶すが、ヒロイン一人だけが主人公の強さを知っている展開。レイチェルがヒロインかどうかは意見が別れるところだが、それはさておき、この展開には見覚えがあった。


そう、この後の展開は・・・


「魔力測定で勝負よっ!! 」


とレイチェルは声高々に叫んだ。




面白かったら評価お願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ