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弱くてキツイニューゲーム  作者: 竜崎 龍郎
第二章 異世界人との遭遇編
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第十四話 ポム村


「いいですよ」


とアリスはニコラスの要望に対して、討伐に行くのが当たり前であるかのように即答であった。その速さは隣にいた賢也も驚くほどだ。


ただ、その即答具合に驚いたのは賢也だけでなく、銀髪もだった。


「本当にいいのか?」


銀髪は余りの即答具合にもう一度聞き直す。それ対しても、アリスは当然のように深く頷く。彼女にとって魔物を狩ることは当たり前のことだからだ。その様子に銀髪は納得し、アリスと深く握手をしていた。それを見て賢也は変な気分を覚える。ただ、そんな賢也に気が付くことなく、


「ケンヤくん、君も大丈夫か?」


と銀髪は聞いてきた。期待の眼差しを向ける。彼は賢也に対して、アリスと同様に熱い信頼のような物があるようだった。ただ、賢也はなかなか了承しない。そのため、銀髪は思い出したかのように


「勿論、分け前もたんまりある。なんせ国からのお願いだからな!! 」


と付け加える。どうしても賢也にこの討伐に参加して欲しいようだった。なぜだか分からないが。


かく言う賢也はビビっていたのだ。あの強化種に。しかし、ビビっているだけでなく闘志もあったのだ。賢也は元怪我人からあのゴブリン達の中に強化種がいることをこの依頼の前から知らされていた。あの凶悪な強化種のことをだ。


賢也にとってあの強化種との闘いは恐怖と悔しさの二つがあった。恐怖とはあの時ドラゴンモドキの執念によって一度死にかけた感覚、悔しさとはあの時討伐しきることができなかった感覚である。


賢也はその二つの感覚の狭間で揺れ動いていたのである。矛盾した感覚が賢也の頭を掻き回す。


数分の沈黙が続いた。その間も賢也は悩みに悩んでいる。その姿を銀髪とアリスは焦らすことなく見ている。


しばらくの沈黙後、流石の銀髪ももう待っても仕方ないと思い口を開こうとした瞬間、賢也は


「やってやりますよっ!! 」


と覚悟を決めた。やはり、プライドの高い賢也にとって強化種に負けっぱなしなのは、気に入らなかったのである。そんな理由も知らずに、アリスは賢也が参加するのを少し喜んでいた。


「少し疑いかけたが、君なら一緒に戦ってくれると思ってたよ」


と銀髪も初対面の賢也を信頼をしていたようだった。その口振りは前々から賢也を知っていたようである。彼に不思議な印象を抱きながらも、賢也もなぜだか彼は信頼出来る人間だと一目見た時から思っていた。理由は分からないが・・・


そんな賢也を他所に


「そうと決まれば、広場に来てくれ。皆集まっているから」


銀髪はそう告げる。そうして、賢也達をポム村の広場へと案内した。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





ポム村、賢也が運ばれ治療された村の名前である。この村は名前通り、ポムが名産地の村だ。ポム・・・? 多くの人はポムと言われてもこのようにピンとこないだろう。しかし、ポムは日本に住む、いや地球に住む人なら皆が知っているはずだ。


ポムとは一口食べたら果汁が広がり、その後甘みが口の中を刺激する真っ赤な果物だ。有名なスマートフォンの会社もロゴに使っている。ここまで聞けば多くの人が分かるはずだ。そう、ポムとはまたの名を林檎と言う果物である。


ではなぜ異国の世界にポムと呼ばれるりんごがあるのか? 元々この世界にあったから? アダムが禁断の木の実を食べたから? いいや、違う。この世界には元々ポムという真っ赤な果実は存在していなかった。影も形もなかったのだ。では、なぜ今は存在しているのか? その理由はこの村の長老が知っていた。


ポム村の長老に代々伝わる伝承によると、遥か昔、まだ村の名前すら無い時代、オーレリアンと名乗る男がこの村に訪れた。その男は聞いたこともない言語を話していたらしい。ただ、言語がなくとも、その男がその村の活気のなさに嘆いたことはわかったらしい。その当時の村は度重なる飢饉により、活気どころかその日を暮らすのも危ういほどの村であった。そのため、村には餓死者が転がっていたり、犯罪がまかり通っていたりと見るも無惨な状況だった。


その事に深く同情した彼は、ポムと呼ばれる果実の種をその当時の長老に渡した。そして、この果実の育て方を詳しく説明したのだ。だが、当時の村人は最初はオーレリアンの事を疑い、ポムを育てる気など無かった。あろうことか、彼を村から追い出したのだ。しかし、日を追うごとに酷くなる村の状態を見て、遂に村人達は彼の言う通りにポムを育てたのだ。そうすると、村の食料問題はそれまでが嘘のように一気に解決した。餓死者など全く出なくなったのだ。そして、それに合わせるように、治安も良くなり村は活気を取り戻し、過ごしやすい村へと変化したのだ。


村人はその事を感謝するため、また、追い出したことを謝罪するためにオーレリアンを長い年月をかけて探してた。しかし、何年かけても彼を見つけることは出来なかったのだ。


そのため、村人はオーレリアンへの謝罪と感謝の気持ちを込めて、その種を世代を交代しながらも大切に大切に育てていった。その結果、ポム村は世界でも有数の優れた村になったのだ。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




賢也は館から出て広場を見てみると、ものすごく驚いた。賢也は異世界の村と言ったら、もっと寂れた所を想像していたのだが、そこは全く違っていたのだ。想像とは遥かに違っていた。


その広場を見ると一番に目に入るのが、大きな銅像である。フランス人のような人物がリンゴ、この世界で言う所のポムを空に掲げていた。しかも、その銅像は手入れが行き届いているのか、傷一つすらないほどに輝いている。その輝きは思わず目をつぶりたくなるほどだ。


そして、その象の先にはしっかり舗装された道と、今は閉まっているが出店のような建物が沢山あった。その近くには木箱などが山積みに置かれている。その木箱や出店の建て方などを見ても、かなり発展した文明だと理解出来た。


その発展した道の先に広場のような物があり、そこに一際目立つ集団があることに賢也は気が付いた。そして、よーく目を凝らすと、その広場には十数人の冒険者が集まっていることが分かったのだ。何かを話し合ったり、武器を磨いたりしているようだった。ただ、その中に先程の老人がいることを賢也は全く気がつかなかった。なぜなら、遠くからその集団を見ていたこともあったが、何よりその像の神々しさに圧倒されていたからだ。それぐらい美しく輝いていた。


賢也はその発展具合に驚き立ち尽くしていると、少し先を歩いていた銀髪が


「驚くのも無理ないよ。私も初めて来た時、この銅像の大きさに驚いたものさ」


とニコリとしながら話しかける。その笑顔は女性とも男性とも取れる不思議な笑顔であった。


「えーっと、」


賢也は困った顔をする。その顔の理由にハッと気づいた銀髪は


「そう言えばまだ名乗ってなかったね。私の名前はニコラスだ。よろしく頼む」


と名乗ってくれた。察しが良い男である。賢也もニコラスが名乗ってくれたので、一通り挨拶をした。そして、その後、気になっていたことを質問する。


「ニコラスさんはこの村出身じゃないんですか」


「あぁ、違うよ。私はゴブリン退治のために村に派遣された冒険者さ」


少し自信ありげにニコラスは肯定する。彼にとって冒険者とは運命の職業であることは、その顔から分かった。


冒険者…… 賢也を刺激する言葉が発せられる。


「冒険者なんですか!? 」


賢也は目を光らせながら言った。その目は宝石のように光っている。


「あぁ、そうだ」


ニコラスは間髪入れず肯定する。賢也はその言葉を聞いてワクワクした。この世界にもラノベでよく読んだ冒険者というものが存在して喜ぶ。確かに、怪我人を治療する部屋でも冒険者を見たのだが、あそこの冒険者はなんだか少し絶望を抱いているようで、賢也にとっては失礼だが冒険者のように思えなかったのだ。


賢也の想像ではもっと希望を持ち光り輝いている存在が冒険者だと思っていた。だから、賢也はニコラスの言葉と姿で冒険者が本当に存在していると実感でき、心を踊らせたのだ。


魔法の次に冒険者と言う職業に憧れていた賢也にとっては、最高の世界であった。そんな嬉しそうな賢也を見て、ニコラスは自分が褒められたかのように笑顔でいる。そして、


「そんなに目を輝かせてくれて嬉しいよ。でも、もっと目を輝かせるべき人が身近にいると思うが・・・・」


とチラリとアリスの方を見ながら言った。その目は尊敬と羨望を併せ持つ目であった。


賢也は初め誰のことだか全く見当がつかなかったが、ニコラスの目線を見ることで理解することができた。


「もしかして、アリスが!? 」


と驚いた顔をして言う。目を見開きながらだ。


アリスはそれに対して顔を少し赤らめている。顔の表情はそこまで動いていないのだが、顔は赤くなっていた。


その顔が可愛いなと思いながらも、賢也は驚いていた。アリスの凄さに。


「そんなにすごい人なのか… 」


と賢也は思わず口にしていた。それに対して、ニコラスは


「アリスは凄いぞ。なんと言っても国から認められた剣士だからな」


と心から褒めていた。


その言葉に一瞬アリスは固まった後、アリスは


「レイチェルもだから…… 」


と話を流す。賢也はそれを聞いて、アリスの時以上に凄く驚く。それは目が飛び出すぐらいであった。あのお馬鹿そうなレイチェルが国から選ばれた冒険者であることに腰を抜かしたのだ。


「それって、ほんと!? 」


賢也は尋ねてみた。聞かずには居られなかった。それぐらい、不思議なことだったのだ。賢也はアリスに質問しながらまだ、嘘である可能性があることに期待する。勿論アリスが国から認められた剣士であることには納得だが、レイチェルの方は納得できなかった。あんな性格の悪い女が国から認められた冒険者であるのは、絶対にあって欲しくなかったのだ。そんな賢也に対して驚くべき返答が返って来る。


「本当だよ。怪我人を治している時にレイチェルが言ってた気がするけど…… 」


とアリスは首を傾げていた。その言葉に一瞬舌打ちしかけるが、何とか我慢できた。


ただ、よくよくレイチェルとの会話を思い出してみるとらそんなこともあったような気がすると賢也は思い始める。しかし、賢也はレイチェルの話は話半分でしか聞いてなかったため、完全に肯定することは出来なかったが……


「そんな凄い二人だったのか…… 」


賢也はものすごく驚きながらも、少なくとも今日はこれ以上驚くことはないだろうと安心した。


そんな会話をしていると、


「そんな凄い訳あるか、あんな人造魔剣士と回復しかできないおなごが」


と聞き覚えがある、腹立たしい声が話に割り込んできた。


そこにいたのはあの時の老人であった。アリスに悲しい顔をさせたあの老人である。賢也はちらりとアリスの方を見る。


アリスは一瞬だが、先程と同様に悲しい顔をしている事が賢也には分かった。そんな姿を見た男がどうなるかは、世の男なら分かるだろう。


「ジジイ!

てめーの根性はッ!

畑にすてられカビがはえて

ハエもたからねーカボチャみてえに

くさりきってやがるぜ───ッ!!」


と賢也は怒りを露わにして怒鳴る。


そして、賢也は今度こそ老人をぶん殴ろうと拳を握る。力を込めて拳を握った。そして、その老人に向かって思いっきり殴ろうとした。しかし、賢也が殴る前に老人は遥か遠くに吹っ飛んでいく。先程まで銅像付近にいた老人が、もう出店ぐらいまで吹っ飛んでいた。恐らく数十メートルは飛んでいる。


木箱が砕ける音が聞こえた。


そして、その音が聞こえた後、物凄い怒号が聞こえる。その声は怒号と言うより金切り声に近かった。


「誰が凄くないって、このじじいが!! 」


その声の主はレイチェルであった。


賢也は呆気に取られた。




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