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弱くてキツイニューゲーム  作者: 竜崎 龍郎
第二章 異世界人との遭遇編
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第十三話 ゴブリン討伐隊


長い沈黙が続き、ようやく賢也も落ち着きを取り戻した。ただ、まだアリスの顔を直接見ることは出来ないが。


賢也はこの沈黙を打ち破るためにどのような会話をするか考えていたが、意外にもその沈黙を打ち破ったのはアリスであった。


「迷いの森の中でケンヤはボロボロだったけど、あれってマナ不足の症状? 」


と頭を傾げながら聞いてきた。


賢也はアリスから話し掛けられたとは思ってもいなく、大いに驚いたがなんとか返答をすることができた。


「そっ、多分そうだよ。マナ不足だったと思う。俺の魔法のせいで」


「ケンヤの魔法ってどんな魔法? 」


アリスは少し気になっているようだった。


賢也はその質問を待ってましたとばかりに口を開いた。賢也は自分の魔法及び魔法について全くの知識がなかった。そのため、知識を得るため異世界人に魔法について聞きたかったのである。


しかし、いざ質問しようにもゴブリンの被害のせいで質問をしている暇はなかった。そのため、アリスのこの質問はとても丁度いいものだったのだ。


「俺の魔法は、げ…… 」


賢也が自慢も兼ねてアリスへの質問に答えかけた途端、突然扉が勢いよく開いた。その開け方は優しさを感じることが出来ない物だった。突然の事に2人は固まる。そして、すぐさま扉を開けた人物へと視線を移す。すると、一人の老人がのしのしと入って来た。


「おい、そこの出来損ないの異世界人と人造魔剣士、ゴブリン退治に行くぞ」


とその老人はぶっきらぼうに言った。


賢也はその言葉が自分に言われているものとは思わず、あたふたと困惑している。


すると、老人は


「お前のことだよ。出来損ないの異世界人、ドラゴンモドキすら倒せなかったお前だ」


と賢也を指差しながら喋る。その指の指し方もまた人を小馬鹿にするようなムカつく指し方だった。


ここでようやく賢也は自分が貶されていることに気が付く。ものすごく腹が立った。怒りの火山が噴火しそうであった。


だが、相手は老人だったため一度深呼吸をして


「あははは、それ僕のことでしたか、気づかなくて申し訳ないです」


と下手に出る。老人には優しくしとくのが吉と賢也は知っていたからだ。ただ、心は怒りでいっぱいであったが・・・・・


しかし、老人はそんな賢也をバカにするように


「自分が呼ばれたことも分からないのか。強さもない上に、頭も悪いようだな」


と賢也のことを貶した。そして続けて


「わしは反対なんだ。こんな出来損ない達を討伐隊に入れるのを」


とぶしつけに言った。下手に出てもこの有様である。討伐隊など気になるワードもあったが、その時の賢也の耳には届いていなかった。なぜなら、賢也の怒りの頂点はピークであったからだ。


しかし、賢也は深呼吸をして落ち着かせる。相手はもしかしたら、ものすごい貴族の可能性もあると考えた。某海賊漫画の世界のように、そんな貴族に無礼なことをしたら、賢也の異世界転移物語は速攻でBADエンドだと気がついたのだ。


それでも、日本で鍛えられた賢也のプライドはズタボロにされていた。それなのに、何もせずに、怒りを抑えるなど土台無理な話である。なので、賢也はちらりとアリスの方を見た。無意識に怒りを恋心で抑えようとしたのだ。この無意識のおかげで、プライドが高い賢也は日本でも完璧人間をやることが出来ていた。


すると、目に入ったのは思いがけないものであった。目に入ったのはアリスの悲しい顔。悲しみに暮れていると表現するのが正しい顔であった。いつもは無表情のアリスでも、その時の顔は悲しみで溢れていたのだ。


その瞬間、賢也は勢い良く老人の前へ出て


「おい、じじい。あんた何様だ? 」


と怒りに声を震わせ怒っていた。火山噴火。しかし、賢也も自分がこんな行動を取るとは思ってもいなかった。自分がここまで、他人のために怒れる人間だと思ってもいなかったのだ。その時の賢也は相手が貴族であろうとどうでも良いとさえ思っていた。ただただ目の前のことに対して怒っていたのだ。


「なんだ? 出来損ない?」


老人はそんな賢也を見ても引くことを知らない。どんどん煽る。その姿は将に老害であった。そんな老害に賢也は


「あんたがどこの誰だかは知らない。ただなあ、女を泣かせる奴は俺が許さねぇ」


といつもの賢也なら考えられないようなセリフを言った。それだけ、賢也は怒っていた。


「カッコつけやがって、出来損ないの若造。お前に何ができるんだ?」


「これができる」


と言い、賢也は老人に向かって勢い良く拳を振るった。賢也の拳は確実に当たった、当たったはずであった。その拳を誰かが止めなければ…


「こらこら、これから一緒のチームなのに暴力を振るうなんてダメですよ」


と謎の人物は諭す。


その人物は女性と間違えるほどの長く、そして、綺麗な銀色の髪を持っていた。その上、中性的な顔立ちをしていたのだ。ただ、賢也は︎︎"︎︎彼が︎︎"︎︎確実に男であると確信していた。確信していたのだ。


そう言える理由は彼の身体にあった。見た目がごついのである。ただごついのではなく、必要なところに必要最低限の筋肉があったのだ。将に理想的な身体だったのだ。そんな男は老人に向かって


「ガンテツさんもまた仲間を貶すようなことをしたんですか? 駄目じゃないですか、そんなことをしたら」


と銀髪の男はなだめるようだが、強く言った。そうすると、老人は


「わしもお主のような奴には言わない。こいつらがヤワなだけだ」


と賢也の時のように銀髪の男を貶すことはせずに、部屋の外に出ていってしまった。賢也はその態度にものすごく腹がたっていた。そして、出ていく老人を睨んだ。その事に気づいた銀髪は申し訳なさそうに


「すいません。あの人頑固なんで」


と賢也に謝ってきた。心から申し訳なさそうにしている。その銀髪の姿に


「貴方が謝る必要は無いですよ」


と賢也は言う。まだ老人に対する怒りは収まってないが、銀髪の人間として出来た行動により先程よりはマシになった。


怒りが少し収まった賢也は気づけば、アリスの方を見ていた。賢也はアリスと知り合ってまだそれほど時間は経っていないが、あんなに悲しそうな顔をしているアリスを見たことが無かったのだ。それぐらいアリスにはショックな出来事だったのかと賢也は胸を痛めた。それと同時に再び老人への怒りが爆発しそうになる。


ただ、当の本人であるアリスの顔はいつもの通り無表情であった。いつも通り変化の乏しい能面に戻っていたのだ。賢也はその事に気づき少し安心した。


賢也が安心していると銀髪の男が言いづらそうに口を開く。


「そう言ってくれるとうれしい。それならば言いづらいが本題に入ろう」


賢也とアリスはなんのことだか薄々気がついていた。銀髪もそれを見越して口を開く。


「さっきの無礼があって頼みづらいのだが、単刀直入に言う。ゴブリン討伐隊に入って欲しいんだ」


そう銀髪はバツの悪そうに言った。




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