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弱くてキツイニューゲーム  作者: 竜崎 龍郎
第二章 異世界人との遭遇編
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第十二話 二度目の目覚め


賢也が瞼を開けた時、一番最初に見えたのは見覚えのある天井であった。その天井は木造であったが、どこか強さを感じるものだった。


賢也は覚えていることをゆっくりと思い出す。


「怪我人だったおじさんがゴブリンが大量発生しているって言ってて、それにおれはビビって、そしたら大怪我した子供が来て、アリスの手を握ったら・・・ どうなったんだ? 子供は大丈夫なのか? 」


賢也は自分の状況を思い出せば出すほど、なぜ自分がベットの上でボーッと天井を見ているのか納得できなかった。


そんな困惑している賢也に対して優しい声が聞こえる。


「大丈夫そう?頭痛まない? 」


そこに居たのはアリスであった。彼女の表情はあまり変化がないが、賢也の方に顔を覗かせている。


その様子に賢也は何故だか顔が赤くなった。それを隠すようにアリスがいる反対側を反射的に見る。そして、気持ちが悟られぬようにアリスに話しかける。


「おっ、俺は大丈夫だけど、あの子供は大丈夫なのか? 俺何も覚えてなくて・・・ 」


その時の賢也は確かにアリスに恥ずかしさを悟られたくないと思っていたが、それと同時に子供のことも心配していた。だから、彼は気づけば子供の生死を彼女に聞いていた。


その反応を見てアリスは賢也の体が異常ないことにに心を安心させ、ほんの少しだが顔を緩ます。そして、すぐさま賢也の質問に答える。


「あの子はレイチェルとケンヤのおかげで何とかなったし、手も無事に治ったよ」


賢也はその答えを聞いて安心した。いくら性格が悪い賢也であっても、目の前で人が死ぬのは目覚めが悪いのである。


そして、名前を呼ばれたことを少し喜んだ。


その後、数分間沈黙が続いた。


賢也はその間ずっとドキドキしていた。それもそのはず、賢也は今まで恋をすることが全く無かった。そのため、本人は無自覚であるが、好きな人にどのように話しかけていいのか分からなかったのである。そんなチェリーボーイの彼にはこの時間は苦痛に思いつつも、どこかこのままでいたいと思わせるような不思議な感覚を抱く物であった。仮に恋の魔術があるとしたらこのことを言うだろう。


普通なら自分がどうしてベットで寝ているのか疑問に思い聞くだろうが、それを思いつかないぐらい彼は恋していたのだ。


賢也は話すことがなく、困ったのでアリスの方をチラリと見る。本当に一瞬見た。だが、その表情は先程と同じで、全く動いていない。それでも、美しい顔立ちは動いていないことも相まって、一種の芸術と表すのが相応しい物だった。


しかし、チェリーボーイ賢也にとっては表情が動かないことさえも、胸をどぎまぎさせる要因となっていたのは言うまでもない。彼女の考えていることが顔から読み取れず、どう切り出すかかなり悩んだ。


かなりの時間、必死に話題を考えて、賢也はこう切り出した。


「レっ、レイチェルはどうしたんだ? 」


「今は魔力を使いすぎたから寝ている」


とアリスは間髪入れず答える。


その後、再び沈黙。


必死に頭を使った話題もアリスの前では無意味であった。


その沈黙の間も賢也は胸の高まりを強く感じていた。そして、それと同時に必死に頭を使っている。彼女となるべく多く話すために。


彼がここまで頭を使うのはドラゴンモドキ以来であった。それぐらい、彼女のことでいっぱいだったのだ。


そんなことを考えていると、賢也はさっきのアリスが言っていたことに疑問が生じる。そして、疑問を解消すべく、すぐさま彼女に尋ねる。


「俺のおかげって言ってたけど、俺は多分気絶してただけだよ」


とバツの悪そうに言う。賢也は自分が男の子の治療に全く役に立ってないことを分かっていた。何故なら、その男の子を助けた記憶が何一つ無かったからだ。アリスが言うには男の子は助かったらしいが、賢也はそれすら覚えていなかった。ということは、賢也が男の子の助けになったはずがない。


だから、流石の賢也も虚偽の内容で褒められるのは精神衛生上良くないので訂正をする。


すると、返ってきた答えは彼にとって驚きの物だった。


「そんな事ないよ。ケンヤのマナを貰わなければあの子の両手は治せなかったよ。ありがとう」


とアリスは切実に賢也に感謝していたのだ。


マナを貰う・・・・ その言葉を聞いてハッとする。そういえば、気絶する寸前アリスに触れたなぁと納得する。その事を思い出した賢也は少し赤くなりながらも、


「そう言ってくれて嬉しいよ」


とアリスの感謝の気持ちを受け取る。かなりカッコつけた物言いであったが、アリスの役に立てたことに陰ながらガッツポーズをしていた。それぐらい役に立ったのが嬉しいのである。


しばらくの喜びの後、賢也はあることが気になり始める。気になったらすぐさま口が動いていた。


「マナを貰う… ってことはやっぱり君の魔法は魔力の贈与と奪取なの? 」


賢也の目はクリスマス前の子供のように輝いていた。心の底から魔法について知りたいことが、その目を見れば簡単に読み取れる。そこには普段のカッコつけた彼など存在せず、居るのは魔法に憧れる青年であった。そんな彼にアリスは


「うん…… 私の魔法だよ」


と無表情なのに、何処か暗い感じを出して言う。その顔は普段とそこまで変わらないようだが、僅かに悲しみが存在しているようであった。それを見た賢也はすぐさま謝る。


「もしかして、触れちゃ不味かったかな?不味かったなら謝るよ 」


「触れちゃ不味い訳じゃない。私の魔法は... いろいろ複雑…… だから… 謝らなくていい」


と彼女はバツの悪そうに言う。何か裏があるのはその反応から重々に承知できた。


しかし、賢也はこういう時に無理に詮索しないことが良いということを知っていたため、それ以上は聞かなかった。


そんな会話をしていると、さっきまでのドキドキはだいぶマシになっていることに気がつく。慣れを感じた。


「そう言えば、なんで俺って気絶してたの? 」


と賢也は何気なく質問してみた。ようやく冷静な思考を取り戻したようだった。


「ケンヤはマナ不足で倒れたの。私が吸い取りすぎちゃったせいで倒れちゃった。ごめんなさい」


とアリスは申し訳なさそうにしている。このことを聞き、だから彼女は自分が起きる時に心配そうな顔で見ていたのかと納得する。そして、すぐさま訂正をする。


「いやいや、全然謝らなくていいよ。アリスも人を助けるためにしたんだから」


「そう言ってくれると嬉しい」


アリスは笑みを少し浮かべる。その微笑みは、どんな言葉よりも多くのことを語っていた。


再び胸の高まりを感じながらも、賢也はマナ不足というキーワードに対してもワクワクしていた。そして、もっとそのことを知りたくなった。


「マナ不足になると気絶するの?」


賢也は目を輝かせながら聞く。そんな彼の気持ちを感じ取ったのか分からないがアリスが話し出す。


「普通、マナ不足になったら意識を無くすまではいかないけど、体を動かせなくなる。そんな時、冒険者は大抵自分の体力を削りながら魔法を使うんけど…… 」


アリスは指でバッテンを作りながら


「あの時のケンヤはドラゴンモドキと戦った後だったから、体力の方も限界だったの。だから、急なマナ消費で体が限界を向かえた」


と質問に答えた。


「あんなに体は元気だったのに... 」


と賢也は起きたばかりのあの元気さを思い出す。体から力が漲るような、今まで感じたことがないあの感覚だ。その発言を聞くとアリスは待ってましたとばかりに口を開く。


「それは多分、レイチェルと魔力の波長があったからだと思う。二人は似ているから」


さも当然のようにアリスは言った。


「あのレイチェルと!? 」


賢也は思わず声を上げた。あんな無礼でデリカシーのない奴とどこが似ているのかと賢也は首を傾げる。あんな女と似ているなんて、アリスは見る目がないなぁとさえ思っていた。命の恩人のレイチェルとアリス2人に対して酷い男である。そんな賢也の心の声など分かることなく、アリスは珍しく自分から話し出す。


「レイチェルと似ている人はレイチェルの治癒魔法を受けると、いつも以上に元気になってポジティブになる。だから、二人は似ている。証明終了」


とアリスは頭をうんうんと納得した様子で話していた。そんなアリスに対して賢也は首を傾げる。


「そんなに…似ているかな? 」


「二人ともそっくり」


と食い気味に言った。そして、続けて言う。


「だから、仲良くなれて嬉しい」


嬉しそうである。相変わらず顔の表情はそこまで動いていないのだが、何故だかその顔からはとてつもなく大きな喜びを感じ取れた。その喜びは初めて親友ができた子供のようであった。


賢也はその言葉と仕草から、恋しさが焼くように胸に迫る。身体中から汗が噴き出しそうになるくらいドキドキが爆発していた。


(なんでアリスの言葉にこんなにも心が動かされるんだ!? こんな気持ち初めてだ!! )


賢也は張り裂けそうな気持ちを抑えながら


「そっ、そう言ってぇくれてうれしいよ」


と声が少し裏返りながら言う。賢也は自分が出来る最大限で答えたが、いつもの賢也の返答の仕方とは遠く離れていた。その動揺の仕方は正に貴方に恋をしていますと言わんばかりのものである。


常人ならここで、もしかして彼は私に気があるのかもと思うだろうが、賢也が恋する相手アリスはそんなこと微塵も思っていなかった。


賢也の恋の初心者具合も驚きであったが、アリスの鈍感さも同様に驚きである。


それから数分間、沈黙が続いたのは言うまでもない。





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