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弱くてキツイニューゲーム  作者: 竜崎 龍郎
第二章 異世界人との遭遇編
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第十一話 ゴブリン大量発生


賢也はその男を見て興味を示す。なぜなら、その男の姿はあれに近かったからだ。そう、賢也の憧れ、冒険者だ。そして、冒険者のような男を一瞥した後、男の言ったことを思い返す。


ゴブリン・・・・・・


その言葉を聞いた賢也は


「ゴブリンってあの緑で知能の低いゴブリンですか? 」


と元怪我人に驚いた様子で聞く。賢也はラノベで何度も読んできたゴブリンを想像した。ラノベでのゴブリンの登場回数は凄まじいものであった。ゴブリンが出てこないような異世界物はないと言えるぐらいの登場頻度だ。だが、その登場頻度と裏腹に、大抵ゴブリンは序盤の雑魚敵である。弱すぎて、序盤以降殆ど出てこないような作品も多い。


それなのに、物凄い人数の怪我人を出していることに賢也は少し驚いた。そして、この世界の魔法のレベルは低いのでは?と少し期待した。


「あぁ、そうだよ。そのゴブリンさ」


と深刻そうに彼は答えた。彼の傷は完璧に治っていたが、体力をごっそり持っていかれている様子である。それでも、彼は絞り出すように語り出す。


「以前のゴブリンは村人が1人でも簡単に倒せる魔物だったんだ...」


彼は一呼吸置く。彼自身の体はあまり傷がなかったが、どこか様子がおかしい。疲れている・・・ そう現すのが正解なのかわからないが、様子が常人とは違っている。だが、話をやめて貰うわけにもいかず、賢也はそのまま静かに聞いていた。


「それがここ最近、数がものすごく増えた上にゴブリン達が村からそう遠くない位置で街を作るようになったんだ」


「ゴブリンが街を!? 」


賢也は思わず声に出す。ゴブリンが街を作るなんてラノベですら聞いたことが無かったからだ。


「街と言っても簡素なものだが、恐ろしいのはその増えたゴブリン達一人一人がまるで誰かに操られてるように動くんだ」


元怪我人は顔色が悪くなっていた。先程より体調が悪そうであった。賢也も普通ならここで元怪我人を心配すべきだが、好奇心が勝ってしまい、そのまま止めることなく恐る恐る質問をする。


「操られるように? 」


「そうだ。ゴブリン達はまるで、俺たちの弱点を知ってるように攻撃してきたんだ!! 今までの知能なら弱点を狙ってくるなんて以ての外、陣形すら組んで攻撃なんてしてこないはずだったのに…… あんな武器だって…それなのに… それなのに… 」


元怪我人は怯えるように言う。彼が経験したことが地獄のようなものだったのは、その様子を見ればひと目で分かった。そして、彼は何か恐ろしいものを思い出しているように震えている。目は恐怖で焦点が一致していなかった。それでも、彼は震えた口で伝える。


「あのゴブリン街は地獄だった。討伐しに行った冒険者はぜ・・・ ぜいいん… 」


元怪我人は言い終わる前に、意識を失ってしまった。


「全員? 全員がどうなったんですか? 」


賢也は元怪我人を揺さぶったが、全く起きる気配は無かった。一瞬、死んだかと賢也は思ったが、耳をすませば呼吸音が聞こえたので安心する。


賢也は胸を撫で下ろした後、彼の話を整理した。


「以前は倒すことなんて簡単だったゴブリン。それが最近になって急に強くなった」


弱かった魔物が途端に強くなる…… これは賢也にも身に覚えがあった。身に覚えがありすぎて困るぐらいである。


「これって、もしかして!? 強化種なのかッ!? 」


強化種── 賢也を無限に思えるほど追ってきた上に、殺しかけたあのドラゴンモドキ・・・・

あいつも強化種であった。


「誰かに操られているようって言ってたよな。それって、強化種一匹がゴブリンたちを操っているのか? それとも… 」


賢也は独り言を言いながら、最悪な想像をして寒気を感じていた。あの恐ろしく、執拗い強化種が街を作っていることに。その上、その強化種がたった1匹とは限らず、大量にいる可能性を考えてしまったのだ。


ただ、賢也はビビるだけでなく、彼らと闘いたいという矛盾した感情も抱いていた。あそこまで、しつこく追い詰めて来た強化種を今度はひとりで倒したいと思っていたのだ。


そんなことを考えていると賢也はあることに気が付く。


「ゴブリン達が街を作っているということはこの村も攻め込まれるのでは? 」


強化種と対峙した賢也はあのしつこさをよく覚えていた。賢也が一度攻撃しただけで、どんなに逃げても、逃げても、逃げても、絶対に追いかけてくる奴だった。


「冒険者が討伐しに行ったなら、その仕返しをしてくるのが強化種だろ。だったらこの村が危ないんじゃないか!! 」


その賢也の嫌な予感が当たったかのように、誰かが救護室に駆け込んできた。その誰かが部屋に入ってきた瞬間、鉄のような鋭い匂いが広がる。


その人物は息を切らしながら、自分の残りの力を振り絞るが如く大きな声で叫んだ。


「村にゴブリンが現れて、私の子供、私の子供が・・・ お願いします、助けてください、お願いします」


母親らしき人物が、手を切断された子供を抱えていた。母親も頭から血がものすごく出ていたが、子供の方が容態が酷かった。


その子供は両手が切断されており、その切断された腕からの出血がとても酷い。意識も朦朧としていて、目の焦点も合っていない。医学知識のない賢也ですら予断を許さない状態であることが分かった。


そのため、すぐに賢也は包帯をその子の手に巻き、ベッドに寝かせた。そして、レイチェル達を叫べるだけ大きな声で呼んだ。


母親も我が子がベッドに運ばれるのを見て、地面に倒れた。間一髪の所で賢也の声に気づいたアリスが母親の身体を支えたため、頭は打たなかった。それでも、母親の方もかなり容態が不味い。


それを見て先程まで死にそうな顔をしていたレイチェルだったが、すぐさま魔法を使った。再び言語石でも訳せない呪文を唱えている。


そうすると、先程より光が弱い緑の光が親子の周りに現れる。その光は消えそうな程に弱々しかった。それと同時に、レイチェルからは鼻血が出てくる。だが、レイチェルはそんなことを気にせず、二人に魔法を使う。


その姿を見たアリスは直ぐにレイチェルの身体に触れ、マナを注いだ。アリスはこれまでよりも強くマナを流していた。その結果、弱かった光が再び強く激しく光出す。


その光が母親を包むと母親の頭の出血はみるみるうちに止まる。気絶したままだが、体の方はどんどん回復していた。しかし、子供の方は全く治っていない。出血が治まった所か、むしろ苦しそうである。余りの苦しさに吐血する程だった。


その姿を見たレイチェルはすぐさま子供に魔法をかけるのを辞める。


「まずい、この子のマナと私のマナの相性がすこぶる悪い」


とレイチェルは独り言を呟いた後、近くにいた看護師のおばちゃんに何かを伝える。それを聞いたおばちゃんは走って何かを取りに行った。


その状況に賢也は目もくれず、賢也はとにかくその子供に話しかけていた。


「頑張れ!!」「諦めんな!!」など賢也はとにかく話しかける。賢也に出来るのはそれぐらいであった。自分の無力さを呪う。


そんな賢也にレイチェルは


「賢也くんアリスの手を握って!! 」


と叫んだ。レイチェルは先程のおばさんが持ってきたと思われる杖を持っていた。その杖は銀色の木の棒にルビーをつけたような見た目である。


そんな杖を見ることなく、賢也はすぐさまアリスの手を握ぎる。


そして、レイチェルは再び何語か分からない呪文を唱えた。今回のは少し長めの呪文であった上に、時折不快に感じるような気持ちが襲って来る。それでも、その気持ちは意識しなければ影響がないため、賢也はアリスの手を強く握っていた。


それに呼応するように、アリスは賢也の手を強く握る。賢也は何か吸い取られる感じがした。体の芯の何かが吸い取られるようである。レイチェルやアリスからは鼻血が出ていた。


そのおかげか分からないが、今までの色とは違う赤い光が集まってくる。その光は緑の光より圧倒的に強く激しく輝いていた。ただ、その光は少しの衝撃でも壊れそうな繊細さも併せ持っているようである。それでも、強く輝き続ける光に、賢也は今はそういう場合では無いのに美しいと感じていた。


賢也はその感想を抱いた瞬間、血を吐きながら意識を失った。





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