表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/73

後日談 1

後日談 1 




「迷うわ……」


「ん? コレット、どうした?」


「ベライス様へのお祝いの品は、どちらの茶葉が良いかしら? どちらも甲乙つけ難くて……」


 店内には、全体的に柿渋のような赤みのある暗い茶色の木が使われており、商品である明るい色の箱を美しく際立たせていた。ティーカップとソーサー、ポットやティーメジャースプーンなどお茶を楽しむ茶器や雑貨も並べられ、購買意欲を掻き立てる。

 天井には、花のような形をした小ぶりのシャンデリアが吊るされていた。花弁部分の黄色みがかったガラスが、訪れる者に優しい印象を与える。

 シナモンのような黄色みのある茶色い木の床はとても綺麗に磨かれており、光が反射するほどだ。


 この日、コレットはロデールと共に、王都にある茶葉を扱う店を訪れていた。


 目的は自身の友人であるベライスのために、結婚祝いの品を購入するため。

 よくベライスと二人で訪れて互いに茶葉を贈り合うので、祝いの品を購入するのに良いと思ったのだ。


 そのことをコレットはロデールに手紙で書くと、彼の方から同行したいと申し出てきた。

 すでにロデールは領主教育を終え、王室騎士の職務に戻っているので引き続き多忙な状態だ。しかし、良い息抜きになると思い申し出を受け入れることに。

 コレット自身も、彼に会いたいという希望も含まれている。


 現在、手には二つの茶葉がある。

 一つはアッサムの茶葉、もう一つは乾燥した苺やオレンジ、パイナップルの入ったフルーツティーの茶葉。

 アッサムの茶葉は、ベライスの夫となるデロワの影響で彼女もよく飲むようになったと聞いていたから。そして、フルーツティーの茶葉は、ベライスやデロワの可愛らしい印象にとても似合うと思ったからだ。


 本当はフルーツティーの茶葉を選びたかったが、友人の晴れの日に贈る祝いの品。

 しかも、結婚祝いであることが大きく影響し、慎重になっているコレットは二の足を踏んでいた。


 すでに二人も気に入っている茶葉にするか、二人の印象で選ぶかを迷っていたのだ。


 二つの茶葉を手に、にらめっこをしている婚約者を愛しく思いながらも、ロデールは悩む。


「私が口を出して良いのだろうか?」


 コレットとベライスは友人同士、当然、互いに好みは熟知しているはず。そんな二人に口を出すような真似をして良いのか、ロデールは危惧していたのだ。


 すると、彼の不安を払しょくするようにコレットは優しく笑った。


「ロデール様を信頼していますもの。弟のサロモンに仕掛け絵本を贈ったら、とっても喜んでくれたのよ? あの時、意見を取り入れて絵本を選んで良かったわ」


 コレットから理由を聞き、ロデールはようやく安心する。


「ありがとう。では、差し出がましいことを承知で言うが、私はフルーツティーの茶葉が良いと思う」


「まあ、なぜですか?」


 コレットは嬉しそうにする。

 内心、自分もフルーツティーの茶葉を選択しようと考えていた。二の足を踏んでいた彼女にとって、とても喜ばしいことだが理由が気になったのだ。


 ロデールは優しく理由を説明する。


「苺の花言葉は『幸福な家庭』だし、オレンジの花言葉は『美しさ』『優しさ』がある。パイナップルの花言葉については、うろ覚えだが『完璧』『満足』などで良い言葉が多かったように思う」


「まあ、ロデール様は博識なのね! 聞いて良かったわ。では、フルーツティーの茶葉にするわね」


 説明を聞いて納得したコレットは、フルーツティーの茶葉にすることを選択。

 しかし、簡単に自身の意見を取り入れた彼女に、ロデールは少し慌てて確認する。


「本当に、私の意見で決めて良いのか?」


 再び不安げになるロデールに、コレットは心の内を吐露する。


「ふふ、実は私も、フルーツティーの茶葉が良いと考えていたのよ。でも、自分の選択に自信が持てなかったから躊躇していたの」


 さらに、可愛らしく笑いながら付け加える。


「純粋で初々しい二人に、とっても似合っていると思いませんか?」


 脳裏に浮かぶのは、ベライスとデロワの微笑ましい様子。

 夜会では、ベライスがデロワの瞳の色と同じドレスを着こなし、褒めると嬉しそうにした。

 デロワの方も、ベライスと楽しそうに会話をしていたことを思い出す。


 純粋で初々しい二人の関係に、甘酸っぱいフルーツティーの茶葉は結婚祝いに最適だ。


「確かに」


 二人の様子を目にしたことがあるのか、ロデールも笑いながら同意した。


 コレットは自身の侍女に、アッサムの茶葉を棚に戻すよう指示する。

 その間、ロデールに提案した。


「こちらのお店は二階の部分で軽食がいただけるのだけれど、後程いかがですか? 期間限定の茶葉が試飲できるのでお勧めなのだけれど……」


 少し恥じらいながら軽食に誘った。

 最初から誘うことは決めていたが、顔が赤くなってしまう。


 友人のことを考えていたら、ロデールがさらに愛しく感じたのだ。


 コレットと同様なのか、ロデールも少し耳を赤くする。


「ああ、是非いただきたい」


 早々にコレットは会計を終え、ロデールと共に二階へ。



 自身の想い人と共に、美味しいものを味わう喜びを享受できる。


 ささやかな幸せを過ごせる期待に胸を躍らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ