69 誘拐されました (6)
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「いけませんわ、お父様。その件については、私が決めることではありませんもの。ご当主の皆様と話し合って決めるべきです」
コレットは、あくまで当主が決めることだと主張した。
ジョイルはポワミエ伯爵、カレドロ伯爵、ベルワーテ侯爵、さらに、カレドロ伯爵領の領民にも迷惑をかけている。一介の伯爵家の息女に過ぎない彼女が決めるべきではない。
それに、先ほどのジョイルを見たら甘い罰を下しそうだ。まだまだ未熟なことは、コレット自身が一番、理解している。
「お父様やカレドロ伯爵、ベルワーテ侯爵に、彼の処遇をお任せしたく存じます」
「ふ、そうだな」
その後、ジョイルの処遇についてポワミエ伯爵、カレドロ伯爵、ベルワーテ侯爵は話し合った。
結果、事件化しないことに。
事件化すれば、ジョイルに協力した幼い女の子も罪に問われる可能性がある。ポワミエ伯爵は息子と同じ歳の子に対して、罪に問う決断はできなかった。
無自覚であったとしても、伯爵家の息女の誘拐に協力したのだ。当然、ただでは済まない。
カレドロ伯爵も、自身の領地の人間が伯爵家の息女の誘拐に加担していたなどと言う醜聞が出回れば、ブドウ酒の価値が下がる。そうなれば領民にも負担がいくだろう。
しかし、見逃すわけにはいかないので、ジョイルには莫大な賠償金や慰謝料を請求することに。
平民であれば、一生かかっても払いきれるか分からない額だ。ある意味、刑事罰を受けるよりも辛いかもしれない。
ジョイルより少額だが、協力者の男性たちにも請求することにした。
ベルワーテ侯爵はジョイルのことで責任を感じたのか、彼の莫大な賠償金や慰謝料を肩代わりすることに。
決して、ジョイルのためではない。自分への罰と、確実に相手に対して金銭を支払いたかったからだ。
そして、侯爵領の北西にある炭鉱にジョイルを強制労働させることにした。
侯爵領の北西にある炭鉱は崩落の危険性があり、近くには野生動物や毒を持つ虫も生息している。常に、命の危険にさらされる恐怖に怯えることとなるのだ。
すでにジョイルは炭鉱に移送されており、他の炭鉱夫に怒鳴られながら仕事をしているらしい。
それでも、今のところは真面目に取り組んでいると、ベルワーテ侯爵からの手紙に書かれていた。
彼は、泥や炭に塗れながら生涯を終えるかもしれない。
草が芽吹き始めたころ。日が昇り切り、外の鳥のさえずりが聞こえる。
コレットの寝室にあるカーテンを開け、窓も開け放った侍女。
その音で目を覚まし、コレットは少し遅めの起床をした。
「おはようございます、お嬢様」
侍女は慣れた手つきで、カーテンをタッセルでまとめる。
コレットは軽く屈伸した。
「おはよう、暖かくなってきたわね」
「左様でございますね」
コレットは侍女と穏やかにあいさつし合う。
侍女が身支度するための準備をしている最中、コレットは一旦、領地に戻ってからの出来事を振り返る。
彼女とポワミエ伯爵は無事、カレドロ伯爵との業務提携の話をまとめることに。現在、商品開発について協議を重ねている最中だ。
式の準備のため、徐々にコレットが担当していた高級品種の梨の仕事を、ポワミエ伯爵が引き継ぐこととなった。元々ポワミエ伯爵がしていた仕事だったので戻ったと表現した方が正確だが、コレットの功績はとても大きい。
そのため、ポワミエ伯爵から高級品種の梨の利益の一部を持参金に。さらに、カレドロ伯爵との事業が成功すれば、その利益の一部も合算すると聞かされた。
なにもかも上手くいき、自然と笑顔になるコレット。
そんなコレットに、水差しを持った侍女が話しかける。
「そういえば、今日でございましたね。ロラ卿がお見えになるのは」
「ええ。だから、うんと可愛くしてちょうだい!」
コレットは侍女に可愛らしくお願いした。
ロデールが式の準備を進めるためにポワミエ伯爵邸を訪れる。きっと会話を弾ませながら準備を進めるに違いない。
そう思うだけで、幼い子供のようにワクワクした。
コレットの楽しそうな様子を見て、侍女は笑顔で頭を下げる。
「お任せくださいませ」
コレットは身支度を整えるためにベッドから出る。
どのドレスにしようか迷うが、身に着けるアクセサリーは既に決まっていた。
多分、次の投稿で最後になると思います。
最後までお付き合いいただければ幸いです。




