65 (ロデール視点)
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65(ロデール視点)
すぐにベルワーテ侯爵とロデールは支度を済ませ、馬車を走らせた。少しでも早く目的地に到着するため、頻繁に馬を替えて休憩する回数を減らすことに。
その甲斐あって、わずか一日と半日でカレドロ伯爵領にある伯爵邸へ。
これは、ベルワーテ侯爵領とカレドロ伯爵領が隣接していたことが幸いしたのだ。
辺りがすっかり暗くなり、街から明かりが消えたころ、ベルワーテ侯爵とロデールはカレドロ伯爵の邸宅に到着した。
邸宅に招き入れられ、事情を察した伯爵の執事に応接室へと案内される。小走りで応接室へ向かう最中、バタバタと慌しく走る使用人と何度もすれ違う。
通された応接室には、カレドロ伯爵とポワミエ伯爵がいた。
カレドロ伯爵は慌てた様子で使用人に指示を出し、ポワミエ伯爵はソファーで項垂れながら娘の名前を呼んでいる。
不測の事態に、カレドロ伯爵は冷や汗をかいていた。
「騎士団からの連絡は?」
「現在、範囲を広げて捜索にあたっているそうです。ですが、今のところポワミエ伯爵令嬢に関する情報は無いそうです」
主からの質問に、使用人は緊張した様子で答えた。
捜査に進展が無いことに苛立っているのか、カレドロ伯爵は眉をひそめる。
「エミードからの連絡は?」
「坊ちゃまからも情報は入っておりません」
カレドロ伯爵の子息も捜査にあたっているのだろう。エミードからの連絡に期待したが、こちらも情報は無いらしい。
「コレット……」
心配するポワミエ伯爵は、娘の名前を憔悴した様子で呟く。
早急に事件を解決したいのか、ポワミエ伯爵を気にかける者はいなかった。
「失礼いたします。旦那様、ベルワーテ侯爵とそのご令息がお見えです」
カレドロ伯爵の執事が、ベルワーテ侯爵とロデールの到着を主に伝える。仕事に戻るためか、頭を下げた後、すぐに退出した。
ベルワーテ侯爵はおずおずといった様子で、カレドロ伯爵に突然、訪問したことを謝罪した。その後に、状況の説明を乞う。
「先触れも無く訪問してしまい、申し訳ありません。あの、まだ事情を把握できていないのですが……あれがポワミエ伯爵令嬢を誘拐したのではと伺いまして……」
カレドロ伯爵は少し自身を落ち着かせた後、二人に説明する。
「確かな証拠があるわけではありませんが、彼は我カレドロ領に来ていたそうです。息子のエミードからの情報によれば、経済的に困窮している様子だったと」
カレドロ伯爵の言葉に、ベルワーテ侯爵とロデールは驚く。
すると、カレドロ伯爵は申し訳なさそうな表情をした。
「お知らせするべきか迷いましたが、ベルワーテ侯爵は彼と縁を切ったとお聞きしたものですから……。ご心労をおかけすると思い、あえてカレドロ領に来ていたことは伏せておりました」
「そうでしたか。お気遣いいただき、ありがとうございます……」
ベルワーテ侯爵が感謝の言葉を口にする。
さらに、カレドロ伯爵は説明を続けた。
「ポワミエ伯爵家の護衛に、賊が紛れ込んでいたそうですよ。よく似た服を用意したのでしょう。ポワミエ伯爵家の騎士を知っている、ポワミエ伯爵令嬢を狙ったことから、私たちはジョイルを疑っています」
「そ、そうですか……」
ベルワーテ侯爵は少しふらつきながら言葉を絞り出す。
貴族の騎士が着ている服を、詳細に知っている者は少ない。
カレドロ伯爵領に来ていたのなら、ジョイルの可能性が高いと考えるのが自然だ。
生活に困っているのなら、コレットを誘拐した目的は関係の修復を迫るためだろう。
ロデールは、自身の父親であるベルワーテ侯爵とカレドロ伯爵の会話を聞きいて状況を整理する。
申し訳ないと思ったのか、ベルワーテ侯爵は深々と頭を下げた。父親に倣ってロデールも頭を下げる。
「カレドロ伯爵、ポワミエ伯爵。この度は私の愚息が申し訳ありません……。特にポワミエ伯爵には、どうお詫びすれば良いか……」
「……」
娘のことで頭がいっぱいなのか、ポワミエ伯爵は沈黙している。
カレドロ伯爵は短く溜息を吐いた。
「立て込んでおりますので、今は謝罪は結構です」
カレドロ伯爵は、自分の領地で誘拐事件が起きたこと。
ポワミエ伯爵は、娘が誘拐事件の被害に遭ったこと。
ベルワーテ侯爵は、縁を切った息子が誘拐事件を起こしたこと。
ロデールは、弟が自分の恋い慕う婚約者を誘拐したこと。
それぞれ疲弊し混乱していたが、その中でもロデールは比較的に冷静だった。
今まで多くの戦場を経験してきたお陰で、胆力が鍛えられたのかもしれない。
ロデールはカレドロ伯爵に提案する。
「カレドロ伯爵。ポワミエ伯爵令嬢が連れ去られた後に起きた、領地内の事件を教えていただけませんか? もしかしたら、小さな事件から解決の糸口が掴めるかも知れません」
「ああ、そうだな」
カレドロ伯爵はすぐに家令に指示し、領地内で起こった事件の書類を応接室に持ってこさせた。
ロデールを始め、カレドロ伯爵、ポワミエ伯爵、ベルワーテ侯爵はテーブルに広げられた書類の一枚一枚に目を通す。
小さな事件から、大きな事件まで全て。
コレットが何か手掛かりを残しているかも知れない。
そう思い、ロデールは真剣に書類に目を通した。
そんな彼の前に、カレドロ伯爵が手に取っていた書類を戻す。
ふと、戻された書類が気になり、ロデールは手に取る。
その書類こそが、コレットの居場所に繋がる重要な手がかりだった。
【2026.7.23】
“私兵”から“騎士”へ修正しました。申し訳ありません。




