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私の夢は私が決める ~婚約者に「夢を叶えるために支えて欲しい」とお願いされましたけれど、勝手だと思いませんか?~  作者: ほし


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59 仕事のために他の領地を訪れました (1)

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 カレドロ伯爵領の関所に近い街。

 関所に近いせいか、商人や旅芸人など、大荷物を持った人や馬車が行き交っている。

 売り物が入っているであろう木の箱や樽がうず高く積み上がり、あちこちで商人が商談をしている。

 屋台や露店も多く出店していることは勿論、別の領地や他国から来た旅芸人が広場で劇を披露していたりなど、とても賑やかだった。


 そんな中、ポワミエ伯爵とコレットは、少し喧騒から離れた場所に建っているホテルに滞在していた。

 石造りで歴史を感じさせる建物となっており、貴族や豪商などが多く利用している。


「ふう……」


 自分にあてがわれたホテルの一室。

 資料の束を手にしながらコレットが溜息を吐くと、侍女が気遣う。


「少し休憩なさってはいかがですか?」


「ありがとう。でも、もう少しだけ分かりやすく、まとめておきたいの。確認もしておきたいし……」


 侍女に感謝した後、コレットは資料に少し書き足す。


 コレットは父親のポワミエ伯爵よりも、カレドロ伯爵との業務提携に意欲的だった。

 高級品種の梨の魅力を、多くの人に伝えることができるかもしれない。そう考えるだけで熱が入る。


 そうだわ――そう言いながらコレットはペンを置き、侍女に尋ねる。


「お父様と情報を共有しておきたいのだけれど、今はどちらにいらっしゃるの?」


「確か、ロビーの方に向かわれるのを拝見いたしました」


「そう。今もそちらに、いらっしゃるかもしれないわね」


 侍女に父親の居場所を聞き、コレットはロビーへと向かう。



 辺りを、きょろきょろと見回してみると、コレットはすぐに父親を見つけることがでた。

 そちらへ駆け寄ると、男性となにやら会話をしている。二人の周囲には少し不穏な空気が漂っていた。


「少し待ってもらいたい」


 ポワミエ伯爵が男性に待つよう伝えると、切りが良いと思ったコレットが話しかける。


「お父様、どうなさったのですか?」


「ああ、コレットか。丁度良い」


 ポワミエ伯爵と男性の会話は、コレットにも関係しているらしい。

 少し焦っている様子のポワミエ伯爵の手には手紙があった。


 コレットの心の中がざわつく。


「ジョイルが、カレドロ伯爵邸に現れたらしい」


 ポワミエ伯爵の口から伝えられたことに、コレットは息を呑む。

 さらに、ポワミエ伯爵は話しを続ける。


「カレドロ伯爵のご令息が対応されて、奴を追い返したそうだ。もしかしたら今も潜伏している可能性があると、早馬を飛ばして知らせてくださったのだ」


 さらに、ジョイルの様子が伝えられる。


「経済的に困窮している様子で、なにを仕出かすか分からない。十分、警戒するようにと」


「そう……だったのですね……」


 ポワミエ伯爵領にいた時、ジョイルの遭遇に怯えていては侯爵夫人は務まらないと啖呵を切った。

 しかし、いざ、その事態になると足がすくむ。

 実際、コレットは自身の手足が震えているのを感じていた。


 ポワミエ伯爵は溜息を吐きながら、片手で額を覆う。


「何をして来るか分からない分、野盗より質が悪いな。こうなると、一旦、領地に戻るか……あるいは、奴に会わないことを祈って、カレドロ伯爵と業務提携の話を進めるか……」


 相手は普通の平民一人。こちらは護衛の数も増やしている。

 安心できる状況だが、どこか不安感が拭えない。

 窮地に立たされた人間が何をするか予想できない以上、万全を期す必要がある。


 考え込むポワミエ伯爵に、コレットが話しかける。


「お父様がこちらに残るという選択肢はありませんか? 仕事の内容も共有しておりますし、いつもより護衛の数も増やしてますので、野盗に襲われる心配はありませんわ。私だけ領地に戻ることも視野に入れてはいかがでしょう」


 日ごろから仕事の内容も共有しているので、カレドロ伯爵との業務提携について話し合いをすることはできる。

 護衛の数も通常より増員しているので、野盗の襲撃があっても安心だろう。

 コレットは、ポワミエ伯爵だけでも残ることを提案した。


 だが、ポワミエ伯爵はコレットの提案に首を振る。


「高級品種の梨については、コレットに任せていたからな……大雑把には把握しているが、細かく質問されたら答えられないかもしれん。やはり、コレットも同席した方が良いだろう」


 ポワミエ伯爵は、大雑把にしか把握していないことも理由として挙げた。多忙を理由に、コレットからの引継ぎを遅らせたことが仇となる。

 さらに、もしかしたら父親として、娘に華を持たせたいとも考えているのかもしれない。


 今度はコレットがポワミエ伯爵に異を唱える。


「しかし、一旦、領地に戻る選択をしたとしても、次はいつカレドロ伯爵にお会いできるか分かりませんわ」


 カレドロ伯爵も父親も多忙だ。ようやく二人の都合が付いたのだと思うと、父親だけでもカレドロ伯爵領に残った方が良い。

 それに、冬になると会うこと自体が難しくなる。

 コレットはそう結論付け、ポワミエ伯爵に進言した。


 娘の意見を聞き、ポワミエ伯爵は大きく溜息を吐く。



 二人はポワミエ伯爵領に戻るか、カレドロ伯爵領に残るかの選択を迫られる。

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