55 領地に戻りました (7)
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ポワミエ伯爵邸にある伯爵の執務室。
そこではポワミエ伯爵がコレットを呼び出していた。
「忙しいのに、すまないな」
書類に目を通し、署名している伯爵は娘のコレットを気遣う。
コレットとしては、父親の体調が心配だった。
今、領地では名産品である梨の最盛期を迎えている。さらに、領地内で起こった問題を解決するために調査員を派遣したり、今まで領民から徴収した税金の報告に目を通さなければならない。
社交の時期は終わったが、周辺の貴族や親交のある貴族との交流を深める必要もある。
そんな忙しい父親と比べたら、コレットの仕事量はかなり少ない方だ。
「いいえ、私よりお父様の方が……あの、どのようなご用件ですか?」
早く用件を済ませ、仕事に集中させてあげるべきだと判断したコレット。父親に用件を話すように促した。
「実は、高級品種の梨について有益な話をいただいたのだ」
「まあ、どのようなお話でしょう」
コレットは、自分が担当している高級品種の梨の話と聞いて真剣になる。
切りの良いところだったのだろう。ポワミエ伯爵は、数十枚の書類を束ねてトントンと音をさせながら揃えた後、近くに控えていた家令に渡した。
その後、コレットの目を見据えて“有益な話”の内容を語る。
「話というのは、カレドロ伯爵から業務提携を持ち掛けられていてな。ポワミエ伯爵領で収穫された高級品種の梨を使って、共同で酒を造らないかと提案されたのだ。私としては、ぜひとも話を進めたいと思っているのだが、今はコレットに任せているから報告をしておこうと思ってな」
「カレドロ伯爵からですか!?」
カレドロ伯爵領はブドウ酒作りが有名なことは知っていた。王家主催の夜会や式典などにも採用されるほど、王侯貴族に認められている。
そんな有名な領地と業務提携をすれば、ポワミエ伯爵領の梨に箔が付く。
さらに、酒に加工すれば、より多くの地域に届けることができる。
オフェーヌのお茶会に出席した際、ポワミエ伯爵領のものを使用した梨のタルトの話をしたことがきっかけで、高級品種の梨に再び流行の兆しが見え始めている。そのことにカレドロ伯爵は商機を感じ取ったのだろう。
高級品種の梨を再び全盛期のようにと、情熱を燃やすコレットにとって願ってもない話だ。
「私からも、ぜひお願いしたいです!」
「では、そのように返事を書いておこう」
コレットが業務提携に前向きなことに、ポワミエ伯爵は笑顔を浮かべた。
しかし、すぐに悲しそうな表情へ。
「本当はもっと早く、コレットに任せた仕事を再び私が担当するべきなのだがな……」
「仕方がないですわ。色々ありましたし……」
王都に滞在している間、様々な問題が起きた。その際、当主として対処していたはず。
むしろ、自分が少しでも仕事を手伝うことができて良かったと、コレットは考えていた。
「きっと、私の知らない間に、当主として対処していただいたのですわよね。感謝しておりますわ」
「私も、コレットには感謝している」
ポワミエ伯爵は何についてかは語らなかったが、コレットには分かっていた。
伯爵は椅子の背もたれに自身の背を預ける。
「カレドロ伯爵と業務提携の件がまとまったら、早急にコレットの仕事を引き継ごう。ロデールくんとの結婚に向けて、早く準備に集中したいだろう?」
「も、もう、お父様ったら!」
ポワミエ伯爵が冗談めかして言うと、コレットは顔を真っ赤にさせる。
父親はロデールのことをロラ卿ではなく『ロデールくん』と呼んだ。
いつの間に親密になったのだろうとコレットは疑問に思ったが、結局、聞けず仕舞いだった。




