表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の夢は私が決める ~婚約者に「夢を叶えるために支えて欲しい」とお願いされましたけれど、勝手だと思いませんか?~  作者: ほし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/58

53 領地に戻りました (6)

53




 掌より一回り大きい箱。その箱を、コレットに向けて開く。


「まあ! とっても綺麗!」


 美しいサファイアが、一際、目を引くネックレスだった。


 サファイアは親指ほどの大きさで深い青色をしており、周りに小さなダイアモンドがあしらわれている。

 その下には、小さな雫の形をしたサファイアが連なり、とても可愛らしい。サファイアの周りにもダイアモンドがあしらわれていたが、少し間が空いているので別々に揺れるのだろう。


 ロデールはコレットに、ネックレスを差し出す。


「コレットに自分の想いが通じたら渡そうと思っていた。良ければ、受け取って欲しい」


 深い青色のサファイアはまるで、ロデールの瞳のようだ。


 彼の意図を察するコレット。


「ありがとうございます。大切にしますね!」


 コレットはロデールから、ネックレスを受け取る。


「あの、こちらのネックレスを今、身に着けてみても宜しいですか?」


「ああ! もちろん!」


 ロデールから許可を得たコレットは、一旦ネックレスを彼に預けてお願いすることに。

 後ろを向く直前、ロデールの様子をうかがう。コレットにネックレスを着けることになった彼は、さらに耳を赤くし、全体的に真っ赤になっていた。


 ネックレスを着けてもらっている間、小刻みな振動がネックレス越しに伝わってくる。きっと、緊張しているのだろう。そのせいか、着けるのに、かなり苦労しているようだ。

 今も全体的に耳を真っ赤にさせながら悪戦苦闘していると思うと、とても可愛く感じる。


 想像したコレットが静かに口元に弧を描いていると、ロデールに後ろから声をかけられる。


「父上から聞いたけれど、クレイトロワ公爵令嬢が主催のお茶会で、私たちの悪評を払しょくするよう掛け合ってくれたそうだね。とても助かったよ、感謝する」


 そういえば――と、ベルワーテ侯爵に侯爵夫人とロデールにと贈り物の茶葉を託した際、感謝されたことを思い出すコレット。彼もまた、いわれのない悪評に苦しめられていたのだろう。


 しかし、悪評を払しょくできたのはコレットが動いたからではない。


「いいえ、クレイトロワ公爵令嬢が弁明の機会を作ってくださったのよ。ご配慮がなければ、領地運営や事業に影響があったかもしれないわ」


 それに――と付け加えながら話を続ける。


「ロデール様の人徳があったから、クレイトロワ公爵令嬢に目をかけていただけたのよ」


 オフェーヌが気にかけてくれていたのは、ロデールが公爵家で修練を積み、彼女の信頼を得ていたからだ。自分はそれに乗っかっただけだと、コレットは主張した。


「私の方こそ、ありがとうございます」


「どういたしまして」


 コレットが感謝すると、ロデールは受け入れた。

 そのことが可笑(おか)しいのか、コレットはふふっと笑い出す。

 ロデールは、彼女が笑ったことに疑問を抱く。


「どうした?」


「いえ、お互いに感謝の言葉を言い合ってばかりですね」


 コレットが理由を言うと同じように、ふふっとロデールも笑う。


「そうだな」


 そう言った後、ロデールが自分から離れる気配をコレットは感じ取った。


「終わったよ」


「ありがとうございます」


 上から見下ろすと、サファイアやダイアモンドがキラキラと輝いていた。

 正面に向き直ったコレット。そして、微笑みながらロデールを見る。


「どうでしょうか?」


「とても似合っている」


 似合っているかを聞かれ、ロデールは答えた。

 耳だけでなく、頬も赤くさせて。


 その様子に、コレットは本心で答えてくれたのだと感じる。


「嬉しい。本当に、ありがとうございます」


 再び、コレットは感謝を伝えた。


 しばらくすると、部屋の外で待機していた使用人が入室する。

 使用人が、コレットに贈られたネックレスが似合っていることを伝えると、二人は幸せそうな表情をした。



 ネックレスが似合っていると褒められただけで、こんなに幸せなのだ。

 結婚したら、どのような幸せが待っているのだろう。


 コレットは今ある幸せに、充足感を味わった。



 ロデールが二杯目の紅茶を飲み終わったころ、帰り支度を始める。日が暮れる前に、宿泊予定の宿まで着いておきたいのだろう。

 コレットは使用人を伴って、玄関先まで見送ることに。


「それでは、道中お気を付けくださいませ」


「ああ」


「ロデール様が無事、領主教育を終えられますよう心より祈っておりますわ」


「ありがとう。コレットも、あまり無理をしないように」


「ありがとうございます」


 ロデールは馬車に乗り、出発する。

 徐々に走らせる速度は上がり、あっという間に小さくなった。

 コレットは馬車が見えなくなるまで見送っていた。


 その様子を見守っていた侍女が、コレットに話しかける。


「寂しくなりますね、お嬢様……」


「いいえ」


 コレットは鎖骨の部分で輝くネックレスに触れる。


 以前なら寂しく思っただろうが、今は違う。

 コレットには、ロデールから贈られたネックレスがあるからだ。


「ロデール様はいつも、見守ってくださるわ」



 コレットがそう呟くと、美しい深い青色のサファイアが意志を持ったように煌めいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ