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私の夢は私が決める ~婚約者に「夢を叶えるために支えて欲しい」とお願いされましたけれど、勝手だと思いませんか?~  作者: ほし


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51 領地に戻りました (4)

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 コレットは、ロデールを談話室へと案内した。

 幼い頃にベルワーテ侯爵一家と談笑したことがあるので、話のタネになると思いこの部屋を選んだのだ。

 しかし、今はその話を持ち出す余裕はない。


 彼が着席すると、コレットは紅茶を用意し始める。ポットに二人分の茶葉を入れ、その上から熱湯を注ぎ、じっくりと蒸らす。

 先ほどのことがあってか、蒸らしている間はどこか気まずさを感じていた。

 なんとなく、ロデールも居心地が悪そうにしている。


 使用人にお願いしていれば、もっと気まずかったかもしれない。自分で紅茶を淹れるようにしておいて正解だったと、この時コレットは思った。


 近くにいる料理人が梨のロールケーキを二人分、切り分け、一つをロデールの前へ。

 コレットはお茶請けとして用意させた梨のロールケーキを、ロデールに勧める。


「こちら、ポワミエ伯爵領で収穫された梨を使用しておりますの。私、こちらのロールケーキがとても好きなので、ロデール様も気に入っていただけたら嬉しいですわ」


「コレットのお気に入りなら、きっと美味しいのだろうな」


 早速、ロデールは一口分をフォークで切り、口へと運ぶ。


「これは美味しい!」


「良かったです!」


 自分の好きなものを気に入ってもらえて、コレットは満面の笑みになった。

 ロデールは梨について褒め始める。


「さすがポワミエ伯爵領の梨だ。噛むごとに、じわっと果汁があふれ出して、梨の持つ本来の甘みが口の中で広がっていく」


 さらに、料理人が工夫した点についても感想を述べる。


「梨の甘みに合わせて、クリームに柑橘系のものを混ぜているところも素晴らしい。キャラメルソースが、添えられているクリームの上にかかっているということは、味を変えることもできるのだろうな」


 料理を褒められ、近くに控えている料理人は笑顔を浮かべている。


 ちょうど良い頃合になったので、コレットはポットを軽く揺らし、とぷとぷと音をさせながらティーカップに注ぐ。

 ほのかに甘い紅茶の香りが、談話室に漂い始める。


「どうぞ。お口に合えば良いのですが……」


「コレットはお茶を淹れるのが上手だから、美味しいと思うよ」


 王都にある邸宅で、ハーブティーを淹れてもらった時のことを言っているのだろう。

 いただきますと言って、ロデールは紅茶を口にする。


「美味しい! でも、紅茶以外にも何か入っているような……」


「乾燥した生姜を少量、入れてみました。お店でいただいた時、とても美味しかったので」


 実は茶葉には、乾燥した生姜をほんの少し混ぜている。茶葉を扱う店でベライスと共に試飲した時に気に入り、取り入れてみたのだ。


 彼女の説明を聞いて、ロデールは納得する。


「なるほど。甘いロールケーキに、少し辛味のある生姜がとても合っている」


「ふふ、良かったわ!」


 自分で紅茶を淹れて試飲してみた結果、満足のいくほど美味しかったが、相手も気に入ってくれるとは限らない。

 コレットはロデールに褒められて、安心したと同時に心から喜んだ。


 そう言えば――とロデールは、コレットが贈ったハーブティーについて口にする。


「コレットが贈ってくれたハーブティーにも生姜が入っていたな。本当にありがとう。母上も喜んでいたよ。お気に入りの茶葉を覚えてくれていて嬉しいと」


「こちらこそ、喜んでいただけて嬉しいわ。もしかしたらご迷惑かもしれないと思っていましたから」


 茶葉を贈ったことを好意的に受け止められて、コレットは嬉しそうにする。

 しかし、コレットはベルワーテ侯爵夫人の体調について気になっていた。彼の口ぶりから喜んでいる様子だったので、回復してきているとは思うが、どうしても心配してしまう。


「あの、失礼ですがベルワーテ侯爵夫人のご容体はいかがですか? お倒れになったと父から聞きましたので……」


 コレットが侯爵夫人の体調について尋ねると、ロデールは安心させるように答える。


「ああ、ほとんど良くなっているよ。社交の時期も終わったことだし、このまま領地に滞在する予定だそうだ」


「そうですか!」


 コレットは彼からの言葉を聞いて、心配事が霧散した。

 心配していたことが消え、笑顔になっているコレットを、ロデールは真剣な表情で見つめる。


「あの……コレット」


 ロデールの真剣な表情に何かを察した使用人たちは、静かに部屋から退出する。

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