49 領地に戻りました (2)
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ポワミエ伯爵邸の談話室。
王都にある邸宅の応接室と同じ、亜麻色のような淡い赤色を含んだ黄色の壁紙に、全体的に胡桃の殻のような茶色の絨毯。家具は装飾が少なく素朴で、優しい部屋の雰囲気になっている。
違うのは、少し部屋が広いこと。部屋に花が生けられておらず、代わりに庭園を見渡せるほど窓が大きいことくらいだろうか。
コレットはポワミエ伯爵夫人やサロモンと共に、談話室で談笑をしていた。
「嬉しい! 梨のロールケーキを用意してくださり、ありがとうございます!」
「コレットは、本当にこちらのロールケーキが好きね」
「ぼくも、だいすきだよ!」
「あらあら」
テーブルには紅茶が、お茶請けとして台車の作業台には、梨のロールケーキが置かれている。ロールケーキを作ったであろう料理人が、三人にそれぞれ切り分ける。
梨のコンポートがサイコロ状に大きく切られ、クリームの部分にふんだんに使われていた。そのお陰でどこを切っても、ほんのりとした緑色の美しい断面が見える。
横にクリームを添え、クリームにキャラメルソースをかける。その上には、みずみずしい緑色をしたミントの葉を載せ、断面から覗く梨のコンポートのほんのりとした緑色との対比が食欲をそそる。
見た目を十分に味わった後、コレットは一口分フォークで切り、口へと運ぶ。
生地のふわふわした食感に優しい甘み。ゴロッとした梨のコンポートの食感、梨の本来の豊かな甘みを堪能する。クリームに少量のレモン果汁と皮が使われているのか、さっぱりとした口当たりだ。
「やっぱり、美味しいわ。とっても美味しい梨のロールケーキを作ってくれて、ありがとう!」
「お気に召していただけて、とても嬉しいです」
十分に堪能したコレットは、料理人に感謝を伝えた。
それを聞いた料理人も喜びの言葉を口にし、笑顔で深々と頭を下げる。
三人は梨のロールケーキと紅茶を楽しみながら、会話をすることに。
「こうしてお母様やサロモンと、ロールケーキを食べながらお話しするのは久しぶりだわ」
「ええ、そうね。私も、コレットとゆくり会話できて嬉しいわ」
「ぼくも、おねえさまと たくさん おはなしできて、うれしい!」
「ふふ、ありがとう」
王都に滞在している間はお茶会やら夜会やらで、ゆっくり会話をする機会が少なかった。伯爵夫人が体調を崩していたということもある。
今もコレットは高級品種の梨に関する仕事、伯爵夫人は女主人としての仕事があるが、社交の時期と比べると幾分か落ち着けるだろう。
「それにしても、本当に動いて大丈夫なのですか? お医者様はどのように仰っているの?」
「もう、心配性ね」
コレットの疑問に、伯爵夫人は眉を八の字にしながら答える。
「無理は禁物だと言われたわ。でも、動けるのに、じっとしているのも体に悪いから、適度に体を動かすようにって」
「そうですか」
医者が許可を出しているのならと、コレットは安堵した。
すると、今度は伯爵夫人が問いかける。
「それより、貴方の方が大変だったのでしょう?」
具体的なことは聞かれていない。王都で起きたことを、父親が母親に話したのだろう。
自分の口から全て説明するよりは、とても気が楽だ。
ジョイルから画家になる夢を打ち明けられたことから始まり、次に婚約破棄。最後は婚約破棄した理由も関係しているのか、社交界で自分とロデール、ベルワーテ侯爵についての醜聞が流れた。
大変だったが、他者からの協力を得て乗り切ることができたと、コレットは当時のことを振り返る。
「ええ、でも大丈夫ですわ。お父様は私の意向を汲んでくださいますし、とても良い友人に恵まれておりますもの」
伯爵夫人からの問いに、笑顔で答える。
今のところ、友人の中にロデールが含まれている。
しかし、コレットの中ではそれ以上の存在だった。
お互い、いつかそれ以上の関係になれたら……と、彼女は切望する。
「そう、分かったわ」
伯爵夫人は娘の表情を見て安心したのか、それ以上を深く追求することは無かった。
「あ、おとうさま!」
サロモンの言葉に、コレットと伯爵夫人は伯爵が入室したことを知る。
「私も、混ぜてもらって良いかな?」
「ええ、もちろんよ。お仕事は終わったの?」
「急ぎのものはな」
伯爵が許可を求めると、伯爵夫人は快く受け入れた。
普段、仕事で忙しい伯爵は談笑に混ざることは少ないが、この日は休むことにしたのだろう。
父親とも会話ができることを、コレットは喜んだ。
「ああ、そうそう、コレットにこれを……」
「ありがとうございます。何かしら……」
頭に疑問符を浮かべながら、コレットは伯爵から手紙を受け取る。
差出人を確認すると、ロデールの名前が。
「まあ!!」
コレットが嬉しさのあまり、顔を赤らめながら大声を上げると、談話室に笑い声が響き渡った。
下書きの件、自己解決しました。お騒がせして申し訳ありません!




