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私の夢は私が決める ~婚約者に「夢を叶えるために支えて欲しい」とお願いされましたけれど、勝手だと思いませんか?~  作者: ほし


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48 領地に戻りました (1)

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 社交の時期が終わりを迎えたころ、多くの貴族が王都を離れ、それぞれの領地へと戻って行く。次に王都を訪れるのは、冬を越した後だろう。

 ベルワーテ侯爵も様子を見るために一度、領地へ戻ると聞き、侯爵夫人とロデールにと贈り物の茶葉を託す。

 コレットはジョイルとの婚約を破棄したので迷惑かと思ったが、侯爵は快く引き受けてくれた。


 その後、コレットも父親であるポワミエ伯爵と共に自分たちの領地へ。


 王都から様々な町を経由して、ようやくポワミエ伯爵領へ入る。

 馴染みのある景色を窓からの眺めるコレット。


 農園の近くを通っているのだろう。ポワミエ伯爵領の特産品である梨がたわわに実っており、一つひとつ手作業で収穫されている。

 コレットが幼い頃、領主教育の一環として農園を訪れ、数日ほど定期的に作業を手伝った。短い間だったが、どれほど大変かを身をもって知っているので、農民には心から感謝している。ポワミエ伯爵も同様だろう。


 ポワミエ伯爵の馬車に気付いた農民は作業する手を止め、帽子を脱いだ後、二人に対して頭を下げた。

 伯爵は御者に、馬車を止めるように言う。農民を労うためだろう。

 馬車が止まった後に伯爵が降り、コレットも続く。


「いつもご苦労様」


「ありがとうございます。領主様に労っていただいて、とても光栄に思います」


 ポワミエ伯爵に労われ、農園の管理を任されている主は嬉しそうだ。作業を手伝っていた頃と比べると少し年を取っているが、笑顔は当時のままだった。

 作業の手を止めている他の農民も領主を慕っているのか、伯爵やコレットに笑顔を向けている。

 きっと、誇りをもって梨を育てているのだろう。



 たくさんの人が一生懸命に育てている梨の良さを知ってもらいたいと、コレットは改めて強く願う。



 農園を後にし、しばらくすると領地内にある邸宅が見え始めた。

 コレットは、ようやく帰宅できたことに安堵する。


「お帰りなさい。長旅お疲れ様」


「おかえりなさい!」


 馬車から降りた二人を出迎えたのは、ポワミエ伯爵夫人とサロモンだ。

 コレットは、母親と弟との久々の再会に喜ぶ。

 喧騒から離れたのが功を奏したのだろう。王都にいたころと比べ、伯爵夫人の顔色はかなり良くなり、元気を取り戻したように見える。


「ああ、ただいま」


「ただいま戻りました」


 ポワミエ伯爵とコレットは、無事に帰宅したことを報告した。


 コレットたちは、ポワミエ伯爵領にある邸宅の中へと入る。

 玄関は二階まで吹き抜けになっていた。正面には真っ直ぐに伸びる階段があり、臙脂のような深みのある赤色の絨毯が敷かれている。

 天井は栗色のような少し暗い茶色の木材が使われており、小ぶりのシャンデリアが二つ。壁紙は王都にある邸宅と同じ、亜麻色のような淡い赤色を含んだ黄色が使われていた。

 床は大理石になっており、白色の中にところどころ灰色が散らされている。


 コレットは玄関に入って、自身が帰宅したことを実感した。


 彼女の前では、ポワミエ伯爵と伯爵夫人が会話をしている。

 伯爵なりに心配していたのだろう、妻の元気な姿に嬉しそうだ。


「元気そうで安心した」


「使用人の皆が、私に良くしてくれるお陰ね。とても助かっているわ」


 伯爵夫人がそう言うと、周りに控えている使用人が笑顔になる。

 その様子を微笑ましく見ていたコレットは、あることを思い出す。


「そうだわ。実はサロモンに贈り物があるのよ」


 そう言って、サロモンに手渡す。

 なんだろう? と、呟きながら、サロモンは拙いながらも丁寧に包装を解く。


「わあ! えほんだ!」


 ロデールと外出した際に購入した、絵が飛び出すように仕掛けが施されている絵本だ。


「王都にいた時、木苺のマカロンを贈ってくれたでしょ? そのお礼よ」


「すごい、すごい! えが、とびでる!」


 絵が飛び出すのが新鮮なのだろう、サロモンは絵本に夢中だ。まだ一ページ目だというのに、何度も同じページを開いたり閉じたりしている。

 弟の喜ぶ姿を見て、コレットはロデールと勧めてくれた店員に感謝した。


「おねえさま、ありがとうございます!」


「どういたしまして!」


 サロモンは満面の笑みで、姉のコレットに感謝を伝えた。

 そこに自身の娘と息子のやり取りに気付き、笑顔で見守っていたポワミエ伯爵夫人も加わる。


「良かったわね。ところで、私には何かないのかしら?」


「あ! ご、ごめんなさい……」


 コレットは自身の母親に謝罪する。

 領地に戻る前に、母親にも何か購入しようと考えていた。しかし、社交の時期が終わるころにベルワーテ侯爵夫人とロデールのことを聞かされ、そちらへ気を回してしまったのだ。


「ふふ、冗談よ。無事に帰って来てくれただけで充分だから」


 申し訳なさそうにするコレットだが、ポワミエ伯爵夫人は単に揶揄(からか)っただけだけのようだ。


「王都からの長旅で疲れたでしょう。家政は私が取り仕切るから、コレットはゆっくり休みなさいね。今まで、ありがとう」


 ポワミエ伯爵夫人は、娘に女主人としての責任を長い間、負わせていたことに気を病んでいたのだろう。コレットに休むよう気遣った。


「こちらこそ、ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて……」




 領地に戻ったコレットには高級品種の梨に関する仕事があるので、それらを放って休養することは難しい。仕事は待ってくれないからだ。


 しかし、今日からは女主人の仕事を母親が行う分、少し楽になりそうだと、心が軽くなった。

【2026.6.28】

手違いで投稿してしまいました。申し訳ありません。追記、加筆した分は、物語の進行や内容に影響はありません。

下書きとして保存する方法を知りたい……。

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