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私の夢は私が決める ~婚約者に「夢を叶えるために支えて欲しい」とお願いされましたけれど、勝手だと思いませんか?~  作者: ほし


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44 自分の気持ちを自覚しました (2)

注目度 - 連載中のランキングで96 位になりました。ありがとうございます!

44




 二階に上ると、オレンジと生姜の香りが鼻腔をくすぐる。ほとんどの客が、期間限定のハーブティーを注文したのだろう。

 オレンジの柑橘系と生姜の爽やかな香りに、二人は期待で胸を膨らませる。


 給仕に席まで案内され、メニューが書かれたものを渡される。

 一応、お茶請けも記載されているが、茶葉を取り扱っている店なのもあり品数は少ない。

 早々に二人は注文する焼き菓子が決まり、給仕を呼んだ。お茶はすでに決まっている。


「期間限定のハーブティーとサブレをお願いいたします」


「私も、期間限定のハーブティーとマドレーヌをお願いしますわ!」


 コレットが注文すると、ベライスも続く。


「承知いたしました」


 注文を取った給仕が微笑みながら頭を下げると、すぐに厨房へ。


「どのようなお味かしら!」


「ふふ、楽しみですね!」


 期間限定のハーブティーがどのような味か、胸を弾ませる二人。

 ひとしきり笑い合った後、ベライスは軽く息を吐く。


「それにしても、コレット様の悪評が払しょくできそうで良かったわ」


 クレイトロワ公爵家の息女オフェーヌを始め、高位貴族の息女たちが事実を広めた。


 ジョイルが画家を目指していること。

 予定通りに侯爵位を継ぎ、貴族の責務をすべてコレットに背負わせ、自分は夢を追うつもりだったこと。

 ジョイルはポワミエ伯爵家の者に暴言を吐くほど、人間性に問題があること。

 コレットとロデールはまだ、恋仲ではないこと。


 お陰で、コレットやロデールの名誉は回復しつつある。二人の仲に対して“まだ”という表現は気になるが。

 ベルワーテ侯爵についても親として多少、攻められてはいるが、『優秀な息子に嫉妬している』という部分は間違いであると、周知されつつあった。


「皆様のお陰ですわ。特に、ベライス様が一番、精力的に事実を広めてくださったと聞き及んでおります。本当に、ありがとうございます」


「大切な友人ですもの、当然よ」


 ベライスは可愛らしく続ける。


「ロラ卿のことについても、いつでも相談に乗るわよ!」


「あ、ありがとうございます……」


 お礼を言った後、コレットはテーブルに置いていた手をいじる。

 そして、少し俯きながらベライスに相談する。


「正直に言って、彼に惹かれてはいるのですが、恋と言って良いのか……」


 今まで恋をした相手はジョイルだけ。いつも彼に振り向いて欲しくて追いかけていた。

 コレットは、まさか自分が追いかけられる側になるとは思いもしなかったのだ。


 ロデールの気持ちは何となく察している。

 いつも、コレットのことを考えてくれていた。彼が真剣に自分のために茶葉を選んでくれる様子を想像するほどに。

 今までロデールと過ごした時間を思い返すと、愛しさが込み上げてくる。


 コレットは、ジョイルとの違いに戸惑い、ロデールへの想いは“恋”なのか悩んでいたのだ。


 ベライスは何となく心情を察し、コレットに問いかける。


「コレット様はロラ卿と一緒にいて、どのような気持ちになりますの?」


「気持ち……ですか?」


 意図が分からず、コレットは質問で返した。

 ベライスは意図を説明する。


「真偽は不明だけれど、あの噂が立ってしまったのは、お二人が外出しているところを見られたからよね?」


 続けて語りかけるように話す。


「その時のお二人は、とても幸せそうに見えたのではないかしら」


 ベライスの言葉を聞いて、コレットは外出した時のことを振り返る。


 確かに、ロデールと過ごしていると幸せだった。

 彼が気遣ってくれているだけかもしれないが、相手も幸せそうに見えた。

 案内してくれた店は偶然コレットの行きたい店だったが、彼女が気に入るだろうと思って選んだに違いない。梨のタルトを口にしながら、昔話に花を咲かせた時間も大切な思い出だ。


「ええ……」


 ロデールが笑顔になると、自分も自然と笑顔になる。



 きっと、私はロデール様のことが好きなんだわ。



 コレットは、ようやく自分の気持ちを自覚する。


「失礼いたします」


 そうこうしている内に、給仕がお茶請けを二人の前にそれぞれ置き、しばらくしてから別の給仕が茶器を持って現れた。

 ポットから、とぷとぷとハーブティーが香りを漂わせながら、二つのティーカップに注がれる。


 オレンジと生姜の香りが強く出ているが、他にも数種類のハーブが配合されているらしい。とても複雑で、良い香りがする。


「良い香りですねえ」


「ええ、本当に!」


 コレットが感想を述べると、ベライスも同意した。


 ほぼ同時に、二人はハーブティーを口にする。

 オレンジは酸味よりも甘味が強く、生姜の爽やかな辛味が口に広がる。


 ロデールも気に入ってくれるだろうかと、コレットは彼が喜ぶ姿を想像する。


 コレットは自身の顔が熱くなっていくのを感じていた。



 彼女の顔が少し赤くなっているのは、生姜のせいだけだろうか……。

【2026.6.23】

「嫌なことを思い出させてしまったら、ごめんなさい。真偽は不明だけれど、あの噂が立ってしまったのは、お二人が外出しているところを見られたからよね?」

 から↓

「真偽は不明だけれど、あの噂が立ってしまったのは、お二人が外出しているところを見られたからよね?」

 へ台詞を修正。それに伴い内容も一部、変更しました。申し訳ありません。

 物語の進行や内容に影響はありません。投稿前の確認を怠っていたことが原因だと思います……。

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