43 自分の気持ちを自覚しました (1)
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「ふふ、コレット様とお出かけできて嬉しいわ!」
「私も、久々にベライス様と外出できて嬉しいです!」
この日、コレットはベライスと共に、王都にある茶葉を扱う店へ行くことに。
社交界の時期が終わると、ほとんどの貴族はそれぞれの領地へ戻る。その前に二人でどこかへ遊びに行きたいと、ベライスがコレットを誘ったのだ。
店に入ると、全体的に柿渋のような赤みのある暗い茶色の木が使われており、商品である明るい色の箱を美しく際立たせていた。ティーカップとソーサー、ポットやティーメジャースプーンなどお茶を楽しむ茶器や雑貨も並べられ、購買意欲を掻き立てる。
天井には、花のような形をした小ぶりのシャンデリアが吊るされていた。花弁部分の黄色みがかったガラスが、訪れる者に優しい印象を与える。
シナモンのような黄色みのある茶色い木の床はとても綺麗に磨かれており、光が反射するほど。
二階では軽食が可能で、店で取り扱っている茶葉を使ってお茶を淹れてもらえるようになっている。
店内にいる客は普段より若干、多いような気がした。身なりの良い客が多いので貴族かもしれない。領地へ戻る前にお気に入りの茶葉や、お土産を購入するために訪れたのだろう。若い女性たちが会話を楽しみながら、茶葉を吟味している。
コレットとベライスも同様だ。ベライスはコレットに、明るく話しかける。
「ねえ、コレット様! デロワ様には、どちらの茶葉が良いと思います?」
ベライスは、自身の婚約者が好む茶葉はどちらか意見を求める。
手にしているのは、定番のアッサムとブドウの香りを付けた変わり種の茶葉だ。
「ミルクティーがお好きなら、アッサムの茶葉ですね。新しいものがお好きなら、ブドウの香りを付けた茶葉かしら」
そして、最後に付け加える。
「どちらにしても、ベライス様が一生懸命お選びになっていらしたから、きっとお喜びになりますわ」
彼女はコレットと会話しながらも、とても熱心に茶葉を選んでいた。きっと、相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら吟味していたに違いない。そして、ようやく絞ったのが、先ほどの二つ。
自分の想い人が、ベライスのように真剣に茶葉を選んでくれたと想像したら、きっと感激する。
その時、コレットは何故かロデールが真剣に自分のために茶葉を選んでくれる様子を想像し、少し顔が赤くなる。
友人の様子に気付かないベライスは、無邪気にお礼を言う。
「ありがとう! コレット様にご相談して、本当に良かったわ。彼はよくミルクティーをお飲みになるから、アッサムが良さそうね!」
ベライスは、ブドウの香りを付けた茶葉を棚に戻すよう自身の侍女に指示した。
「ところで、コレット様はどのような茶葉を購入するか、お決まりになりました?」
「私はこちらと、もう一つ何か購入しようと考えています」
ベライスからの問いに、コレットは苦笑いしながら答える。
今、手にしているのは、ベルワーテ侯爵夫人が好きな茶葉。倒れたと聞いていたので元気を取り戻して欲しいと思い、侯爵夫人の好きな茶葉を贈ろうと考えたのだ。いつも良くしてもらっていたので、感謝の気持ちという思いもある。
もう一つは、ロデールへの贈り物だ。もしかしたら、不慣れな看護で疲弊しているかも知れない。実際に看護していないにしても、やはり身内が倒れたら精神的に消耗する。少しでも、心を解きほぐすことができればと考えた。
しかし、彼とお茶会の席を共にしたのは数えるほど。気に入ってもらえる茶葉の厳選に苦戦しているのだ。
以前、ロデールがポワミエ伯爵邸を訪れた際、ハーブティーを出したら好評だったことを思い出す。
ハーブティーの茶葉なら喜んでもらえるかもしれない。そう考えたコレットは、ベライスに一言断ってから、ハーブティー用の茶葉が置いてある棚へと向かう。その間、ベライスは会計を済ませることに。
ハーブティー用の茶葉を置いてある棚に着いたが、そこでもコレットは悩んでいた。
ハーブ単体の茶葉の種類は多く、数種類が配合されたものも置いてあった。手軽に飲めるよう、数種類が配合されたものを贈ることに決めたが、こちらも種類が多い。香りや味、効能なども説明されていたが、どれも魅力的で目移りしてしまう。
ふと、コレットが目をやると、一際、数の少ない茶葉を見つける。
それは期間限定のもので、オレンジに少量の生姜を混ぜた茶葉だった。
これからの季節に向けて、生姜の作用で体が温まるように配合されたものらしい。香りや味の説明文の下には、二階で試飲ができることが大きく書かれていた。
そうこうしている内にベライスは支払を終え、コレットの元へ。
「まあ、期間限定のハーブティーが試飲できるらしいわ! コレット様、いただきましょう?」
「ええ、私もベライス様がいらしたらお誘いしようと思っていました!」
二人は笑い合った後、二階に続く階段を上り始めた。




