39 お茶会に招待されました (7)
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「ポワミエ伯爵令嬢の言い分が正しいことは理解したわ。けれど、噂が立ったのは、ポワミエ伯爵令嬢とロラ卿が二人で外出をしていたことが発端よね? ジョイルさんとの婚約中から、二人は只ならぬ関係だったのでは?」
オフェーヌからの追撃は続く。
これにベライスは座っていた椅子から立ち上がり、食ってかかる。
「クレイトロワ公爵令嬢! コレット様を疑いますの!? 決して、不貞行為を犯すような方ではありませんのに!!」
「ありがとうございます、ベライス様。私は大丈夫ですから……それ以上おっしゃると、ベライス様のお立場が悪くなってしまいますわ」
コレットは自分のために憤ってくれたベライスに感謝を述べ、冷静になるよう促した。
悔しいのか、ベライスは口を結ぶ。
「……失礼いたしました、クレイトロワ公爵令嬢」
ベライスは不服そうな顔をしながらも、オフェーヌに謝罪した。
友人が再び椅子に腰かけたのを確認し、コレットは再び釈明する。
「ロラ卿とは良き友人です。私が婚約したのを機に交流を絶っておりましたが、ジョイルさんの件で謝罪にいらした折に再び親交を深めるに至りました。ロラ卿と文通をしておりますが、再開したのはジョイルさんと正式に婚約を破棄した後です」
そう言って、コレットはロデールとやり取りした手紙を提示する。コレットがロデールに宛てた手紙は、ベルワーテ侯爵を通じ、彼の許可を得て送ってもらったのだ。
ロデールの手紙には、弟であるジョイルの粗相に対しての謝罪、文通の再開を喜ぶ言葉が綴られている。コレットの手紙もほぼ同様で、ささいな出来事やたまに愚痴なども書かれていた。
二人の手紙は、どう見ても友人に宛てるような内容だ。
疑問に感じた息女が問いかける。
「この日のために、二人が示し合わせて急いで手紙を書いたのでは?」
「現在、ロラ卿はベルワーテ侯爵領に滞在中です。父は、お倒れになった侯爵夫人を看護をするためではないかと、推察しておりました。示し合わせて手紙を書くことは難しいかと」
ロデールは、ベルワーテ侯爵領で侯爵夫人を看護をするために帰省している。
コレットよりも社交界に顔を出している者なら、すでに知っているはず。
丁寧に答えると、別の息女も問いかける。
「悪評が立つことを見越して、事前に証拠を捏造しておいたのではないかしら?」
「そのように用意周到でしたら、噂が立つ前に手を打っておりますわ。悪評が立つと、名誉を回復させるのに苦労しますもの」
さらに、コレットは言葉を続ける。
「それに、ロラ卿は王室騎士。王城から手紙を発送した記録があるのではないでしょうか? ご同僚の方に手紙の内容を添削していただいたようですので、時期も一致するかと思います」
しかし、証拠として提示した手紙にオフェーヌは難色を示す。
「証拠が手紙だけではねえ……ロラ卿と二人きりで外出していたという噂もあるし……。手紙では友人同士のように装って、外出先では恋仲のように振舞っていたのでは?」
手紙以外に物的証拠は無い。
ジョイルとの婚約破棄が成立した後にロデールと再び親交を深め、現在は友人であることを証明するのは難しい。後でどうとでもできるからだ。
だが、友人であることを証言してくれる証人はいる。
「二人きりではありませんわ。ここにいる侍女を連れておりましたもの」
コレットがオフェーヌの口にした噂を否定し、侍女も帯同していたことを説明する。
近くに控え、証拠をコレットに手渡していた侍女は、自分が話題に上っていることを察知して半歩ほど前へ。皆に頭を下げた後、オフェーヌに発言の許可を求め、彼女から許可を得ると当時の状況を説明し始める。
「私はお嬢様に仕えており、外出時も同行しておりました。お二方が外出したのは一度だけでございます。最近、久方ぶりに親交を深めたせいか、交わされていたお話の内容は幼少期のできごとが、ほとんどです。様子をうかがっておりましたが、親しい友人のようにしか見えませんでした」
侍女は当時の情景を思い起こしているのだろう、淡々と説明している。
「外出先で食事もなさいましたが、その際も食事を楽しまれながら昔話に花を咲かせておいででした。お店の庭園の素晴らしさも相まって、その様子に微笑ましく思ったことを今でも鮮明に覚えております」
「鮮明に覚えているということは、ポワミエ伯爵令嬢が召し上がったものも、この場で言えるのかしら?」
オフェーヌの冗談めいた質問にも、侍女は毅然とした態度で答える。
「もちろんでございます。お嬢様は梨のタルトを召し上がった後、ガトーショコラを口になさいました。途中、塩気のあるカナッペやオリーブの酢漬けを挟みながら、エクレア、マカロンを堪能されました」
「や、やだ! 私、そんなに、いただいていたの!?」
コレットは店で自分が食べていたものの多さに驚いた。あまりにも梨のタルトが美味しくて、つい色々と注文してしまったことを恥じる。
それとは逆に、侍女はしっかり説明できて誇らしげだった。さらに、オフェーヌや招待客の息女たちに対して付け加える。
「クレイトロワ公爵令嬢や皆様が想像しているような関係ではないと、断言いたします」
説明を終え、侍女は再び頭を下げる。
静かに聞いていたオフェーヌだが、納得していない様子だ。




