36 お茶会に招待されました (4)
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お茶会、当日。
コレットは使用人の手を借りて支度をしていた。
招待されたのは公爵家の息女が主催するお茶会。当然、装いも格式に合ったものにしなければならない。
さらに、そこは社交の場。伝統を大切にしつつ、流行も取り入れたドレスや装飾品を選んだ。
「支度が終わりました。いかがでしょう、お嬢様」
おかしな部分が無いか、念入りに確認する。
この日のドレスは七分丈で、マリーゴールドのような赤みのある鮮やかな黄色。遠くから見ると、やや光沢のある無地に見えるが、近くで見ると美しい花の刺繍が布と同じ色の糸で施されていた。しかし、変化を持たせるためか、黄色や金色の糸もわずかに使用されており、職人のこだわりを垣間見ることができる。
一見、簡素だが、細かく見てみると質が高いことが分かる。
装飾品として、中心にダイヤモンドが埋め込まれた金のイヤリングを付けていた。花を模ったもので、動く度に可愛らしく煌めかせている。
「ええ、ありがとう。とても品良くまとまっているわ。皆もありがとう」
コレットが感謝を伝えると、支度を手伝った使用人たちは笑顔で頭を下げる。
馬車の準備が整い、コレットは乗り込む。
「それでは、行って来るわね」
見送りに来た使用人に声をかけた後、お茶会の会場へ向かうために馬車を走らせた。
馬車の中、コレットは自身の胸が早鐘を打つのを感じる。緊張と恐怖からだろう。
少しでも落ち着かせるために、コレットは胸に手を当てた。
しばらくすると、クレイトロワ公爵家のタウンハウスに到着する。
公爵家の使用人に招待状を提示すると、庭園へと案内された。
会場に到着すると、クレイトロワ公爵家の庭園に咲く植物が目に飛び込んでくる。
定番の様々な色のコスモスやケイトウが、客人を迎えるように美しく咲いている。
初めて見る植物も多く、白い大振りの花弁を付けた植物、青みのある紫色をした星型の花弁を付けた植物、小さな紫色の実を付けた庭木、小さくて可愛らしいピンク色の花弁を付けた庭木などが植えられていた。
おそらく別の国から取り寄せたのだろう。
花弁や葉が大きな植物を手前に、奥に行くにつれ小さな植物を配置している。造園の技法を巧みに利用しているのだろう、タウンハウスにもかかわらず敷地が広く感じる。
美しい庭園に、少しずつ癒されていく。
コレットは、いつの間にか落ち着いていることに気付く。
冷静に周りを見て、他の招待客と自身の装いを比べる。どの招待客も簡素なように見えるが、ドレスも装飾品も一級品で、質を重視していた。
自身の装いが馴染んでいることに少し安堵する。
今の自分は悪評が立っている、立ち振る舞い一つで更に状況が悪化するかもしれない。コレットは、常に気を配るように何度も言い聞かせ、自分を奮い立たせた。
あいさつするために主催者を探すと、コレットは誰かに声を掛けられる。
「まあ、いらっしゃい。お会いできて嬉しいわ、ポワミエ伯爵令嬢」
クレイトロワ公爵家の息女で、このお茶会の主催者、オフェーヌだ。
彼女の装いは、黄色みがかった白色のドレス。滑らかな光と共に、角度によってシャンパンのような金色を見せる。
ネックレスとイヤリングは真珠で、乳白色の中に青色や紫色を揺らめかせながら、優しい輝きを放っていた。
全体的に素朴なように見えるが、彼女の美しい立ち振る舞いと相まって、とても洗練されている。
「こちらこそ、お招きいただき感謝いたします」
コレットはカーテシーをする。
その様子を見て、オフェーヌは小さく笑う。
「ポワミエ伯爵令嬢とは、たくさんお話したいと思っていたの」
そう言われ、コレットの胸が再び早鐘を打つ。
「ありがとうございます。クレイトロワ公爵令嬢にそう仰っていただけて嬉しいです」
「ふふ、楽しみだわ。それでは後ほど」
新しい招待客が来たのだろう、オフェーヌはそちらの令嬢にあいさつするために一言断ってから席を外した。
コレットは落ち着かせるために、再び胸に手を当てた。
すると、聞き馴染みのある人物に声を掛けられる。
「まあ、コレット様! 元気そうね、お会いできて良かったわ!」
友人のベライスだ。
声の主が友人と知り、コレットは嬉しくなる。
「夜会以来ですね、ベライス様。招待してくださったのにお茶会に欠席してしまって、申し訳ありませんでした。あの……大丈夫ですか?」
お茶会に欠席してしまったことについて謝罪した後、体調を気遣う言葉を投げかける。明るい声とは裏腹に、少し窶れているように見えたからだ。
ベライスは心配させないようにか、再び明るい声で答える。
「心配してくれてありがとう、私は平気よ!」
「ベライス様がそう仰るなら……」
本人に平気だと言い切られてしまい、コレットはそれ以上なにも言えなかった。
すると、今度はベライスが心配する。
「コレット様こそ大丈夫なの? クレイトロワ公爵令嬢が主催のお茶会に来てしまって……」
ベライスも、オフェーヌが品行方正な性格であることは知っている。
あの噂について断罪されるのではないかと、心配しているのだろう。
「ええ、私は大丈夫」
コレットはベライスを真っ直ぐと見つめた。
ベライスは何かを感じ取ったのだろう。
「私は、コレット様を信じるわ」
真剣な表情になり、コレットの両手を握る。
「皆様、どうぞこちらにお集まりになって」
そうこうしている内に、オフェーヌが招待客に集まるよう声をかけた。




