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ようやく夏の暑さが和らぎ、過ごしやすくなって来たころ、コレットは自身の執務室で仕事をしていた。
以前とは違い、どことなくペンの走りが軽やかな印象だ。
彼女はロデールと外出してから、いつにも増して精力的に取り組んでいた。
自分の努力は、決して無駄ではなかった――そのことを知っただけで、仕事や努力することが楽しくなる。
以前は独自性のある発想に失敗を恐れて躊躇していたが、今では失敗しても糧になるかもしれないと肯定的に捉えることができるように。
仕事に没頭し、ペンを走らせるコレットに侍女が話しかける。
「お嬢様。ロラ卿からのお手紙と、ご令嬢の皆様からお茶会の招待状が届いておりますが、いかがなさいますか?」
侍女が手にしているトレーには、五通ほど手紙が載っていた。
お茶会の招待状は複数ある。送ってきたのは友人のベライスと、下級貴族の息女三人だ。
今回、招待状を送ってきた下級貴族の息女は皆、素行が悪いのでコレットは距離を置いていた。夜会でも一、二度ほど挨拶を交わしたことがある程度。
彼女たちだけではない。ここ最近、コレットの元に悪評の立っている息女から、お茶会や夜会の誘いが毎日のように来ているのだ。
その状況に少し違和感を覚える。
コレットは手紙を受け取り、申し訳なさそうな表情をした。
「お茶会に招待してくださるのは、ありがたいけれど、ベライス様からのものも含めて今は遠慮しておこうかしら」
そろそろ社交の時期も終わりを迎える。しかし、仕事がとても充実しているコレットは、お茶会への招待を断り続けていた。
ベライスや他の息女へはお茶会を欠席する返事をすることにし、ロデールの手紙の内容を確認することに。
「え……」
そこには、しばらくベルワーテ侯爵領に滞在する旨が書かれていた。文字もいつもより乱れており、差し迫った状況の中で手紙を書いたように感じる。
「何か、あったのかしら……」
騎士として独立したロデールが実家に帰省するということは、よほど重要な用件だろう。
この時、コレットは仕事にかまけて、重大なことに気付くことができなかった。
数日後、コレットは悶々とさせながら、自身の執務室で仕事をしていた。数日前と打って変わってペンの動きが鈍い。
ロデールがベルワーテ侯爵領に帰省している。何か重大なことがあったに違いない。
彼女は、ロデールのことで頭がいっぱいだった。
そうこうしていると、ノックする音が。
すぐにコレットが入室の許可を出すと、息を切らせた使用人が入ってくる。
「まあ、そんなに慌てて、どうし――」
「お嬢様! すぐに旦那様の執務室へいらしてください!」
尋常ではない使用人の様子に、コレットは急いで自身の父親であるポワミエ伯爵の元へと向かう。
もしかして、ロデールからの手紙の内容と何か関係があるのだろうか。
そう思うと、自然と足が速くなる。
「ああ、来たか……」
コレットが訪れると、ポワミエ伯爵は机に肘をつきながら片手で額を覆っていた。
机には少し書類が溜まっており、彼の余裕のなさを窺い知ることができる。
「お父様。ご用件をお聞かせください」
使用人や父親の様子から、深刻な事態に直面しているに違いない。
真剣な表情でコレットが用件を聞くと、ポワミエ伯爵は重い溜息を吐いた後に話し始めた。
それはコレットにとって、衝撃的な内容だった。
「ロラ卿とコレットがジョイルを陥れ、ベルワーテ侯爵の跡継ぎの座から引きずり落したのではないか――という噂が立っている」




