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ロデールとの約束の日。
この日は食事の前に買い物をする予定だ。
買い物はコレットの希望だった。彼に買い物を希望する旨を伝えたところ、快く承諾されたのだ。
まだ日差しが強いので、侍女に帽子を被せてもらい支度を終える。
「ロデール様、今日は時間通りになりそうね」
玄関へと向かいながら、コレットは侍女に話しかける。
以前、庭園でお茶をした日、ロデールが予定より早くポワミエ伯爵邸に訪れたことを言っているのだ。
コレットに話しかけられ、同行する予定の侍女は聞き返す。
「ロラ卿が時間通りにお越しになりそうで、寂しいですか?」
「そうね、少し……」
コレットはロデールに、早く会いたくて仕方がなかった。
彼女たちが玄関について数分後、ロデールが到着。
「やあ、コレット。君と会える日を楽しみにしていたよ」
「ええ、私も。ロデール様にお会いできることを心待ちにしておりました」
その言葉を聞いたロデールは一瞬、驚き、すぐに笑顔になる。
「嬉しい……。それでは、行こうか」
「ええ」
ロデールは彼女に手を差し伸べた。コレットは差し出された手に、自身の手を重ねる。
彼の手は優しく、少し熱いような気がした。
ふとロデールを見てみると、耳が少し赤くなっている。
そんな小さなことで変化する彼を、コレットは愛しく思った。
とりあえず、ロデールは王都の城下町に向かって馬車を走らせた。
馬車の中にはロデールとコレット、そして侍女を含めた三人。
最初に話しかけたのはロデールだ。
「そういえば、どこで買い物をするか決まっているのか?」
「はい。弟への贈り物を購入したいので、最近、王都にできたという、子供が喜びそうなものを取り扱うお店へ行こうと考えています」
子供用の品物を扱う店はかなり珍しいので、貴族の息女や夫人の間で話題になっていた。まだ幼い弟には打ってつけだと思い、贈られたマカロンのお返しを、その店で見繕うことを考えていたのだ。
「なるほど。では、そちらの店へ向かおう」
ロデールはコレットから店の名前と場所を聞き、御者に行き先を告げる。
その後、ロデールは話題を変えた。
「ところで、コレットが私との買い物を希望したのは、私と長く時間を共にしたかったからだろうか?」
庭園でお茶をした日の仕返しだろう。ロデールはコレットを揶揄った。
その問いに彼女は笑顔で答える。
「あら、お恥ずかしい。ロデール様と、少しでも長くいたい気持ちが伝わってしまいましたのね」
コレットの答えに、ロデールは再び耳を赤くさせる。
その様子がおかしくて、彼女はクスクスと可愛らしく笑う。
冗談だと思ったのか、ロデールは苦笑いをした。ひどく落胆したと言いたげに。
「なんだ、冗談だったのか……」
「いいえ、冗談ではありませんわ。私、ロデール様といると、とても楽しいですもの」
コレットの言葉を聞いて、ロデールは更に耳を赤くさせた後、彼女から顔を逸らす。横を向いたことで、耳が真っ赤に染まった様子がよく見える。
これは半分冗談で、半分本当だ。
買い物はサロモンへの贈り物を購入する参考にしたいので、予定の調整が難しい父親に代わってロデールにお願いしたかったから。
そして、買い物や外食を通してロデールと楽しい時間を過ごしたいという純粋な想い。
コレットの中で、ロデールの存在感が少しずつ大きくなっていくのを感じていた
そんなコレットの言葉を補うかのように、同乗していた侍女が口を出す。
「差し出がましいようですが、お嬢様は支度を済ませた後、ロラ卿の話をされていたのですよ。時間通りで寂しいと」
「ふふ、恥ずかしいわ」
今度はコレットが恥ずかしそうに、頬を赤らめる。
彼女の様子を見て本当なのだろうと安心したロデールは、穏やかに笑う。
「ふ、コレットも同じ気持ちで嬉しい」
馬車の中は穏やかな雰囲気に包まれていた。
初めて行く店の雰囲気だけではなく、これから過ごす彼との外出に、コレットは期待で心を弾ませた。




