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私の夢は私が決める ~婚約者に「夢を叶えるために支えて欲しい」とお願いされましたけれど、勝手だと思いませんか?~  作者: ほし


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 正式に婚約破棄してから数日後。

 コレットはポワミエ伯爵と共に、来客の応対をしていた。


「本日はご多忙の中お時間を割いていただき、ありがとうございます」


 そう言って、青年の男性は座っていたソファから立ち上がり、二人に深く頭を下げる。


「この度は、愚弟がポワミエ伯爵家の皆様にご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」


 ポワミエ伯爵邸を訪れて謝罪している彼の名前は、ロデール・ロラ。

 血縁上では、ジョイルの実兄にあたる。


 ロデールは比較的に体格が良く、剣術や体術に優れていた。しかし、勉強が苦手だったことにより、後継者には不適格だと見なされてしまったのだ。

 次期ベルワーテ侯爵の座を弟のジョイルに譲った後、体格を活かして武術や馬術などを学ぶために公爵家の城へ弟子入り。そこで実戦経験を積み、数々の戦場で多くの武功を立てた。


 その後、功績が認められて王室騎士として抜擢。“ロラ”の名前と共に騎士爵位を叙爵されたのだ。

 現在、王子を護衛する騎士として王宮に仕えている。


 ロデールの活躍は、予てから社交界で耳にしていた。護衛の仕事をしている彼を一目見たとき、数々の戦場を経験してきたせいか、とても凛々しい印象を受けた。幼い頃、ジョイルほどではないがロデールとも交流があったので尚更。


 久し振りにロデールに会うコレットは、このような形で再会したことを悲しむ。


「弟だからと、幼少期に甘やかしたせいではないかと思います」


 顔を伏せているのでロデールの表情をうかがい知ることはできないが、心から悔いているように見える。


「ポワミエ伯爵夫人への暴言、ご令嬢を軽んじる行為。さらには、ポワミエ伯爵家の皆様に対して侮辱や傲慢な態度まで……到底、許されることではありません。心より、深くお詫び申し上げます」


「顔を上げてください、ロラ卿。その件について、すでにベルワーテ侯爵と話が付いています」


 ポワミエ伯爵は、ロデールに顔を上げるように言った。


 ベルワーテ侯爵からの謝罪、ジョイルの処遇、慰謝料についても納得のいくものだったのだろう。未だに思い出すと腹立たしいが、妥当だと考えていた。


 しかし、心から申し訳なく思っているのか、ロデールは顔を上げようとしない。


「私は君に恨みはないんだ。頭を上げてくれないか?」


 ロデールに優しく諭すように言うポワミエ伯爵。

 腹を立てているのはジョイルであって彼ではないと、言っているかのようだ。


「本当に……申し訳ありませんでした」


 ようやく、顔を上げるロデール。だが、少し俯き加減だ。

 彼は眉を八の字にさせ、悄然としていた。


「君が謝ることではない。きっと、ベルワーテ侯爵から事情を聞いて、すぐに謝罪の為にこちらまで出向いてくれたのだろう?」


 王宮で騎士としての仕事や日々の鍛錬で忙しいにもかかわらず、合間を縫って来てくれた。

 ポワミエ伯爵は、相手の心から詫びたいという気持ちを汲んだ。


 コレットは、ポワミエ伯爵がロデールを穏やかな表情で見ていることに気付く。

 穏やかな表情をする時は、相手に好感を抱いている時。ロデールがポワミエ伯爵に会う約束を取り付ける際、相当、誠実な手紙を送ったのだろうかと予想していた。


 ポワミエ伯爵は、誠実で責任感のある人物に好感を抱く。

 婚約破棄の話し合いで、「責任を全うする男性の元に娘を嫁がせたい」と理由に挙げるほど。


 コレットが少し考え事をしていると、突然ポワミエ伯爵がソファから立ち上がる。


「申し訳ない。本当はもっと君と話をしたいが、そろそろ私は仕事に戻るとするよ」


「それでは、私もこれで失礼させていただきます!」


 ポワミエ伯爵が席を外すと言い、ロデールも王城へ戻ろうとする。しかし、ポワミエ伯爵は引き留める。


「君は来たばかりではないか。もう少し、ゆっくりしていくと良い。多忙であれば無理に引き留めはしないが……」


「あ、いえ……」


 ロデールは、ポワミエ伯爵からコレットへと視線を移す。

 彼の視線に気付いたコレットは、わけが分からないながらも淑女らしく微笑む。

 笑顔を向けられ、すぐに彼女から視線を外す。ロデールは少し驚いたような表情をし、徐々に耳を赤くさせていった。


 その様子を見ていたポワミエ伯爵は、少しニヤニヤしている。


「後のことは任せたよ、コレット」


「え、ええ……」


 ポワミエ伯爵に客人の接待を任されたコレットは、少し戸惑いながらも承諾。


「それでは、失礼する」



 ポワミエ伯爵が退出した途端、部屋が静かになる。

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