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私の夢は私が決める ~婚約者に「夢を叶えるために支えて欲しい」とお願いされましたけれど、勝手だと思いませんか?~  作者: ほし


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 コレットの自室は他の部屋のように落ち着いている。

 淡い赤色を含んだ黄色の壁紙に、全体的に茶色の絨毯。家具は装飾が少なく素朴で、壁側に配置されているチェストには、庭園に咲いていた花が花瓶に生けられていた。

 違う部分は、家具の色が他の部屋で使用されているものより明るく、少し原色に近いので若々しい印象を受ける。


 現在、紅茶の新鮮でみずみずしい香りが広がっていた。


「美味しい!」


 サロモンから贈られたマカロンと侍女に用意させた紅茶に、舌鼓を打っているコレット。

 紅茶の青々とした香りが広がり、あまり癖のない味なので木苺の甘酸っぱさが楽しめる。別の楽しみ方もあるが、木苺が使われたマカロンの味を堪能したいという、彼女の意向を汲んだ形だ。


 忠実な侍女は、コレットを満足させることができて嬉しそうにしている。


「坊ちゃまから贈られたマカロンの、おかげでございますね」


「それだけじゃないわ。だって、貴方が淹れてくれた紅茶も素晴らしいもの。いつも、ありがとう」


 コレットは、あくまで贈られたマカロンのおかげだと主張する侍女を褒め、感謝を伝える。


「ご満足いただけたようで、大変、嬉しく存じます」


 褒められた侍女は少し顔を赤らめながら、率直な気持ちを伝えた。


 そうこうしていると、ドアをノックする音が。


 それに気づいたコレットは、入室の許可を出す。

 入室したのは別の使用人の女性。


「失礼いたします。お嬢様に手紙が届いておりまして……その……」


「? どなたかしら……」


 ティーカップをソーサーへ戻し、言いにくそうにする使用人から手紙を受け取ったコレット。すぐに差出人を確認する。


 そこに書かれていたのは、ジョイルの名前。


 今更、何の用だろうかと(いぶか)しみながら手紙を読む。




 コレットへ


 君は今でも心を痛めているんだろうか。いや、痛めているんだろうな……。

 僕はポワミエ伯爵夫人に対して、心無い言葉を投げつけてしまった。本人に直接、言っていないにしても、それを聞いたポワミエ伯爵や君にも申し訳なく思っているよ。

 何度、謝罪しても許されることじゃないのは分かっている。でも、謝罪せずにはいられない。

 本当に、ごめん。

 僕はどうかしていた。ポワミエ伯爵夫人の体調が、一日でも早く戻ることを祈っている。

 お詫びに、僕が画家の夢を叶えたらスケッチ画を一枚描かせて欲しい。


 それじゃあ、元気で。

 君の幸せを願っている。


 ジョイルより




 手紙を読み終わったコレットは冷めた表情をしていた。

 謝罪されても、心は動かない。


 先ほど父親から、ジョイルがベルワーテ侯爵家を追い出されたことは聞いている。平民になった彼が生活に困窮することは必至。

 コレットは、ジョイルが支援してもらう目的で手紙を出したのだと推察したのだ。

 相手の恋心を利用して自身の夢を叶えようとしたのだから、そのくらいするだろう。


 静かな怒りを感じ取った侍女は、コレットを宥める。


「お嬢様、今はこの時間を楽しまれてはいかがですか? せっかく坊ちゃまから、美味しいマカロンをいただきましたのに、もったいないですわ」


 そう言って、侍女は木苺のマカロンが乗っている皿を、ほんの少しだけコレットの前へ移動させる。

 サロモンからの贈り物の存在を、思い出させるかのように。


「クス、そうね!」


 侍女のおかげで平常心を取り戻したコレット。


 せっかく自分のためにサロモンが木苺のマカロンを、侍女が紅茶を用意してくれたのだ。今はその厚意に甘えようと思うことにした。


 サロモンから贈られたマカロンを一つ手に取り、口へと運ぶ。


 自分のために選んでくれた、木苺のマカロンをじっくりと味わう。

 クリームに果肉が使われているのか、甘酸っぱい味とつぶつぶとした食感が感じられて、とても美味しい。



 その後、コレットは再びポワミエ伯爵から呼び出されることに。


 数日後にお客様をもてなすので同席するように、とのことだ。

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