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氷炎護リ人  作者: 有麻環
三章 フォリアーテ教会編
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3章 11 帰宅と……

「さて、予言も聞いたし帰るか」


 葉の相談事も、信仰に対する話も一通り締まったところで、シアンはぐっと伸びをした。

 日はもうとっくに暮れている。来る時に使った交通機関(走り屋)は既に営業を終えた時間だ。歩いて王都まで帰るのにも一時間はかかる。そこからシアン達の住む家までとなるとさらに一時間。帰るなら早い方がいい。

 

「あら、シアン姉様。泊まっていかれないんです?」

 

「ここにいると神っぽい気配感じて落ち着かねぇから遠慮しとくわ。お前らは好きにしろ」

 

「あら不敬」


「せっかく久々にいらしたのに」と残念がるルゥンを他所に、ライアとソラを見る。葉はともかくこの二人は別に置いていっても構わない。

 

「いや、オレらも帰るよ。なあライア?」

 

「そうそー。帰ってやりたいことあるし!」

 

「葉姉と響は?」

 

「あ、あたしも帰ります!明日になっても1人じゃ帰れないし……。明日も軍務のお仕事あるし」

 

「俺も帰ろっかなー。ゼルリオ放っとくと作戦室まで工房にされそうだし」


 全会一致で帰宅が決まった。王都に泊まるにしろ、家まで帰るにしろ、夜間1時間の徒歩コースだ。葉に「帰りは歩き」と伝えると、苦虫を噛み潰したような顔で「そんな気はしてた」と返ってきた。

 しかし、それを聞いたライアがバカにしたようにこう言った。


「いや、歩くわけなくね。他に方法あるっしょ」

 

「はぁ?この時間は車もなければ走り屋も終わってんぞ」

「あはは!流石脳筋〜考えが足りなすぎ〜」


 腹が立った。殴りかかろうとしたが、ソラに「話が進まん」と押さえつけられた。葉がただただオロオロとしていて可哀想になったので、何とか気持ちを落ち着かせた。

 

「つーわけでルゥン。転移魔法陣描いていい?これから何回か邪魔することありそうだし」

 

「良いけど、きっと明日には子供達に汚されてるわ」

 

「じゃーなんかガキが近寄らないとことか無い?」


 つまりライアは魔法陣を使って王都までの1時間をショートカットしようと言うわけだ。他になんの用があるかは知らないが、確かにできないことはない。行きはともかく、帰りだけでも時間を短縮できるのは大きいだろう。

 魔法陣は少しでも崩されると機能しなくなる。ライアがどこか人の近寄らないかつ、邪魔にならないところはないかと問うと、ルゥンは少し悩んだ後に1つ提示をした。


「地下空洞なら、まぁ」

 

「そこってなんか祀ってるとかじゃねえの?封印してるんだっけ?」

 

「別にいいんじゃないかしら。他でもない兄様方ですし、封印魔法陣にさえ触らなければ」

 

「お前も大概不敬だよ」


 詳しいことはシアン達もよくは知らないが、教会の地下には神代の災いが封印されているとか何とか。そんなことを聞いたことがあった。そんな大切な場所をシアン達が帰る時に使うだけとはいえ、手を加えていいものか。だからこそソラが尋ねたが、ルゥンはあっけらかんとした態度で許可を出した。

 

「魔法陣使うったって、どこに帰るんだよ。出口に護リ人居ないといけないんだろ…………まさかお前ら」

 

「マリーシャに頼む」

 

「一国の王女をそんなことで使うな」


 身内のレイトも気になるのは魔法陣を描くことでも、その場所でもないらしい。封印に何かあれば真っ先に被害を受けるというのに、なんとも図太い姉弟だ。

 善は急げとルゥンに地下へ案内された。地下()()と言うだけあって、あまり人の手が加えられていない洞穴のような場所だった。

 一番端まで辿り着くと、小さな祭壇の上に真っ白い円状の石が置かれていた。その周りにはこれでもかと言うほど厳重に封印用の魔法陣が重なっている。視界の端ではライアが持ってきていたチョークでせっせと魔法陣を書いている。


「はーい完了。マリーシャにも連絡入れといたからすぐ使えるはずだぜ」


 シアンがまじまじと封印魔法陣を眺めている間に帰宅の準備が整ったようだ。


「それじゃあ動かすぞ。葉、響、ちゃんと円の中に入れよ。事故っても責任負わねぇからな」

 

「わ、わかった。大丈夫」

 

「了解了解。んじゃ!レイト、チビ助たちによろしくな」


 その言葉を最後にシアン達5人はその場から姿を消した。次に目を開けた時初めに見るのは、きっと眠そうな顔で出迎えるマリーシャだろう。

 

 ☆。.:*







 ☆。.:*

 

 護リ人達が去った日の晩。レイトは孤児院の就寝確認を、ルゥンはティノを寝かしつけていた。

 予言を告げた日は疲れてしまうのか、決まって直ぐに寝てしまうのに、なぜだか今日の彼女はなかなか目を閉じなかった。むずむずと芋虫のように身動ぎ、まるでクシャミが出ない時のような不快な顔をしている。

 

「ティノどうしたの?眠れないのかしら」

 

「…………」


 目は開いているものの、声をかけても反応を示さない。意識がはっきりしている訳ではなさそうだ。

 しばらく様子を見ていると、動きがピタリと止まり、幼い瞳はスっと細められた。今日だけでも二回は見た、睨みつけるような目だ。

 

「まさか、また予言?今日の主は随分とお喋りなのね」


 ルゥンの予想通り。ティノは眠れなかった理由――本日最後の予言を言葉にした。その次の瞬間には、満足したように幸せそうな顔をして寝息を立てていた。


 

「『嘘つきは気まぐれなる善意によって殺され、崩落の一歩を踏み出すだろう』」

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