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氷炎護リ人 〜現地主人公×異世界転移〜  作者: 有麻環
六章 カズロット編
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6章 6 観光名所

物語前に長文失礼します。

先日一章の中身がズレて、一部飛んでいたことが判明しました。

投稿当初からだったかは分かりませんが、首を傾げながら読んでいた方、すみませんでした。

改めて正しいものに差し替えました。その際、一章8話構成だったのを6話に変更したため、各話の話数がズレています。


また、五章〜裏幕の章設定ができていなかったため、そちらも見出しを差し込んでおります。


ご不便をおかけして申し訳ありません。

これからもどうぞよろしくお願いします。


今回はあとがきにもコメントを残していますので、良ければそちらも見てくださると幸いです。

「……ソラくんいい加減その手を離せ?」

 

「却下。ただでさえ道がわからんのにお前に迷子になられたら終わる」

 

「チッ」


 次々に降り行く観光客に揉まれながら、シアン達も十数時間ぶりの地面へ足をつけた。

 ずっと船に揺らされていたためか、僅かに足がもつれる。揺れない地面のなんと違和感のあることか。シアンは感覚をリセットするように頭を振った。


 シアンよりも先に降りたライアは、同時に降りたのだろうソラに例のごとく二の腕を掴まれている。手首ではなく二の腕という所に、何があっても離さないという強い意志を感じた。そこにロマンチックさは欠けらも無い。


「相変わらずだな! ライア、ソラさん!」


「っす」


「なんだ、海斗と大地も来てたのか」


「はいはいハロ〜久しぶりじゃねーか、海斗。大地はこの前61(ロクワン)工房で会ったから久しぶりじゃねーな」

 

「この前って少なくとも二ヶ月以上は前だけどな」


 いつも通りすぎるやり取りの彼女達に、後ろから来た海斗と大地が声をかけた。

 海斗は先程も近くにいたがカズロットの変わり果てた姿に言葉を失い、お互い挨拶する余裕もなかったのだろう。


 そんな二人をまじまじと見つめていたライア。大地からの冷たい訂正を受け流し、橙色の目を細めて誤魔化すように薄ら笑いを浮かべている。


「あはーはは……にしてもこんな所で奇遇だな〜。服装を見るに仕事なのは大地だけか。海斗は……プライベート?」


「その通りだ。友人に会いに来た……んだが……」


 と、辺りを見回す海斗。


「ま、それどころじゃないわな」


 戸惑う海斗の目を追って、一同の視線が陸地に向けられる。

 何度目をこすっても変わることの無い景色。これがシアンだけならば寝不足による幻覚だと一蹴できるが、残念ながらそうではなかった。


 踏みしめた地面の感触は土を固めたものではなく、樹脂素材のようなもの。

 人や貨物を運ぶのはこの国周辺を生息地とする地竜ではなく、磁場かなにかで浮遊している車らしきもの。

 どこまで行っても不気味なまでに発展しすぎた世界が広がっている。


「迷イ人の気持ちが初めてわかった気がする……」


「あっはは! わかる〜…………いや笑ってる場合じゃないんだわ。フツーにヤバいぜこれ」


 頭痛に苛まれるシアンの横で、僅かに口元を引きつらせたライア。普段飄々としているやつが言うとその危機感が増すのは気のせいだろうか。

 そんな彼女達の目に、特に深く眉間に皺を寄せたソラの顔が映った。

 

「…………」


「どしたのソラ」


「いや、なんかおかしいんだよ」


「なんかって何」


「匂いが……な。普通これだけ街並みが舗装されれば、元々カズロットにあった土とか木の匂いは消えるはずなのに、匂いだけが昔と全く変わってねえ」


「ふむ……匂いね…………」


 神妙な顔のソラ。その言葉を意図を確かめるように、ライアがスンスンと辺りの匂いを嗅いでいるが、直に肩を竦た。お手上げだそうだ。

 

「私には分からねぇけど、お前の鼻は信頼できる。つまりは、この一夜城ならぬ一夜都市にもからくりがあるって事だ」


 普通の人間の嗅覚では分からずも、幼い頃から動物と森で暮らしていたソラにはわかる何かがあるのだろう。

 

 しかし、今それを考えていても仕方がない。シアンは今の情報を脳に書き留め、ソラに目配せをした。

 彼はすぐにその意図を読み取り、自ら場を仕切った。

 

「まあとりあえずオレ達はアレフリアのとこに行こう、いつまでもここに突っ立ってると熱中症になっちまう。お前ら二人はどうする?」

 

「僕も一緒に行きます。多分隊長達もそこにいるはずなんで」


 と、大地。双子に対してタメ口がデフォルト彼は、なぜだかソラにだけは敬語を使うのだ。全く持って解せないが。

 同行が決まった彼に対して、海斗は元気よくシアン達に背を向ける。

 

「俺はここで別れるぞ。今日は友人に会いに来ただけだからな! ――じゃ!」

 

「行っちまったよあの坊主……」

 

「すごいな。ほぼ街並み原型とどめてないのに気にもしねぇ」


 言うが早いか、一切の迷いなく疾風のように走り去って行った海斗。彼もまた道などわかっていないだろうに、よくもまあ自信満々に進めるものである。

 大地を除く護リ人の三人から一様に尊敬と呆れの眼差しを向けられた彼の背中は、みるみるうちに小さくなっていった。


 再び緩んだ空気を締めるかのごとく、ソラが口を開いた。

 

「…………止まってても仕方ねえし、こっちも動こうか。とりあえずざっくり方向だけ見て城があったとこに行けばなんかわかるだろ」

 

「いや、つーかさ……どう見てもあれじゃん?あのクソ目立つ塔」


 そう言って、ライアがある一点を指し示す。彼女の指の先、高層ビルが(そびえ)え立つ異常空間でも一際高い鉄塔。己が存在を主張するように日に照らされ、堂々と輝いている。

 

「なんだあのスカイツリーみたいなやつ……」


 開いた口が塞がらないシアンやソラを他所に、唯一このレベルの技術都市に縁のある大地が小さく呟いた。

 

「あ〜、スカイツリーってなんだっけ。電波塔?」

 

「そんなとこ。ただ展望台とかあって、首都圏を代表する観光地だったな」


 「ちょうどあんな感じに」と続けた大地の言葉に、シアンはぐっと目を細めた。

 遠くて詳しくは見えないが、確かに上部には円形の広間がありそうな作りをしている。

 

 他に行く宛てもない今、一行がその塔へ足を向けるのは必然でもあった。


「んじゃあとりあえずは一番怪しいとこに向かってみるか〜」

 

「よお節穴。あれだけクソ目立つ塔があってもまともに進めねえのかお前は」

 

「うっ…………ぐうの音も出ねー」


 ソラに掴まれたまま反対方向へ進もうとするライアの声があまりにいつも通りで、 目の前に広がる非日常とズレていく。

 その歪さに、シアンは自身の五感が乖離していくかのように思えた。


 

 ☆。.:*

 


 窓の外から砂の海に豪華客船が停泊したのが見えた。

 外は喉が焼けるように暑いのだろう。地表を管理する監視カメラは、茹だったような陽炎を移している。


「旅客船来ましたね、アレフリアさん」


「ほ、ほんとだ……来ちゃったよ…………どうしよう」


 カメラのチャンネルを切り替えた男が楽しげに声をかける。彼の視線の先には、煌びやかに彩られた玉座に収まる青年――カズロット第二王子、アレフリア=カズロット。

 玉座の上で怯えた鼠のように小さく縮こまるアレフリア。現カズロットを仕切る実質的な王の姿に、男は見せつけるように溜息をついた。


「どうしようじゃないっすよ、アンタが呼んだんでしょ? あの…………なんだっけ、守護者?」

 

「護リ人」

 

「それ」


 異世界から転移したが故、この世界の固有名詞に弱い男。全面ガラス張りの窓へ近づき、足元の広がるハイテクノロジーな理想郷を見下ろした。

 窓の近くは遮るものがないからか、殺意とも思えるほどの日光が皮膚をじわじわ焦がしている。

 

「ホントに大丈夫なんです? ちょっと呼ぶの早かったんじゃねーっすかね」


 男は中に浮かぶモニターを操作しながら王子……否、現国王の顔色を伺った。

 

「だよね…………けど、彼等に力を借りないと、現状のおれ達だけでは国民を守ることはできないから……」


 アレフリアが痛みをこらえる時のような険しい顔のまま拳を握る。不安故にか土のような顔色。しかしその目はまっすぐ芯を持っていた。


 男は一瞬息を止め、その覚悟に敬意を示すように(ひざまず)く。


「大舟に乗ったつもりでデカい顔していてください、マイロード。俺が……いや、俺達が――アンタを世界最高峰技術の国王にしてやります」


 電光と烈日に照らされる男。自信に溢れた不敵な笑みがアレフリアの目に映る。

 彼にとっての建国ゲームは、ここから佳境に入ったのだ。


 

 ☆。.:*

 


「は〜〜でけ〜〜〜〜。近くで見ると圧あるな…………」


「あまりにも見慣れない景色すぎるからか、なんか腹立ってきたな…………」


「あー……だろうね?」

 

 たどり着いた塔の麓。少し上を向いたくらいでは最上階は視界にも入らない。

 思わずといったように天を仰ぐライアの横で、シアンは全身を這うような悪寒に身震いをした。

 

 ライアが一体何に納得したのか分からないが、わかった風な顔をされて更に虫の居所が悪くなる。

 否、気が立っているのはそれらのせいではないだろう。


「クソ……イライラする……観光名所っぽいとはいえ、人……多過ぎねぇか?」


「あはは……本当に〜! …………あっっっっつ……」

 

 特別目立つせいか、皆考えることは同じようだ。観光客が集まって飴に群がる蟻のように蠢いている。

 カメラを向ける者、歓喜や熱狂に打ち震える者、興奮した声で互いに感想を言い合う者。

 立ち止る人と前へ進みたがる人が混在するせいで、塔の真下は無秩序に人の波が押し寄せていた。


「とりあえず来てみたはいいが、本当にこんな騒がしいところにアレフリアの小僧がいるのかよ……」


 長い船旅の疲労が癒えていないというのに、天から注ぐ日光と樹脂に反射される熱、そして極めつけにこの人混み。暑さに弱いライアの顔がみるみるうちに青くなっているのがよくわかる。心做しか足取りが覚束(おぼつか)ない。

 

 体力自慢のシアンでさえ、既に疲労困憊待ったなし。観光客達のなんと元気なことか。異郷の観光という娯楽の最中であることがアドレナリンでも出しているのだろう。


 これはまずいと思ったのか、ソラがシアン達と同じように暑さに参っている大地に声をかけた。

 

「なあ大地、アウラが先に来てるんだろ? ちょっと何処にいるのか連絡してみてくれないか?」

 

「そうしたいのは山々なんですけど……さっきから電波悪くて……電波っつか魔力波なんだけどさ……」


 軍の隊服などという更に暑いものを着ている大地もまた、酷く調子が悪そうだ。

 繋がらないという端末をライアが覗き込み、「本当だ、全っ然波入ってない……」と白旗をあげた。端末の故障ではないとのことだ。


「……ちょっとお前ら日陰に入ってろ。これだけ観光客がいるなら案内役とかいるだろ。入口付近まで行って城がどこにあるのか聞いてくる」


 にっちもさっちも行かなくなった現状に、ソラが次の一歩を踏み出した。寒さを極端に嫌う代わりに暑さには強いらしい。

 彼はガッチリ掴んでいたライアの腕をシアンに引渡し、塔の方向へ体を向ける――


「護リ人御一行様ですね」


 ――そのタイミングで、透き通った水のような声がかかった。

 人混みの中から現れたスーツ姿の女。柔らかい晴天のような長髪を纏め、凛々しく清潔感のある装い。

 

 彼女は混沌とした喧騒の中でも聞き取りやすい不思議な声で語りかけた。


「国王、アレフリアの代わりにお迎えに上がりました。――ようこそ、新時代を迎えた人類の叡智、カズロットへ」

100話を超えて淡々と書いてきましたが、ふと、ここまで読んでくださっている方はどう感じているのかなと思い感想を募集してみます


好きかもしれないキャラや気になる設定など一言でも歓迎です

分かりにくい部分等教えていただければ、ネタバレにならない範囲で次回の活動報告でまとめようかとも思います


もし気が向いたら、お気軽に一言だけでもいただけると幸いです!

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