第5章 星降るフルリンケ(1)
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どうしよう。
悩んでるのに誰にも相談できない。
ここは仮想空間であり、現在、外部の者は彼の人しかいないからだ。
どうしよう、どうしよう。
彼の人は必死に考えた。
どうしよう。キャラクターの動きが明らかにおかしい。
シレースオが【設定】なんて単語を発する予定はなかった。主人公に疑念を抱かせるような言動をする予定もなかった。
でも、シレースオは予定外の行動を起こした。
そういえば、ルブフもそうだった。
動揺する心を無理やり押さえ込み、客観的に考えてみる。
この世界の構築は順調だ。
RPGらしく、冒険の目的もあるし、適度なボスも用意されている。巨悪のクルダマオ族に対抗する四種族という構造も完璧だ。クルダマオ族だけを悪者にして物語を作れば良かった。自分の性癖を出してしまったのが、悪かった。
……だって、悪が悪だとは限らないじゃないか。主人公から見たら悪でも、悪から見たら主人公が悪なのに。
だけどまさか、私がこの世界に入ったせいで、キャラクターが【メタ】的視点を持つなんて。
ゲームの世界には余白があるにせよ、こんなにメタ的発言をするのは予想外だ。
上司に怒られるなぁ……。
「大丈夫? 疲れた? ちょっと休もうか」
主人公であるキヒュームが優しく声をかけてくる。
不自然にならないよう、一応頷いておく。
あぁ、この子にも悪影響が及んじゃった。
キヒュームは底抜けに明るくて、よくしゃべり、あまり物事を深く考えない性格にするつもりだった。
なのに、今や真逆だ。
それなりに明るいけれど、無駄にしゃべらず、慎重に物事を考えるキャラクターになってしまった。
まぁ、【創造神】がプレイヤーになることを考えれば、今のキヒュームの方が共感しやすく、感情移入がしやすいかもしれない。
ポジティブに考えてみる。
彼の人は腰を下ろした。お尻から足なひんやりとした感触が伝わる。足を伸ばして、大きく伸びる。体に血液が巡る感じがした。
今、物語は構築されている。私の歩みともに形成されている。
……また、エラーで世界が無くなってしまうのは、嫌だな。
不意に、涙がこぼれそうになった。
今までこんな気持ちになったことないのに。
体が震える。この世界が消えることを考えたら、震えが止まらなかった。
いつの間にか、この世界にだいぶ肩入れしちゃったみたい。
ため息をつく。
私はこの世界が好きだ。歪で、不平等で、汚くて、不正義が蔓延るこの世界が好きだ。
——だけど、【正義】の側はやはり嫌いだ。
仲間たちの声がする。
彼らは一体、どんな結末に辿り着くのだろう。
全てを成り行きに任せるしかない。こんな試みは前例がないのだ。
消えちゃったら、消えちゃったかな。
諦めに似た感情が顔を出す。
目を閉じる。彼の人は今いる世界に全神経を集中させた。
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