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第4章 魅惑のマレタラッタ(1)

 


 *


 リンパを刺激するように、首を回す。


 肩が凝ってる気がする。


 頭が重い。動悸までしてきた。


 五感を持つってこんなに辛いんだっけ。


 胸を押さえ、気息を整える。


 仲間の三人が意気揚々と歩いている。


 ゲームを作製するだけの【人間】に感覚を授けたのはなぜだろうか。


 ゲームをプレイする創造神の気持ちもわかるように、なんて上司は言っていたけど、多分、創造神の嫌がらせなんだと思う。


 寒さってこんなに堪えるんだ。


 熱風ってあんなに命の危険を感じるんだ。


 ああ、頭が重い。気分が悪い。吐いてしまいそう。


 彼の人は歩きながら、バレないようにため息を吐いた。


 いっそ、こんな世界投げ出してしまおうか。どうせエラーが出て、上司に怒られるだけで済むんだし。


 この世界の人たちに貴方たちも貴方たちの世界も作り物ですよ、と言い放つ場面を想像する。


 つまらない。


 彼の人は幾度目かのため息を出した。


 どうせネタバラシした瞬間にエラーを吐かれる。それに、ここにいる者たちはどこまでいっても私が作った【キャラクター】なのだ。反応なんて簡単に想像がついてしまう。


 喉が渇いた。ジリジリと日差しが強くなる。


 今、目指しているのは、アイレーンの故郷であるマレタラッタだ。北のブランダミグマ、東のヴォルペレス、南のマレタラッタ、西のフルリンケ……。主人公御一行様は北から反時計回りに冒険をしているということだ。


 出発の街から近い街を最初の目的地とし、比較的弱い敵を置く。そこから、どんどん近い場所を攻略し、敵をどんどん強くする。


 RPGの鉄則だ。


 もちろん、最近流行りのオープンワールドも同じだ。強い敵は初期に行けない場所、遠い場所に配置する。どんなゲームでもこの鉄則は変わらない。


 周りに流れているBGMが変わる。


 戦闘が始まった。


 彼の人も参戦し、適当に雑魚敵を片付ける。


 今、意識があるのは私だけ。ここにいる誰もが自分の意識を持たない。


 当たり前でしょう? 戦闘や探索はこのゲームのプレイヤーがするんだから。


 ゲームはノベルゲーム以外、プレイヤーが行動できる余地を残さなければいけない。そうしなければ、RPGとは言えないし、自由に行動させることができないゲームなんて、誰がやるというのか。


 だからかな。


 余白があるからこそ、ルブフが変な動きをしたのだろう。


 時を止め、主人公に助言するなど、私の想定にはなかった。


 だけどまぁ、問題があるのならテストプレイ時に、上司が上記のシーンを削除するだろう。粗末な問題だ。


「な、なんとか勝ちました……!」


 戦闘が終わった。


 トドメを刺したアイレーンが勝利ボイスを発する。


 彼らが話すことができるのは、ストーリーイベントのときと、戦闘時(戦闘開始、戦闘勝利、戦闘時の掛け声)だけ。


 ただの操り人形なのに、それにすら気づいていないなんて。


 彼の人は哀れみにも似た感情を目の前のキャラクターたちに向ける。


「着いた……」


 主人公が仲間たちにつぶやいた。


 イベントシーンが始まったのである。


 *




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