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陽葵の活動4

奏多達がダンジョンでの騒動を終結させた翌日、ヴィレージュ王国の王都には陽葵は司や椎名という奏多に関する者達のみで散策という名の情報収集を行っていた


「ふーむ、やっぱり移動するなら乗合馬車を利用するのが確実ッスね」


「うん、ボク達だけだと地理に疎いから迷う可能性もあるもんね。その点、目的地が決まってる乗合馬車なら確実に目的地まで行けるよ」


「でも、お城の人達に追い掛けられたら直ぐに追い付かれちゃうよね」


「それなんッスよねえ。一応、ワイバーンで運んでくれる飛竜便ってのはあったッスけど―――」 


「一人辺り金貨百枚、おまけに王国からの許可証が必要、だもんね」


ワイバーンとは手が退化した代わりに大きな翼を持ち飛ぶ事に特化したドラゴンの一種である


その力は人が数人乗っても問題ない程であり、荷物や人を乗せた籠を素早く遠くまで運ぶ事が出来る事から急ぎの伝令や劣化の早い品物の運送にと重宝されている


ただし、ワイバーンはドラゴンという種の中では弱い部類に入るとはいえ飛行し空から火を吹く為に並みの人間では討伐は難しく、ドラゴンという種は総じてプライドが高い為に人間に懐く事は殆んど無い


なので巣から卵を盗み出して人工的に孵化させて育てた個体が飛竜便などで利用されるワイバーンとなる、だがドラゴンなので人に育てられても弱ければ背に乗せる事もなく、その乗り手の数も限られる事から広くは普及していないのだ


加えて平時は運送などの業務に携わっているとはいえ、彼等は基本的に軍属であり伝令などの仕事をしているついでに飛竜のエサ代の補填目的で一般からの仕事も請けているだけであり、そのタイミングも余程の金を積まない限りは国の都合での利用となる、先程の一人金貨百枚というのも、国の方で目的地に飛竜便を派遣する予定があり、且つ積載量に余裕のある場合のみという条件である、完全に私的目的で使いたいのであれば少なくとも金貨千枚を積む必要があるのである


その為、陽葵達は早々に飛竜便を候補から外していた


「あとは国境を越える際の身分証ッスね。まあ、こっちは宛てがあるッスけど」


「探索者登録、だね。きっと奏多達も同じように国境を越えた筈だよ」


色々と情報を集めている中で陽葵達は王国からの支給以外の金を稼げる手段を模索していた


自分達の持つ技術で何か出来ないか、そう思い色々と見ている内に探索者組合の存在を知ったのだ


「王都以外の場所で登録して国境を越える。幸いにして皇国の北部にはダンジョンが密集した場所があるらしいから国を越えて探索者になる人は多いって話ッスからね。此処は確実で、その後はセンパイ達の居場所ッスね」


「うん。でも、どうやってそこまで行くか、なんだよね?」


「結局は最初の問題に戻ってくるんッスよねえ……」


彼女達は色々と考えていた、だがどうしても移動手段の確保だけが出来ずに居た


そもそも乗合馬車では街道をゆっくりと進んでいく、防壁の門でそれぞれの身分確認も行われるし、王城での不在に気付かれれば追手も差し向けられる、馬車では騎兵から逃れる術はない


ならば徒歩で森などを進み行方を眩ませながら進む方法だが、此方は時間が掛かる上に旅慣れていない三人で森を進めば簡単に迷ってしまうだろう、魔物の襲撃も考えられる為に現実的ではない


最後に馬を買って機動力を確保する方法だが、馬が大きく目立つ為に買っても世話をする場所が確保出来ず、企みが露見する可能性の方が高い為に断念せざるを得ない、まず城の方で訓練を受けている途中の為に三人とも馬を操る事が出来ないという問題もある


乗馬を完全に習得したら城の馬を奪って逃げようか、と考える方がより確実である


そんな事をあーでもないこーでもないと話し合いながら王都を歩き回る三人、それぞれ日本語で話しているから同じ勇者でなければ聞かれても問題ない事を堂々と話していた時、ふと視線の先に人だかりが出来ている事に気付いた


「あれ、何かな?」


「確か、この先って噴水広場だったね。何かやってるのかな?」


「んー、微かに弦楽器の音も聞こえるし、吟遊詩人ッスかねえ?」


人が集まってはいるが騒いではおらず、聞こえてくる弦楽器リュートの音に陽葵はそう予想する


三人で解決しない事を話し合っていても仕方ないと、気分転換になるかと思いその場に向かう陽葵達、しかし残念な事に既に詩が終わるところであった


「『―――こうして地に潜む悪鬼の野望も阻まれ、彼の聖騎士王は銀の姫君の下へ帰還する』。《聖杯騎士団物語・新章 聖騎士王の帰還》、此度はこれまで。次の演奏は一時間後の予定です。ご興味がお有りでしたら、是非その機会に」


噴水の前では旅人らしい服装をし、青い羽飾りの着いた帽子をかぶる一人の吟遊詩人が弾いていたリュートを脇に抱えながら観客に向けて一礼をしていた


観客達はそれぞれ拍手を行い、吟遊詩人が置いていた小箱に思い思いの代金を支払っていく


人々が今の詩について感想を話し合いながら去っていき、やがて誰も居なくなった辺りで顔を上げた吟遊詩人は期待を込めた表情で小箱の中身を覗き込む


だがその背に声を掛ける人物が居た


「おじさん、さっきの詩、もうちょっと詳しく教えて貰って良いッスか?当然、タダとは言わないッスよ」


そう声を掛ける陽葵の手には一枚の金貨があった、覗き込んでいた小箱の中は差はあるものの多くは銅貨である、銀貨も少なからずあるが、金貨は一枚も入っていない


そのため、吟遊詩人は少しだけ迷ったものの、一度だけしっかりと頷いたのだった

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