表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/72

凶星

どうにも書いててキレが無くなってきました……

お伽噺の中の英雄、普通はそのような名乗りをあげたところで狂言と受け取られるのが当然の事であろう


しかし、少なくとも奏多が持つ聖剣は本物である事は何人かの探索者には分かっていた、王国へと依頼で行った時に王都の外れにある神殿に台座に刺さった姿で安置されているからだ


かつて人類の生存可能領域が今よりも大幅に少なかった時、数多の魔物を討ち果たし人々が穏やかに暮らせる土地を切り開いたとされる英雄達である《聖杯(グラール・)騎士団リッターオルデン》、その団長たる《神剣の聖騎士》がお伽噺の中で王都の西の丘に自らの愛剣である聖剣を残したというのは有名な話である


そしてその聖剣を十全に扱える者は更にその力を引き出せるという事はお伽噺の中でも、後に聖剣を抜いた者の中に成功した者が居たことからも明らかとなっている


ではそんな聖剣を気負う事なく当たり前のようにやって見せた灰村奏多という男は、この世界に於いてどのように見られるだろうか


それが聖剣のみでなく、鎧や槍といった他の武具を見ても一目で神聖な気品のような物を窺わせる代物であれば尚の事だ


だめ押しにその武具も女神マルヴィナが用意したとなれば、この場に於いて直接その目で見た者達は奏多が本物であると認めるしかなかった


だが―――


「馬鹿な!?馬鹿な馬鹿な馬鹿な!?《神剣の聖騎士》だと!?有り得ない、貴様が本当にかの英雄だとして、それを召喚するだけの力は今の戦女神に残っている筈がない!」


―――それを認めようとはしない者も居る、敵として相対している邪人族の男からすればアヤメとは比べ物にならない程の大英雄が召喚された事など決して認められるものではないからだ


「ふむ、貴様がそう思うのも当然であろう。事実、私の今の力はかつての全盛期の力には及ばない。以前の冒険の記憶も大半が無い。だが、こうして人々の平穏を乱そうとしている者達が存在する以上、私が出てこない理由にはならぬ」


勿論の事ながらそのような事情など奏多は知らない、だから今の言葉は全てはったりである


だが如何にも真実であるかのように告げられた言葉に邪人族の男は納得していた


「そうか、力を落とし召喚する事で……だが、それならば恐れる事はありませんね。力を取り戻しきる前に、此処で始末してしまえば良いのですから!やりなさい、アヤメ!!」


先程奏多が斬られた事から、奏多の能力は現状ではアヤメより劣っていると判断した邪人族の男は勝機を見出だした為に笑みを浮かべる


そしてアヤメをけしかけるが、それに対して奏多も同じように前に出る


強力な結界の中から出てくるという事を愚行だと思う邪人族の男、また同じようにアヤメが斬り伏せて終わりだとほくそ笑む


だが先程のように奏多が何も出来ずに斬られるような事にはならなかった、聖王剣イクスカリバーンを振るうとアヤメの持つ刀と打ち合い、斬り返しの一撃は盾で防ぐ


全く反応出来なかった先程とは違い、明らかに攻撃に対して反応出来ている時点で違いがあった


「《ストレングス・エンチャント》、《アジリティ・エンチャント》、《バイタリティ・エンチャント》」


加えて奏多が自身に対して支援魔法(バフ)を使用する事で更に能力が上がる、元の能力からすれば一割程の強化が施された事でスピードではアヤメと同等になり、元から勝っていた筋力が更に引き伸ばされる


そうなるとアヤメには打つ手がなくなる、元より速度と刀の切れ味を活かし敵を倒すアヤメはより速度を得る為に防御を捨てている為に一撃でも直撃を受ければ危険だ


加えて鬼人族としての身体能力の高さがあったが、奏多はより上を行った


それは身に纏っている鎧、聖鎧ウィガールが着用者の能力を素の状態から二割程上昇させるからであり、魔法による強化も含めると現時点で三割増しの能力を発揮している


そんな強化された能力により捉えられなかったアヤメの刀に反応し、時には反撃を差し込めるようになった奏多はじっとアヤメを観察する


剣で弾き、逸らし、盾で受け流しながらアヤメの動きを注視していた奏多は、唐突に盾をその場に落とす


操られて表情の変化しないアヤメは兎も角、邪人族の男を始めとして周囲の人間はその事を怪訝に思う


だがそんな周囲の反応を気にも留めない奏多は右手に持つ聖王剣イクスカリバーンを両手で握ると再びアヤメと打ち合う


普通であれば剣と盾で防いでいたところを剣一本で防げるかと思うが、両手で握る事で剣速が増した為に奏多は凌いでいく


そうすると何度も打ち合った末にアヤメの集中が一瞬だけ途切れた瞬間を逃さず、奏多は攻めに転じて突きを放つが、それはアヤメが大きく後ろへと跳んだ事で空を斬る


アヤメが乱れた息を整えるが、その隙に奏多は右手を天へと掲げ、詠唱を紡ぐ


「《エリネドの指輪》よ、我が魔力の半分を此処に捧ぐ。その力を以て、我に敵を討ち果たす加護を!」


そう述べた瞬間、掲げられた右手、その人差し指から光が放たれ、奏多の身を赤色のオーラが包む


それは奏多がゲームにて保有していたアイテムの一つである《エリネドの指輪》と呼ばれる代物であった


効果時間は一分と短めだが消費した魔力の割合に応じて所有者の物理ステータスを強化するという能力を持っている


そして総魔力量の五割を対価として支払った奏多は、その分の魔力が一時間は絶対に回復しなくなる代わりに素の状態から二倍の身体能力が発揮出来るようにブーストが掛かる


元から付与していた支援魔法や鎧の能力を併せれば2.3倍の強化が施された事になる


使いどころを誤れば後の戦いが不利になるという能力だけに機を狙っていた奏多の切り札、それが今切られたのだ


そしてその強化された速さは、強化前で拮抗していたアヤメを遥かに上回るものであった


「《紫電一閃》!」


雷を纏い長距離を素早く駆け抜け突きを放つ技である《雷光一閃》、今奏多が放った《紫電一閃》その上位互換のスキルである


動きは全く同じで威力が上がったスキル、名前の通りに紫色の稲妻が荒れ狂う剣を構え、奏多が地を蹴る


まさに神速とも呼べる速度で駆け抜けた奏多の姿は殆んどの人間に捉える事は出来なかった、奏多自身がまるで雷光のようになった一撃は違わずアヤメの腹部を深々と貫いたのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ