傭兵としてではなく、騎士として
久し振りだからか書き方が……所々変になってるかもしれませんがよろしくお願いします
今必要なのは即座に行動を起こす事であり、遅れれば遅れるだけ致命的なものとなる
まずは都市への情報の伝令、それもより信憑性があり速度を求められる
「指揮官殿、現在の状況を記した文を素早くしたためて欲しい。それと、旗も」
「わ、分かった。だが何を?」
「防衛戦を行う。それと増援の要請も」
その為の伝令として送るのは決まっている、馬には劣るかもしれないが人間よりも速い存在に任せる
俺はそれが出来ると信じている、頭は良いからな
「お前に手紙を託す。いけるな、シャルロット」
「ワフゥ……」
「お願いするわ、シャルロット。皆を助ける為なの」
「ガウッ!」
という訳でシャルロットに走って貰って素早く都市へ手紙を届けようと思ったのだが俺の指示は聞かないで瑠璃の指示には素直に従っていた
犬科動物は順位をつけるっていうが、その内どっちが上かちゃんと教え込まないとな
「ハイムラ殿、これで良いか?」
「十分です。後はこれをシャルロットに身に付けさせて、と」
手紙の内容は簡潔に此方の戦力と状況、方針を書いただけの簡単な物ではあるがそれだけに分かりやすい
そして用意して貰った旗だがシャルロットにマントのように羽織らせる、これで魔物が接近してきても都市の衛兵から攻撃される可能性が少しでも減らせるだろう
手紙は首輪に括りつけておいたので落とす心配もない、なので俺はシャルロットに最後の念押しをした
「良いな、都市まで行ってこの手紙を衛兵に届けるんだ。だがお前は魔物だ、人に危害を加える心配はしていないが衛兵からの攻撃を受ける可能性はある。それでもやってくれるか?」
「ガウッ、ガウッ!」
「やるって言ってるわ。任せて大丈夫そうよ」
「なら頼んだ。よし、行け!」
「ガウッ!」
瑠璃の通訳を交えて意思の疎通を行いシャルロットを送り出す
人間が走るよりは早く伝令が届くだろう、そこから援軍が編成を終えるなりして馬で急行するとなれば一時間は見ておいた方がいい、それが到着するまで凌ぎきる事が俺達の目標となる
「これで増援の目処は立った。後は防衛戦力か」
救援の当てがない籠城戦ほど絶望的なものはない、だがこうして正確な連絡が届けば俺達が持ちこたえていると見て増援を送ってくれるだろう
だが根本的に俺達が持ちこたえられなければならない、その為にオーガを相手に出来るような人間を集めなければ
という訳で一度探索者達が集まっているところまで戻る、良かったまだ冷静さを保っているようだ
「あ、カナタ!どうだった!?何があったんだ」
「答える前に、全員覚悟を決めて欲しい。今から言うことは絶対に他言無用だ。もしこれが一般人の耳に入ればストラスフォードは、世界は大きな混乱を生む事になる。それを墓まで持っていく覚悟がある者だけ聞け。覚悟がない者は離れろ、絶対に聞こえない位置まで」
離れる者は……ゼロか、覚悟が出来ているのか、それともそんなに真剣に受け止めていないのかは分からないが、離れないのであれば話す他あるまい
「現在、詰所に保管してあった塗料を何者かが強奪、《魔の行軍》を報せる為の狼煙が上げられない状態になっている。先程伝令を走らせたが増援の到着までの時間は格段に長くなる。オーガを相手に一時間以上、堪え忍ぶ必要があるんだ」
取り敢えず話せるところは話す、勘が良い人間なら今の話で違和感を覚えるだろうが、隠しておく
無闇に『塗料を強奪した者は《魔の行軍》が起きる事を知っていた。今回の《魔の行軍》は人為的に引き起こされた物なのでは?』という情報を流す必要はないからな
しかしそれでも増援が遅れる、その間は俺達だけでオーガを食い止めなければならないという事実に誰もが浮き足立つ
その中にはオーガを相手にするなんて技量が足りない者も少なからず居る、そんな彼等の表情は既に絶望に染まっていた、それはパオロ達も同様だ
だが俺はそんな彼等をむざむざと死に追いやるつもりはない
「だから強制はしない。オーガを相手にするのに不安がある者、《魔の行軍》を相手にするのを恐れる者は去れ。誰も責めはしない。無駄に命を散らす必要もない。だから選べ、俺と共にオーガを食い止めるか、此処を去るのかを」
「お、オレは逃げるぞ!?オークでさえやっとなんだ、オオオオーガなんて相手にしてられるか!」
選択肢は二つある、当然だがオーガは物理に高い能力を持つ危険な魔物である、少なくとも中級レベルの探索者が相手にするには分が悪い相手だ
だから一人の探索者が怯えて逃げようとしても俺はそれを責めたりなんてしない、誰もが己の命を大事にする権利はあるのだから
「ああ、それでも良い。だが一つだけ、俺からの頼みを聞いて欲しい」
「な、何だよ……」
「この近隣の三つ農村、そこに寄って都市への避難を呼び掛けて欲しい。万が一、俺達が敗れても何の罪もない人達が巻き込まれないように。その後は彼等の護衛として共に都市へ向かってくれ。頼む」
逃げるという男に、せめてと頭を下げて頼み込む
俺だって死ぬ気はない、だが世の中に絶対なんて言葉はそうそうない
常に最悪を想定して動く、そうでなければ戦いを生き抜く事など出来はしないさ
「何だよ……何でそんな事が出来るんだよ!?死ぬかもしれねえんだぞ!?なのに、何で……頭がイカれてるんじゃねえのか!?」
「別に死ぬつもりはないさ。だが動かなければ誰も助からない。誰かがやるしかないんだ。ならやれる奴がやる。俺でも足止め程度は出来る。それにな―――」
そうだとも、誰かがやらねばならない
それは凡人では無理だ、かといって俺は最強だと自惚れてもいない、でもゲーム時代に培った経験を活かして周りの人間を鼓舞し指揮をする事は出来る
絶対に失敗の出来ない状況、一手でも間違えれば命を落とす事は分かりきっている
けどな、それがどうした?ストラスフォードでは俺の知り合いとなった人達が暮らしている、城壁があるとはいえオーガという強力な魔物に攻められれば突破されるかもしれない、それにより彼等が殺されるかもしれない
ならそうならない為に命を懸けるなんて当然だ
だから俺は逃げようとする男だけでなく、全員に聞こえるように言った
「お伽噺の英雄みたいになりたいなんて、探索者やってるなら一度くらい思った事があるだろう?」
正直、此処で死に物狂いで敵を食い止めて、終わってから満足な報酬が出るなんて限らない、探索者が魔物と戦うのは金の為に依頼を請けてが大半だからな
けど、それだけだと傭兵だからな、探索者なんて言うが冒険するのも仕事の一つだ
なら俺も砲弾や裏切りの横行する荒野を駆ける傭兵操者ではなく、剣を握り仲間を率いて駆けた聖騎士として戦っても良いじゃないか
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名前:灰村 奏多
職業:傭兵操者→聖騎士
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