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魔の行軍

時折リロードを挟みつつ、銃弾によるオークの迎撃は順調に進んでいた


鎧を着ていようが貫通し、楯を構えようと空いている足を撃ち、崩れ落ちたところで頭を撃ち抜く、近付く事さえ許さない銃撃により弾詰まりというアクシデント以外で瑠璃の手を借りる必要もなかった


愚直にも突撃一辺倒なオークの動きが変わったのは、もう何百のオークを倒したかも分からなくなり、ひょっとしたら既に千は超える数を倒したんじゃないかと思い始めた時だ


物陰に身を潜め此方を窺うような動きになり、階段を上ろうとするオークはいなくなった


魔の行軍(スタンピード)》が起きた時、魔物は破壊衝動が強くなり、普段よりも凶暴化しより攻撃的になる


なので直ぐ横で仲間が倒れようとも怯む事もなく突撃してくるのだが、此処で理性あるような動きが見えたという事は指揮に長けた個体が出てきたという事だ


考えられるのはオークの指揮官的な個体、オーク・ロードだろう


通常は第二十層に出てくるボスであるが、《魔の行軍》ではボスも部屋から出て地上を目指す為、こうして現れたのだろう


オーク・ロード自体の姿は見えないが統率のとれた動きをしている事から間違いない、確実に奥で指揮を執っている筈だ


だが直ぐには攻めてこないのであれば余裕が出来る、俺は端末を開き《簡易ショップ》で装備を増やしていく


そして銃という武器の特性を理解したのかオークが動き出したが、その動きはかなり遅い


というのも楯を何枚か重ねたようで、それを前面に押し出して銃弾を防ごうというのだろう、確かに厚さ数十センチともなれば小銃では抜けないからな


なので、その楯の上を通り越す形で追加購入していたM67破片手榴弾を投げ入れて爆殺してやった


前面への防御は厚くとも、後方への守りは無かったオーク達は爆発により高速で飛来した破片を全身に受け絶命していく


楯を構えてた個体は他のオークにより手榴弾の威力が抑えられていた為に生き残っていたが、背後からの衝撃により重い楯を持っていた事もあり前のめりに倒れていた


必死に起き上がろうとしていたが銃弾を撃ち込んで仕留め、塵に変えていく


「やっぱり近代兵器って強いわね」


「使用は自制してるけど、いざとなればな。それでも全部の敵に通じる訳でもないし、やっぱり生身で戦える必要はあるな」


取り敢えず見える範囲では生きている個体は殲滅した訳だが、まだ死角になっているところに生き残りが居るかもしれない為、油断は出来ない


今なら向こうもダメージを受けているだろうから確認の為に向かうとするか


「俺は一度降りてくる。何かあったら地上まで戻れ。良いか?」


「絶対に無事に戻るなら分かったわ」


「了解。危なくなったら直ぐに戻る」


もしも俺が不意討ちを受けたりした時の為に瑠璃に今後の動きを伝えたが、きっぱりとした言葉で返された為に俺も約束をした


この様子だと俺が逃げろと言っても頑として逃げようとはしないだろう、だから俺も確認より生存を優先する事にする


MK17はスリングを使って背後に背負い、左腰に吊っている星剣エトワールの柄に手を掛けてゆっくりと降りる


生き残りの気配も、更なる増援の気配も感じられない中で、階段を全て降りるところで微かな呼吸音が聞こえてきた


階段の左右に潜んでいない事を確認してからその呼吸音を調べてみると、部屋の隅にはボロボロとなった他のオークより灰色の肌を持つ大柄な個体が見えた


王冠らしき物を装備している頭を見てもこの個体がオーク・ロードだという事は確実だろう


他に生きている個体は居ない、残っているオーク・ロードも既に手負いで身動きすら取れない状態である


俺は腰から星剣を抜き、その首に刃を突き立てて完全に止めを差した


残ったのは大きめの魔核と宝石が幾つか埋め込まれた王冠のみ、肉体の方は塵へと変わり後には他に何も残らなかった


こうしてオークを殲滅させた俺は周囲を見渡し、良さそうな物だけを手に一度階段上に戻った


ミスリル製の武具に魔核、なによりもオーク・ロードの王冠が成果といったところだろう


この王冠はオーク・ロードのドロップ品であり、それなりに討伐されているから値段は多少下がるが宝石等は本物だ、地上でもそれなりに高値で売れる


通常は武具が残る為、稀に残る事のあるレアドロップといったところらしいが、思わぬ臨時収入だな


とはいえ、この事態を乗り越えなければ換金も出来ない訳だが


「どうだったの?」


「殆んど全滅してた。生き残りも虫の息、止めを差して戻ってきたとかろだ」


「そう、何もなくて良かったわ」


「まあな。だが直ぐにオーガが来る、それに一当てしたら地上に戻るぞ。上の様子も気になるからな」


重ねて言うが今の目的は《魔の行軍》を防ぐ事であり、今までの戦闘も地上へ魔物が向かう事を遅らせる為だ


なので地上が全滅していたら元も子もない、それなりに時間も経っている事から一度は戦況の確認に向かう必要がある


そして丁度良い事に、そのオーガもやってきたらしい


足音の数から一体のようだが、オークよりも更に重厚な足音が近付いてきている


階段の上に陣取り、同じように銃撃する体勢で待ち構えてると、その姿が現れた


オークより巨体であり、三メートルは超える体躯はこれでもかと言う程に筋肉で盛り上がり、紺色の肌を持ち頭には鋭い角が二本生えている


その手には鉄の棒が握られており、そこから繰り出される打撃の威力など、まともに受ければ体が引き千切られてしまうだろう


「グウゥゥ、ニンゲン、コロスッ!」


「しゃ、喋った!?」


「知能はそれなりにあるらしいからな。魔王領では人間と取引をする集落もあるらしい」


とはいえそれは稀少な例であり、基本的には凶暴で人を食らう魔物には変わりなく、おまけにダンジョン産まれなので他の生物に対する殺意が高い


一応、オーガに関しても事前に情報は集めてきている、今回はその情報と実際に戦ってみての差異を確認する為の戦闘なので無理はしない


なのでMK17のセレクターをフルオートに合わせて引き金を引く、弾倉内の二十発全てが発射されてオーガの全身を打ちのめす


だが貫通はしていない、刺さってはいるが深くまでは届かなかったようでダメージはあるが仕留めきれてはいなかった


更に傷口から体内に潜り込んでいた銃弾が排出され、その傷も直ぐに塞がっていく


「やっぱり銃は効かないか……」


事前に読んだ資料によるとオーガという魔物は物理的な物に特化した魔物らしい


高い身体能力による肉体や武器を使った破壊力、先程のように銃弾さえも通さない体自体の防御力、そして受けた傷を即座に回復してしまう生命力だ


その為、完全に物理特化で並みの兵士では相手にならない、それ単体でBランクの魔物として認定されている


尤も、それはオーガの物理的な面を見ただけの話であり、明確な弱点というのも存在している


「瑠璃、ちょっと頼んだ。軽めの一撃で大丈夫だと思う」


「わ、分かったわ。《ファイア・ランス》!」


俺は銃を全て仕舞いつつ、瑠璃に魔法でオーガを攻撃して貰った


瑠璃が放つ炎の槍は真っ直ぐにオーガへと迫り、オーガが防御へと伸ばした腕を焼き付くしながらもその胸に刺さり貫通する


心臓を失ったオーガはダンジョンの魔物と同様に塵に変わっていき、後には鉄の棒と大きめの魔核のみが残る


「ねえ、オーガって銃を耐えたのにあんなに簡単に倒せるものなの?」


「オーガは物理一辺倒になり、強大な力を得たんだが、代償として魔法に対して著しく耐性が低いんだ。そして、魔法を武器に付与したりすれば―――」


オーガを倒したタイミングで新たに二体が追加されたが、俺は星剣エトワールを抜いて階段を駆け下りた


二体のオーガは俺を見付けると殺意を剥き出しにして武器を振り下ろしてくるが当たる前に横に回避、壁を蹴ってオーガの首の高さまで跳び上がりその首を断った


「―――こうして一太刀で倒せる」


星剣エトワールは聖剣として光属性の上位である聖属性を持っている、常に魔法を刀身に纏っており、オーガにとって天敵とも言える武器なのだ


このようにオーガとの戦闘では魔法が非常に重要となる、資料で見た情報通りである事を確認した俺は再び上に戻り、地上に上がる準備をする事にした


「さて、これから地上に戻る訳だが準備は良いか?」


「ええ、カナと一緒ならいつでも良いわよ。銃の痕跡も回収したし、私達の出番は殆んど無かったもの。シャルロットも大丈夫ね?」


「ガウッ!」


今の今まで出番らしい出番が無かったシャルロットだが、今度こそと意気込んでいるのか元気良く吠えた


まあ敵が来る前に俺が仕留めて、瑠璃が広範囲を火力で焼き尽くしたからな


オーガの相手は正直荷が重いとは思うんだが、モチベーションは十分なのは良いことか


俺は《転移台》を操作し、地上への帰還を進める


操作方法は《転移台》に書かれている、台座に置かれている水晶に触れて転移する場所を思い浮かべ、誰かが念じるか、口頭で口にするだけだ


「転移」


複数人の場合は口頭で起動した方がタイミングを掴みやすい為、俺が《転移台》を起動させた


すると一瞬にして視界が真っ白に変わり、体感で数秒の時を経て感じていた浮遊感が終わり視界が切り替わる


そこは先程までの部屋に似ているが階段はなく、一つの扉があるだけだった


そして、その扉の向こう側からは多数の怒号や金属音が聞こえてくる事から間違いなく地上までの転移に成功した事になる


しかしその事を実感するよりも先に俺達は扉の向こう側へと進み、今の地上の様子を確認した


そこには百を超える数のゴブリンが(ひし)めいており、それらの中央には多数の人間が武器を構えてゴブリンに応戦していた


「あ、カナ、あれって……」


「……あまり見ない方が良い。俺達にはやるべき事があるんだ」


他にもゴブリンの包囲の外には破壊された馬車があり、その近くには人が何人も倒れている


その体には何本もの武器が突き立てられたままになっている事から既に手遅れであろう事が伺えた


だがこれ以上の犠牲を出さない為にも、俺は聖槍アキレウスと星剣エトワールを手に駆ける


「オオオォォォォォォォォォォッ!!」


「ゴブッ!?」

「ゴブ、ゴブブッ!」


敵の注意を惹き付け、更に相手との力量の差が大きい格下であれば逃走させる程の気迫を放つスキルである《ウォー・クライ》を発動、包囲の外からの攻撃をゴブリンに印象付け、同時に残っている味方へは援軍が到着した事を知らせる


ゴブリン達は俺の存在に気づくがその反応には差があった、武器を構えて迎え撃とうとするもの、背を向けて逃げ出そうとするもの、およそ半分ずつに別れたゴブリン達だが双方が入り乱れる


それにより組織的に動く事が出来なくなったゴブリン達に向け、俺は更にスキルを使用していく


「槍よ、汝は雷光、汝は鏃、我が進軍の先駆けよ。討ち果たすは魑魅魍魎、一番槍の栄誉を胸に、我が後に勇士が続く。討ち抜け!秘奥技、《貫き破れ(ピアーシング)我が魔槍(・ゲイボルグ)》!」


俺は詠唱完了と共に光を放つ聖槍アキレウスを天に向けて投擲した


槍は空気を切り裂いて空を駆けると、上空で一際大きな光を放った後、無数の光に別れ地上へと降りてくる


そしてその光がいよいよ地上へと近付いてくる頃、それぞれの光が何を形作っているのか判別がつく


その光は一つ一つが聖槍アキレウスと寸分違わず同じ形状をしていた


だがゴブリンがその事を判別出来たとしても既に意味を為さないだろう、空から降り注いだ槍は次の瞬間には全て地上に居た無数のゴブリンに突き刺さったのだから

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