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陽葵の活動 3

一先ずアウロラから勧められた為、陽葵はテーブルに着く


多少の警戒はしているが直接戦闘では陽葵の方が上である為、警戒し過ぎているという事はないが様々な魔法道具の存在を想定しての事だ


アウロラが楽しげにお茶を淹れて陽葵に差し出し、自らも席に着いたてころで会話が始まった


「改めてお話する前に、まずはエンドウ様の疑問にお答えしようと思います。何からお訊きしたいですか?」


「お姫様の目的、ッスかね。その中でもこの部屋が存在する理由とか気になるッスよ」


「成る程、分かりました。まずこの部屋ですが、私が小さい頃から作っていた秘密基地です。私は固有魔法を持っているのですが、それは動植物との意志疎通です。ですのでこの世界樹の若木にお願いして作って貰いました」


「固有魔法……図書室の本に書いてあったのは見たッスけど、本当にあったんッスね……」


固有魔法とはその名の通り、個人で稀に獲得している特殊な魔法の事である


血筋などで受け継がれる事もない突然変異的に発現するそれは陽葵も図書室で色々と魔法について調べている時に知っていた


過去にはテレポートやサイコキネシスのような使える魔法もあれば、自らの体重のみ超重量化させるといった変わった魔法も存在していたりする


なおアウロラの固有魔法は自らの魔力を声に乗せ、相手の魔力を感じ取る事で意思の疎通を行うというものである


「そしてこの部屋ですが、見ての通り城の宝物庫から持ち出した魔法道具等を溜め込んであります。一応、ダミーが置かれてはいますが本物は此処に、といった具合ですね」


「お姫様が勝手に持ち出してる、って訳じゃなさそうッスね。それならダミーなんて用意するのも簡単じゃない筈ッスから」


「その通りです。御兄様や王族派の貴族と共に、少しずつ持ち出して来ました。理由はお分かりになりますか?」


「いや、流石にそこまでは情報が足りてないッスよ。けど、王族派って言ったところを見るに派閥争いの為ッスか?」


「はい、正解です。御父様が病床に伏せっていなければ王族派は大きな勢力となります。しかし、王の不在という状態を利用し、私腹を肥やそうとする貴族達の専横、それが今の王国の現状です」


「数で劣る王族派はそれを魔法道具でカバーしようとしている。そんな理由ッスか?」


会話を続けていると陽葵がある程度、会話の中の情報から推測している事にアウロラは笑みを浮かべていく


そんなアウロラに対して陽葵もまた不敵な笑みを浮かべ応えている


「エンドウ様は聡明な方の様ですね。他の勇者様方とは違います」


「似たような物語を読んだ事があるだけッスよ。それにしても、何気にサラッと他の勇者をディスってるッスね」


「申し訳ございません。ですが、宰相達の言葉に踊らされ、自らの思考を放棄した方々を見るとつい、そう思ってしまうのです」


清純そうな顔をして平然と毒を吐く、その様子に苦笑しつつ陽葵は会話を続けた


「ふふん、褒めても何も出ないッスよ。とはいえ、ウチよりはセンパイの方が上手ッスけどね。こういった政治的、戦略的、戦術的な話はセンパイの方が得意な筈ッスよ」


「お話は聞いております。召喚の日、愛する者の為に教会と対立し、その日の内に消えた、勇者ではない者ですよね?他の勇者様方にも部下がお訊きしていますが、聞けば聞く程に正体がハッキリしないのです」


「へぇ、因みにどんな内容だったんッスか?」


だがそんな中、話題が奏多へと移っていくと陽葵は露骨に興味を持った


そんな陽葵に対し、今度はアウロラの方が苦笑しつつも話を続ける


「基本的には『根暗』『オタク』『廃人』『コミュ障』といった内容ですね。オタクや廃人といった内容はよく分かりませんが、これだと非常に内向的な方だと思えます」


「まあ、間違ってはいないッスね。内向的っていうのは兎も角」


「ええ、次に出たのが『喧嘩に強い』『不良』『悪人』といった意見です。しかし、これは前述の意見と矛盾します。内向的にも関わらず喧嘩等の実力行使を得意とする。また『悪人』という意見に対し、王国の民を救うという行為、実際に見ない事にはどのような人間なのか判断のしようがありません」


「あー、それは納得ッスね。どれも正解ッス」


「ではエンドウ様から見た評価はどのようなものなのですか?」


アウロラの問いに陽葵は少しだけ考え込むが、頭の中で纏めると答えを出す


「センパイは誤解されやすいけど、根っこのところは善人ッスよ。根暗とか言われてるのは単に興味がない対象にはとことん覇気がないだけッス。逆に、興味のある対象にはかなり情熱を注ぐタイプッスね。うーん、ゲームって何か分かるッスか?」


「札や盤上での遊戯の事ですか?」


「似てるけど違うッスねえ。上手く言えないッスけど、この世界みたいに剣や魔法がある世界とか色々な世界に渡って冒険する、そんな道具があったんッスよ。当然、そこで死んでも現実で死ぬ訳じゃないッスけど、大多数の人間がその世界で腕を競ってたッス。センパイはその中でも《聖騎士》として上位十人の内の一人として君臨してた程に努力を積み重ねてたッスね」


「エンドウ様達の世界には魔法が存在せず、剣や槍といった武器も既に廃れてしまったのですよね?つまり、その方が召喚されて間もないにも関わらず剣を扱い、魔法に反応してみせたのは、その別の世界での経験があったから、という事ですか?」


「その通りッス」


アウロラもまた宰相と同じく奏多に関する報告は受けており、何故剣を扱った事のない筈の奏多が即座に対応して見せたのか疑問に残っていた


少なくとも過去に呼ばれた勇者は最初まともに剣を振るう事も魔法を放つ事も出来なかった、そもそもが戦いのように命をかけたやり取りをした事がないという者が大半であった


勇者召喚の魔方陣は女神より人間に与えられた物であり、強大な魔物や悪逆無道な権力者による他国の侵攻等に対する切り札として各女神を信仰する者達に預けられた力である


アウロラは今回の勇者召喚の理由を知っているだけに陽葵達に対する後ろめたさを感じているが、それだけに勇者ではない存在も一緒に召喚されている事にも驚いていたのだ


しかもその者は他の勇者とは違い最初から戦う術を持っているともなれば正規の手順を踏まない今回の勇者召喚に対する女神からの布石ではないか、そう考えていた


「そのような方が味方となって下されば心強い事なのですが……」


「王国内の派閥争い、ウチ等が本当は魔王討伐なんて目的の為に呼ばれた訳じゃないって事はうっすらと気付いてるッスよ。本当は派閥争いに利用する為、とかじゃないッスか?」


「本当にエンドウ様は聡明ですね。そこまでお調べになられたのでしたら隠す理由もございません」


「そうッスよねえ。王派閥、宰相派閥、軍閥、教会派閥の四勢力ッスか?この国、乱れすぎッスよ」


「返す言葉もありません……」


陽葵は今までの調査や先程の宰相の話を盗み聞きしていた事から王国内には四つの派閥が存在する事は知っていた


そして人類の敵だとか絶対悪だとか教えられている魔王がいつまでも侵攻を始めない事の違和感、それらの手掛かりから自分達の勇者召喚が各勢力の派閥争いの道具てしてではないかという可能性も考慮していた


恐らく今は宰相も軍も教会も勇者達を育てる事に注力し、表向きは協力しているだけに過ぎないのだろう


本格的に戦力となってきた辺りで各派閥に取り込む為の工作を始める、そう睨んでいた


唯一、王族派のみは勇者召喚にも反対していたのであろうが中心たる王を欠き、数に押し切られてしまったという事も予想出来る


その事を陽葵はアウロラに話してみると、全て合っているという答えが返ってきた


「ハァ、各派閥の戦力って今は拮抗してるッスか?」


「はい、その、私達以外は、ですが……」


「因みに、戦力の内訳は?」


「宰相派は別名貴族派とも呼ばれますので、貴族出身者の多い騎士団や各貴族が保有する私兵団を。軍派閥はそのまま国軍を。これは職業軍人のみで、徴兵は行われていません。そして教会ですが、独自に騎士や神官で構成された神聖騎士団を有しています」


「で、王族派は?」


「近衛騎士団約三十名と派閥の貴族の私兵団数百名です……」


「近衛の質はともかく、私兵団はあまり当てにならないッスね。各領地に居る筈だし、途中敵対派閥の領地があれば孤立するしかないッスからね、裏切りも予想されるッス」


「あぅ……」


更にはアウロラより伝えられた各派閥の戦力バランス、その中でも王族派の戦力の少なさを一刀両断に評価され、当初の余裕もなくアウロラは少しばかり涙目になっていた


これで勇者がそれぞれの派閥に取り込まれればその戦力差は絶望的になる、現状でも既に王族派は風前の灯ではあるのだが


「仕方ないッスね。じゃあ、先んじてウチはお姫様に味方するって決めとくッスよ」


「えっ?」


「不満ッスか?ステータスしか見ない馬鹿ばかりッスけど、現状勇者の中で最強のウチが力を貸すって言ってるんッスよ?」


「いえ、不満なんてありません!ですが、宜しいのですか?先程のように、私達の派閥は最弱ですよ?いざという時、エンドウ様の身にも危険が及びます」


「けど一番ウチ等を人間扱いしてくれるッス。他の派閥に入ったとして、どういう扱いされるか分からないッスからね。例えば、首輪に爆弾取り付けられて奴隷のように扱われるとか有り得る話ッスから、リスクが高いのは何処も同じッスよ」


「確かに、帝国等の奴隷制が取り入れられている国ではそのような首輪型の魔法道具が出回っているという事を聞いております。古代文明に於ける犯罪者を拘束する為の首輪を解析、量産して転用したという話でしたが」


「やっぱりあるんッスね。ならお姫様についた方が安全ッス」


「ですが、私達が同じような真似をするとは思わなかったのですか?」


「本当にするつもりなら、そんな情報をウチに教えたりしないッスよ。まあ裏切られたら、その時はその時ッスね。タダでは済まさないっていう自信があるッスから」


そういう陽葵の顔は今までとは違いとても冷えた表情をしていた


アウロラの情報の中にある陽葵は勇者の中ではステータス上、桐生に続き次点に当たる、最年少の少女というものだった


召喚された勇者ではない者、奏多に何らかの執着が見られる、という情報もあったが、アウロラはその表情で勇者の中で敵に回したら一番危険なのは陽葵であると直感で理解した


だが同時に誠実に向き合えば敵対したりはしない、それはアウロラとしても望むものであり、今後は味方となる事を約束してくれたのであればこれ程に心強い事はないという事も理解している


どのような相手なのか、部屋から覗いていた時は接触するか迷っていたアウロラだが、今は信頼も寄せていた


「では、宜しくお願い致しますね。私の事は二人きりの時はアウロラと呼んで構いません」


「ならウチも陽葵で良いッスよ。なんなら友達としても宜しくッス、アウロラ」


「はい!」


こうして陽葵とアウロラの間に同盟が結ばれた


またアウロラには今まで対等な友人というものが存在しなかった為、同盟相手であると共に初めての友となったのである


「んじゃあ、まあ同盟を結んだって事でウチの知らない事、知りたい事を洗いざらい吐いて貰うッスよ」


「え、ええっと、お手柔らかにお願いしますね?」


「まずは好きな男性のタイプ辺りから訊いてみるッスか?」


「あ、そういうお話なのですね?」


その日はそうしてとりとめもない会話をしながら時間が過ぎていった


後日、二人はまた共に話をする事を約束し、この部屋で待ち合わせをし、互いに情報交換等を行っていく事となる


アウロラは国を守る為に、陽葵は自らの安全や奏多達と合流するという目的の為に、お互いの目的を果たすべく歩みだしたのであった

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