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星の聖剣

武器の発注から三日、ヨーゼフが言っていた完成の日になったので朝早くから工房の方に顔を出した


なお、この三日間の間にしていた事は主に宿を引き払う準備をしていたり、試験で魔力を大量消費した事が吸血衝動のトリガーらしい瑠璃に魔眼で拘束されて血を吸われたり、稽古をつけている新人達に別れを告げたり、瑠璃に血を吸われたり、血を吸われたりだ


うん、主に血を吸われてばかりだったな、お陰で貧血気味になって少し頭がふらつく


だが何度も魔眼による魅力の拘束を受けたからか『精神系状態異常耐性』というスキルを入手していた、全く動けなかったのがなんとか動けるようになった、程度の差ではあるが


どうやら何度か状態異常を受けると耐性スキルを得るらしい、その内に無効化するようなスキルに進化するかもしれない、その内に機会があれば毒薬と解毒薬を用意してスキルが獲得出来るか試してみるか


まあそれはそれとして、今は目の前の光景に対処するとしよう、工房の扉を開けて中に入ってみればヨーゼフがアダマスのインゴットを持って頬を緩ませていた


夢の金属を手に入れた事で気持ちが緩むのは分からなくもないが普段は無愛想でムスッとした顔をしているオッサンがだらしない顔をしているのは正直気持ち悪い


「ご注文の品は昨日の内に造り上げていたんですけど、そうしたら今度はずっとあんな調子なんです。多分、自分で好きなように武器を造れるとなったので妄想が止まらなくなっているんだと思います」


「そうか……あれ、使い物になるのか?」


「それが現実に戻すには少し強めの刺激が必要で……ちょっと待って貰えますか?」


しかし完成した武器の事を聞こうにも造った本人の口から説明して貰わなければ分からない点もある、そこを懸念してマリエッタさんに確認すると、適当な剣の鞘だけを持ってヨーゼフの背後に立った


それから鞘を両手で持って振り上げると勢いよく振り下ろす


「やぁっ!」


「グオォッ!?」


鞘は中が空洞な事と女性の腕力という事でそこまで威力は出なかったとは思うが綺麗な音を立てながらヨーゼフの後頭部を強打する


かなり乱暴だが昨日から続いているという事は怪我とか諸々の心配は大丈夫なんだろう、多分


「オォォ……何だってんだ、一体?」


「ほら、カナタさん達が来たんだから、お父さんもしっかりとお仕事をしてね!」


「んん?おう、来てたのか。例の物は工房の奥だ。良く見えるように並べて置いてあるぜ。ついて来な」


少し頭を押さえていたヨーゼフだが、マリエッタさんの言葉を聞いて俺達の方を見るとけろっとした様子で奥の作業場の方へと向かっていった


「さっきの一撃の件も驚きもせず文句もないのね」


「何度もやって慣れたんだろう。それより、俺達も行くぞ」


そんなやり取りに少し呆然としていたが、ヨーゼフの後を追って俺達も作業場へと入る


今は炉に火が入っていないから暑くはない作業場の中で奥の壁にある武器を置く為のスタンドに一本の槍と三本の剣が立てられていた


そのどれもが純白であり、刃は勿論の事ながら持ち手や鍔といった武器の全てが同じ色で構成されている


「武器として完成した途端にこの色になった。全て注文の通りだ。手に取って確かめてみろ」


それらを眺めているとヨーゼフに促さたのでまずは槍を手に取る


軽い、長さは注文の通りに約三メートル程度だが羽のように軽く振るう事が出来そうだ


しかしそう感じているのは俺だけのようで地面に石突を着けたところ、体感している重さとは信じられない程の重量感のある音がした


「やっぱりな、伝承にある通りだ。伝説の金属で打たれた武具は使い手の生涯に付き従うとされている。聖剣や聖槍と呼ばれる武具は使い手と選んだ者には重さを与えないとされる。だが許可なく触れようとした者にはアダマンタイトをも上回る重さを与えるらしい。オレも造り上げた途端にその重量になったからな、動かすのに一苦労したぜ。知らずに持ち上げようとして危うく腰をやるところだった」


つまりは魔法の金属らしく、俺にとっては軽くとも実際はアダマンタイト以上の重量がある、という事か


成る程、筋力に関係なく超重量の武器を振るえるというのは計り知れないメリットだな


例えばだが銃弾の重さは拳銃弾でおよそ7から15グラム程度、であるにも関わらずあれだけの殺傷力を持つのは単純に速度があるからだ


重さがトン単位の自動車も同じ速度なら静止している壁にぶつかった時と同じくらいの速度で走ってくる対向車に正面衝突した時、衝撃が大きいのは当然ながら後者だ


つまり何が言いたいのかというと、『重量×速度=破壊力』という訳だ、この槍なら俺が全力の突きを放ったらどれだけの破壊力をもたらすのか想像もつかないな


あとは重量があるから盗難防止になるな、少なくとも武器を奪われる心配はなさそうだ


「柄から何まで全てアダマス製か。よく持てたな」


「加減してくれたんだろうよ。オレは鍛冶屋だ。使い手じゃなくて、整備する者という事でな。まあ、もしも振るおうとしたなら途端に重くなるだろう。下手するとお前さんが認められず誰も使えない武器が出来るところだったな」


「そうだな。つまり、俺はこの槍に認められたという事か。状況としては大物狩りの時に使うだろうな」


名を与えた方が良いのだろうか、そう考えているとふと名前が浮かび上がってくる


俺が考えた訳ではなく、誰かから語りかけられているかのような感覚、見れば槍の穂先が僅かに発光している


「何だ、《アキレウス》?それがお前の名か?」


まさかとは思ったが槍に語り掛けると穂先の光はより強くなった


光は少し立つと収まったが、何だったんだ?


「あ、槍の名前!今それが《アキレウス》になったわ!その前はアダマスの槍だったのに!」


「つまり、槍に意思のような物が宿っているって事か?」


するとさっきの名前を思い浮かべてきたのも槍が語り掛けて来たからと


馬鹿馬鹿しい、と一蹴するには不思議な事が起きているからな、使い手を選ぶとも言うし聖槍として自らの名を名乗ったのか?


「それにしても《アキレウス》ね。駿足として知られる大英雄の名前じゃない。アキレス腱の名前の由来ともなった英雄よ」


瑠璃の言葉にもう一度槍を見る


「その大英雄に名前負けしないようにしないとな。頼んだぞ、《アキレウス》」


再び槍の穂先が発光、どうやら槍に意思が宿っているというのは本当のところらしい


一先ず《アキレウス》は俺の能力である《アイテムインベントリ》の中に収納しておく


全部で十五あるスロットは既に銃器に弾薬で一杯になりつつあるが、残り二つの武器を仕舞っても一つ余裕はあるか


《アキレウス》から意識を切り替え、残ったのは三本の剣だが本命の一本の前に二本の剣を見るとしよう


その二本は刀身の長さは約五十センチ程度と一般的な剣に比べると短めだ


そういう風に注文したからだが理由はちゃんとある、そもそもがこの二振りの剣は双剣として対になるように造って貰った、その為に柄も俺の片手より少し長め程度しかない


《アキレウス》と同じく純白の剣は手に取ると軽かった、どうやらこの二振りの剣も俺を使い手として認めてくれたらしい


この二振りもまた重さが軽くなっているのだと思うが、持った感じは《アキレウス》とあまり変わらない


ある程度は重さを感じられないと手からすっぽ抜けてしまいそうだと思っていたから剣が応えてくれているのだろう


どちらかと言うと《アキレウス》が軽くなり過ぎているのかもしれないが、俺には調度良いくらいだ


全く同じ見た目の双子の剣、だが刀身にはそれぞれうっすらと太陽と月の紋章が浮かんでいる


そしてこの剣達もまた己の名前を訴えかけてくる


「《ヘリオス》、そして《セレーネ》が名前か」


太陽の紋章が《ヘリオス》であり月の紋章が《セレーネ》だ


「確か太陽と月の神の名前ね。双子の神でヘリオスが男神、セレーネは女神よ」


「成る程、それでか」


双剣を軽く振るうと《ヘリオス》からは火の粉が、《セレーネ》からは氷霧がそれぞれ舞う


名前と共に能力も伝えてきたからだが《ヘリオス》は炎に適性が、《セレーネ》には氷に適性があった


俺は双剣は閉所での使用を想定している、屋内等の刃を振るうスペースが少ない場所での取り回しを考慮してこの二振りも刀身が短く注文したのだが、その他にも双剣として想定している使い方がある


以前、模擬戦に於いてヴィゴールを相手に使った手だ、熱と冷気を交互に使う事で相手の剣の金属疲労を誘い武器の破壊を狙う


前は一本の剣を使っていたから自分の武器も消耗するが、双剣でならそれぞれの剣に熱と冷気を纏わせる事も出来る、自身の武器の損耗を気にせず相手の武器破壊を狙える訳だな


軽く振るった後で双剣も《アイテムインベントリ》に入れると対の武器だからか使用した枠は一つだった


そして遂には本命の一振り、バスタードソードに手をかける


それは以前まで使っていたミスリルの剣と似ているが他のアダマスの武器と同じく純白の刀身をしていた


だがこの剣には他の武器とは違った点がある、それは鍔の高さに埋め込まれた一つの宝石だ


昇級試験の後、クリス達と昼食を共にした後で別れ際にクリスから渡された物だ


名前は《星のカケラ》、アーカイブによる説明を見る限り隕石の中に含まれていた宝石、という事らしいがクリスはダンジョンの深い場所の宝箱に入っていたと言っていた


未知の素材なのか時間によって色が変わる、今は青いが時として赤や緑といった風に色が一定しないのだ


剣に埋め込んだのはクリスから武器の素材として使えると言われたからだが、魔力を宿しているのを感じ取れる


こういった魔力を宿した宝石等の素材を組み込んで造った武器は魔法剣と呼ばれるらしい


これもまた試しに手に取る、最早馴染んできた軽さを感じる点で使い手として認められたのは分かるが、今までの武器でも一番の力を感じる


見れば刃の部分にはうっすらとだが宝石と同じ青いオーラのような物が纏われていた


どうやら魔法剣としての能力のようだが、まだ剣の名前が聞こえて来ない、他の武器は初めから主張してきたのにな


試しにバイザーを使って《スキャニング》を使用してみた


すると暫く時間を必要としてから情報が表示される


星の聖剣:魔宝石である《星のカケラ》を宿した聖剣。灰村奏多の為だけに打たれた剣であり、星の力を宿しているが使い手の成長と共に開放される。銘はまだ存在しない。


どうやら他の武器とは根本的に違うらしい、試しに他の武器を《スキャニング》で調べてみたが少なくとも俺専用とは表示されなかったからな


確かにこの剣のみ事細かに注文をつけた気はするが、それが原因だろうか


尤も、俺が使うための剣だから問題ないんだが、肝心なのは銘か


名前は重要だ、名は体を表すという言葉もあるようにピッタリの名前を付けてやらなければな


こういうのは直感も大事だ、その剣から何を感じ取ったのか、何を思ったのか、それを名前にしてやろう


だから俺は一つの単語をこの剣に贈ろう、この剣の銘は―――


「エトワール、それがお前の名だ」


フランス語で星を意味する言葉、それを伝えた瞬間、剣が光を放ち、暫くして収まった


そして次にバイザーで剣を見た時、その名称が変化していた


星剣(せいけん)エトワール:魔宝石である《星のカケラ》を宿した聖剣。灰村奏多の為だけに打たれた剣であり、星の力を宿しているが使い手の成長と共に開放される。


星の聖剣、星剣となった俺の新たな相棒を構え、スペースの許す限りで剣舞を行う


剣舞といっても俺が基本的に行う剣の振り方を適当になぞっているだけだ、流派の存在しない俺の我流だからな


とはいえ剣を振るう感覚としては本当に剣を持っているのかと疑うレベルだ


重量、剣のバランス、柄の握り具合、そういった諸々が俺に合わせてあるからか元からあった体の一部、腕の延長といった感覚にはなるレベルだ


スキルを発動するには場所のスペースが足りないが、俺は十分に満足いく結果だ、一通り剣を振った後は《エトワール》だけは《アイテムインベントリ》には収納せず腰のベルトに鞘に入れて吊るす事にした

現在のアイテムインベントリの内訳

・HK45T

・.45ACP弾

・M500

・.500S&W弾

・MK17,FN SCAR-H(MK13グレネードランチャー付)

・7.62ミリ×51ミリ NATO弾(20発入り箱型マガジン)MK17用

・40ミリスモークグレネード弾(MK13用)

・M14EBR

・7.62ミリ×51ミリ NATO弾(20発入り箱型マガジン)M14EBR用

・SMAWロケットランチャー

・HEAA弾(SMAW用の対戦車弾)


※MGL-140はトレーラーの内部に放置。奏多がアサルトライフル、グレネードランチャー、ロケットランチャーの三つ持つのは嵩張るという理由からMK17の銃身下部にアンダーバレルとして設置したMK13に取って代わられた。


※新規追加

・聖槍アキレウス

・聖剣ヘリオス&セレーネ

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