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新たな剣

結果から言えば試験によって俺と瑠璃は飛び級という形になりCランクになる事が出来た


瑠璃の方は結構ギリギリだったが、俺が同じパーティーを組んでいるというのが大きかったようだ、ついでに俺は次のBランク昇級試験の時に実技試験を免除された、この街のAランク探索者の中でも最強のクリスと対抗したような奴が試験を受ける必要性がないとの事らしい


そして、試験を終えて昼になった事で何処かで適当に昼食を済ませようとして今に至る


ストラスフォードの南部、そこにある一つの大衆食堂だが今回は俺と瑠璃、そしてシャルロット以外にも二名居る、クリスとヴァネッサだ


「へぇ、つまりカナタは一番バスタードソードが使いやすいってだけで、他の武器もかなり扱えるんだね」


「ああ、基本はバスタードソードだが距離がある場合は槍、閉所なら短めにした剣の二刀流とかだな」


そんな中で俺は注文した肉料理を食べつつ、クリスと話す


共に同じ剣士として、武器の扱いや今までの冒険の話、それらを語りながら食事をしている


「つまり、君には魔法の師と呼べる存在はなく、独学であそこまでの魔法を行使していたのか?」


「ええ、そうよ。魔法だって使い始めてまだ日が浅いわ。想像力で形にして、後は元から持っている膨大な魔力に物を言わせて発動させているような物よ」


瑠璃とヴァネッサの方は魔法使いという事でお互いに扱う魔法に関する談義を行っていた


「成る程、それ故に魔力の配分を間違えて模擬戦では魔力切れを起こしたのか」


「うぐっ、それについては私も反省してるわよ……でも、あれだけの威力を乗せたのに斬れるそっちのマスターが反則みたいなものじゃない!」


「それはマスターだからな。これで本気ではないのだ。そして、本気でなかったのはそちらの相方も同じという物だろう」


そんな中でヴァネッサから痛いところを指摘された瑠璃が責任転嫁というか、矛先を変えようとしたら俺に向かってきた


「確かに本気でなかったのは事実だが、装備の関係で出せなかったの理由だ。それに俺達が本気で激突してみろ、周囲にどれだけの影響が出ると思う?」


「ふむ、確かに街中で下手に力を行使すれば簡単に焦土となるだろうな。そして、そんな真似を仕出かしたのが我がマスターなのだが」


「あ、あはは…………結果良ければ全て良し、だよね?」


「今回は何とかなったが、次はせめて人の居ない場所でやった方が良いだろうな。正直、威力過剰だ」


「あう……ごめんなさい」


「何度も言うが、俺としてはあんな激突はそう起きて欲しくはないんだが……」


ヴァネッサの言葉には、人に迷惑の掛からない場所であれば盛大にやって構わないとも取れるだけに、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった


何処か適当な荒野にでも二人で行って全力で激突するとかクリスが提案して来たらどうするか、少し戦々恐々としている


「そういえば、カナタの剣は何処で手に入れるつもり?もしよければ《円卓(タヴォラロトンダ)》と提携してる腕の良い鍛冶工房とか紹介するけど」


とはいえ俺の武器が壊れたままでは勝負は厳しい、クリスはそれを思ってか俺の剣の入手先を気にしてか訊ねてきた


確かに一流のクランと組んでるとなれば一流の職人が居る鍛冶工房となるだろう、それは魅力的な提案ではあるが俺には既に宛があった


「いや、それは嬉しいが剣は元のミスリルの剣を打った職人のところに頼むよ。適当に入った工房だったが、あの剣はそれこそ運命の出会いのような物を感じたんだ」


「へぇ、それはこの街の鍛冶師なの?なら、この後に一緒に行ってみようよ」


「残念だが、マスターは帰って溜まっている仕事の処理があるぞ。承認待ちの書類がどれだけ積み重なっている事か」


「うえぇ、それはヴァネッサの方で全部処理して良いって言ったじゃないか!」


「それは駄目だ。クランの長としてクランの内情を把握しないでどうする。ハイムラ殿、すまないがこの後は直ぐにマスターを帰す。何かあれば中央区にある《円卓(タヴォラロトンダ)》のホームを訪ねてくれ。私かマスターの名を出せば通してくれるよう、門番には話を通しておく」


「え~、もうちょっと遊びたかったのに~」


「安心しろ。また遊べるさ。今度は街を案内してくれ、まだこの街の地理には疎いんだ」


「あ、そうだね!じゃあ、それまで互いに無事でいようね!探索者は外に冒険に行くものだけど、冒険し過ぎるのは厳禁だよ」


「ああ、互いにな」


冒険し過ぎるな、つまりは危険を見極めて退くべき時は退けという事だろう


そこは探索者として例え戦闘力に長けていたとしてもお互い様というところだが、素直に受け止めておこう


下手をすれば明日には死んでいるかもしれない身だ、命を大事に慎重に行動するさ


その後、クリス達と別れた俺達は街の中を走るバスの役割をしている馬車を使い北区へと向かった


停留所で降りて大通りからは少し外れた場所にある工房、俺の剣を打った職人の居るあの店に辿り着く


つい先日、試験の為に剣を研いで貰う為にも訪れたのだが、その職人は恐らくは今日もまた炉の前で鉄を打っているだろう


「いらっしゃいませ。あ、カナタさんでしたね。今日はどうされたんですか?」


店に入って直ぐに声を掛けてきたのは眼鏡をかけた店員、ミスリルの剣を眺めていた時に声を掛けてきてくれた、この剣の製作者の娘という彼女だ


「どうもマリエッタさん。親父さんは今日も炉の方で?」


「はい、今日も今日とて鉄を打つばかりです。でも珍しいですね。確か先日にメンテナンスを依頼されたばかりではありませんでしたか?」


「それなんだが、実は―――」


俺達よりは歳上ではあるがそこまで離れていないという事もあり気さくに話せるマリエッタに今回の試験での結果を伝える


一緒に折れた剣や試験の後に発行されたCランクのギルドカードを見せると驚きつつも納得はしてくれた


「成る程、まずはおめでとうございます。こんなに早く、それも飛び級で中級探索者になるなんて思いませんでした。ウチの剣を使ってくれている探索者さんが有名になるなんて、私も鼻高々です」


マリエッタさんはそう言うが「ただ」と付け足して折れた剣の方に視線を向けると顔を曇らせる


「此処まで見事に折れてしまうと、父でも直す事は不可能ですね」


「やっぱりか……」


予想はついていた、刃が欠けたくらいなら何とかなるかもしれないがこうなると溶かして再び一から打った方が良いだろうと


とはいえこの剣は俺の手に馴染む良い剣だった、短い付き合いとはいえ再び生まれ変わらせるにしても考えがあった


「取り敢えず親父さんに話してみたい事があるんだ。今は大丈夫か?」


「はーい、少し待っていて下さいね」


マリエッタさんが工房の奥、作業場のある方に引っ込んでから少し経つと焼けた肌の男が現れる、腕は太く逞しく背も高い、髭は伸ばしっぱなしにしているから既に口髭、顎髭、もみ上げが繋がっており区別がつかない、熊みたいな印象の男がこの工房の主、ヨーゼフ・シラーニだ


「軽く話は聞いた。剣が折れたって話だったな?」


ヨーゼフは出て来て開口一番そう言った


元から口数の少ない寡黙な男だ、余計な世間話とかは必要ない


「ああ、スキルに耐えきれずにな。負荷を掛けたのは分かっていたが《竜殺し》の一撃をはね除ける為に必要な事だった」


「にわかには信じられねえが、お前さんが武器を下手に扱わねえっていうのは前に見た時に分かってるからな。放ったのはどんなスキルだったんだ?」


「剣に聖剣としての力を一時的に付与して、剣の耐久力に対する出力の制限を開放した。結果、膨大な魔力量に耐えきれず折れたんだ」


俺はヨーゼフに包み隠さずスキルの詳細を打ち明けた、そしてスキルの概要を知ったヨーゼフは口をあんぐりと開けている


見た目からは想像も出来ないような表情をしているが、少し待つと正気に戻った


「はっ!?聖剣といったか、坊主!?お前さん、聖剣がどういった代物か分かってるのか!?」


「いや、良くは知らない。ただ人の手では造れず、ダンジョンの最奥、それもかなり深い場所でないと見付からないって事くらいだ。それに、擬似的な聖剣にしても威力は本物に及ばない。耐久力無視してようやく聖剣の一撃に対抗可能ってレベルの筈だ」


威力の比較に関して聖剣を所持しているというクリスの証言からだが、大きな違いはないだろう


「その認識で大体合っている。だがそうか、そうなると新しく剣を打つにしても材料が問題だな」


「アダマンタイトなら大量のストックがある。けどアダマンタイトには一つ重要な欠点があるんだ」


「魔力を通しにくいっていう性質だな。そうだ、お前さんのようなスキル主体の戦闘を行うタイプとは相性が悪い。だからコーティングで調整するんだが、希望はあるか?」


「それに関しても一つ試したい事があるんだ。ちょっと相談に乗ってくれるか?」


「ほう、どんなのだ?話してみろ」


「アダマンタイトとミスリル、この二つを組み合わせた合金で剣を打って貰いたい」


合金、銅と鈴を混ぜ合わせた青銅などは古くとも紀元前三千年は前から存在していたとされる


鉄のみで鍛えた剣に比べ、鉄に少量の炭素を混ぜた鋼の剣には粘りがあるように、金属により有用な性質を付加させる事が出来るのだ


そして、耐久力に関しては他の追随を許さないアダマンタイトと、魔力の伝導率が高いミスリル、この二つの特性を持つ合金を作れたらそれは最高の剣の素材となるに違いない


その事をヨーゼフに伝えたんだが、その顔には曇りが見える


「坊主、それは鍛冶を志す人間なら一度は通る道だ。けどな、誰も合金の作成に成功した人間はいねえ。夢の金属とされてるんだ、それは」


「その夢を現実にする手段があるとしたらどうする?」


「何?」


「アダマンタイト、ミスリル、そしてもう一つの材料が揃えば合金は出来るんだ」


剣が折れた後、剣の《アイテムインベントリ》での扱いはミスリル鋼材となった


そして今までに入手した事のある素材からアーカイブに解放されたらしい隠しレシピ、それがアダマンタイトとミスリルの合金だ


「俺が依頼するのはその合金と特殊な宝石を組み込んだ剣、そして同じ合金で鍛えた槍と双剣だ。報酬はその三つを除いて剣にして十本分の合金、それでどうだ?」


「ふむ、成る程な。未知の合金、そしてそれを使った武器か。良いだろう、そんな面白そうな話を前に退くような奴は鍛冶師じゃねえ。坊主、その話、このヨーゼフ・シラーニが乗った!」


「ああ、よろしく頼む」


受けるという確信はあった、ヨーゼフは鍛冶師だ、誰も見た事のない新たな合金、それも鍛冶師にとって夢だというアダマンタイトとミスリルの合金ともなれば一度は挑戦したいと思うだろう


とはいえ俺は材料を知っているだけで合金にする事は出来ない、そこは別の手段をとる事になる


「そんな訳で瑠璃、合金の作成は任せた」


錬金術を使える瑠璃に頼むしかない、話に入れずともシャルロットを撫でていた瑠璃は俺の言葉を予想していたのか、仕方ないといった様子で立ち上がると大鍋を展開する


「そうだと思ってたわよ。それで、材料はどうすれば良いの?」


「その前に一つだけ伝えないとならない事があるんだ。材料は三つ分かっているが、その比率が分からない。手探りで適切な比率を探していく事になるが、大丈夫か?」


「分かったわ。どちらにせよ、カナの武器にするなら並みの武器じゃ足りないものね。そのくらい、付き合ってあげるわ」


そういって微笑む瑠璃に感謝しつつ、俺は材料を伝える


隠しレシピに記されていた合金、詳細は不明であり本当に剣になるのかは分からない、だが初めは表示されていなかったレシピを信じて俺は瑠璃とヨーゼフ、その二人に託すしかなかったのだった

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