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異世界召喚の傭兵操者《マーシナリー・ランナー》  作者: RABE
第二章 流星《メテオール》
33/72

告白 / 勇者達の今 4

「朝か……」


吸血鬼としての本能からか瑠璃に襲われた後、一人悶々とした夜を過ごしていた俺は結局あれから一睡も出来ずに夜明けを迎えてしまった


窓の外が白く染まっていく中で、首だけを向けて確認した俺は、しかし未だに金縛りが解けずにいるのだった


「コイツの魔力ステータスが高いのと、俺の魔力ステータスが比較的低いのが原因だとは思うんだがな……」


先日、互いに見せ合ったステータスカードの内容を思い出してみる、前に確認した時は探索者組合に登録した後での事だったが、確かこうだったな


名前:灰村 奏多

年齢:16歳

性別:男

職業:傭兵(マーシナリー)操者(・ランナー)

称号:《異世界人》《焼き尽くす(ネメシス・ザ・)凶星(カルネージ)》《大番(ジャイアント)狂わせ(・キリング)


レベル:35

HP:2,100/2,100  MP:1,200/1,200

STR:1,350

VIT:900

INT:450

MND:450

AGI:2,200

名前:瑠璃・フォンテーヌ

年齢:16歳

性別:女

職業:錬金術師(アルケミスト)

種族:(ヴァンパイア)(・オリジン)

称号:《異世界人》《鮮血の(ブラッディ・)伯爵令嬢(ラ・コンテス)


レベル:24

HP630/630   MP2,700/2,700

STR:340

VIT:340

INT:2,200

MND:2,200

AGI:680


レベルは俺が現在35であり瑠璃は24なのだが、魔力ステータスを鍛えていないので俺のステータスはINT(魔法力):450とMND(魔法防御):450だ、レベル1の時の瑠璃の半分にも達しておらず、逆に瑠璃は魔力ステータスが一気に上がっており今では五倍に近い差となってしまっている


俺が完全なる物理特化に対して瑠璃が魔法特化、バランスとしては悪くないんだろうが、それがこの結果か


ステータスの上がり具合は、それまでの経験によってばらつきがあるらしい


例えば体を使った戦闘を行えば自然と筋力や防御力といったステータスの伸びが良くなり、逆に魔法を用いれば魔法力や魔法防御といったステータスが伸びる


何を重視して鍛えるか、その辺りが反映されるので指針としては分かりやすいシステムだな


今度からは俺もスキルを使う、スキルの中には魔法判定の物もあるらしいので今後は今までよりも伸びが良くなるだろう


とはいえ今後はそうなるとしても、今は全く抜け出せないのが問題なんだけどな


「ん……もう朝ね……」


「ああ、おはよう、瑠璃」


「おはよう、カナ……今日は鍛練はしてないのね、珍しい……」


その時、ようやく瑠璃が起きてくれた


まだ寝惚けているのか眠そうな表情で目を擦っているが、やがて俺の顔を見て、それから目が覚めたのか焦点がはっきりしてきたように見えるが、徐々にその顔が真っ赤に染まっていく


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」


「ぐはぁっ!?」


そしてビンタが飛んでくるが、動けない俺はまともに食らってしまう、俺は何もしてないのに理不尽過ぎるだろうが……


「な、何でカナが私と同じベッドで寝てるのよ!?」


「いてて……よく部屋の中を見てみろ。俺のベッドにお前が潜り込んで来たんだろうが」


「そんな訳―――って、こっちはカナのベッドよね?あれ、じゃあ本当に……」


「ついでに言うと金縛りも解いてくれ。夜中から動けなくて大変なんだ」


とはいえ起きたなら早速これを解いて貰いたい、動けない状態が続きすぎて体が凝り固まってしまっている気がする


「えっ?あ、《魅了の魔眼》ね。いつの間に使ったのかしら?」


「待て、お前の魔眼って一つじゃないのか?」


「設定ではそうよ。思い付いたら付け足していたから、今は《看破》《魅了》《石化》《未来視》《過去視》《千里眼》の六つね。でも使えるのは《看破》と《魅力》、それに《石化》の三つだわ」


「それはまた、チートっぽい能力だな」


名前からして能力が分かるが、どれもかなり強力だ


まだ見ていない《石化》は文字通りに見た対象を石に変えるのだろう、神話の怪物にはよくある能力であり対抗策も幾つかあるが、射程次第では対抗策が効かなくなる事もあるかもしれない


《未来視》は恐らく先読みの能力だと思うが、問題はその範囲だ


数年、数ヶ月、数日、数時間、数分、数秒、どれだけの時間を先読み出来るのかは分からないが、奇襲を受けないなどで効果は見込める、数秒先を見えるならば動きの速い敵の先手を取って事前に攻撃を放つ等も出来るだろう


《過去視》は《未来視》の逆バージョンだと思うが、これも使い方次第ではかなり強い、正体不明の敵の痕跡を見付けたとしても、過去の様子を確認してその姿形を見る事が出来れば初見殺しといった能力に対抗策を用意出来たりするだろう


《千里眼》、範囲がどの程度か、壁なんかは透過するのか、まだ分からないが遠くを見る事が出来るなら偵察とかに役立つだろうな


とはいえ、今の俺に必要な説明は《魅了》についてだ


「それで、《魅了》ってのは正確にはどんな能力なんだ?」


「それは、その……わ、私に好意を抱いてると、動けなくなるっていう……」


「それって、まさか……」


俺が瑠璃に好意を抱いていたという事の証明になる


いや、確かに瑠璃はかわいいし、俺だって嫌ってなんかいない、むしろ好きな方ではあるんだが……


「ち、因みになんだが、それってどのくらいの好意があれば発動するんだ?」


「えっ!?そ、それは……えっと…………………………その、愛してるっていうレベルなら、全身の動きを止める事が出来て………………あああ、何でこんな設定付けたのよあの時の私!?」


顔を真っ赤にして頭を抱えている瑠璃、確かに中二病の時はそういう設定を考えては後で思い出して黒歴史として悶える事になることが多々あるが、それよりも重要なのはやっぱり魔眼の効果だな


愛してる、つまりは好きのランクとしてはLikeではなくLoveの方だという事か、ふむ


「めちゃくちゃ恥ずかしいんだが……」


「こっちもよ……段々と思い出してきたわ、昨日の夜の事も。何で私、あんな恥ずかしい真似を……」


どうやら瑠璃も昨日の夜の事を思い出したらしいが俺はそれどころじゃない、俺が瑠璃の事を異性として意識していたと、能力によって判明した上に瑠璃に知られるとか恥ずかしさで死ねる


「でも、つまりはそういう事なのよね、カナ?」


「………………ああ、そうだ」


「な、ならその、私達は相思相愛って事なのよね」


「そういう事になるな」


「じゃ、じゃあ、カナ。私と―――」


だが恥ずかしがってばかりではいられない、自分の気持ちも本当は良く分かっていた、そうでなければ一つの組織を相手にあそこまで派手に敵対する事はない


だから俺は瑠璃の言葉を手で制して一度遮り、一度深呼吸して心を落ち着かせてから瑠璃に向き直る


「それは俺の方から言わせてくれ。瑠璃、俺はお前の事が好きだ。だから頼む、俺と付き合ってくれ」


可能な限り俺の中の想いを乗せるつもりで一言一言、しっかりと言葉にして告白をした


能力で分かっていて昨日の事があったとしても、俺は瑠璃が俺の事をどれだけ好いてくれているか知らない


だから少しの不安を感じつつ、告白の返事を待っていると、瑠璃は目に涙を溜めて、それでも笑顔で俺の方をしっかりと見据えながら一言だけ答えた


「はい!」


こうしてこの日、俺と瑠璃は恋人になった



王国の南東部に位置するファブルスの森と呼ばれる小さな森の外れには複数のテントが建っていた


日は落ち、辺りは暗闇に覆われている中で焚き火や篝火が明るく照らすその場所で王国軍と共に勇者達は夜営を行っている


巨大なテントを二組、それぞれ男女で別れて使用し、眠りについている間の警護は王国騎士達の役目となっている予定で、その前に夕食を摂っているところであった


「今日のご飯も硬いパンに塩漬け肉と豆とじゃがいものスープ。いい加減に飽きて来たッスよ~」


「贅沢言っちゃダメだよ、陽葵ちゃん。これだって旅先では贅沢な食事なんだからね」


「だけど奏多の話を聞いたらそう思うのはムリもないかもしれないね」


そんか中で陽葵、司、椎名の三人は同じ鍋を囲んでいた


しかしその献立は保存の効く食料で作られる物が殆んどであり、同じメニューが続いていた


しかしこれでも水を作り出す事の出来る高価な魔法道具によりスープ等の料理が手軽に作れるのに対し、普通の旅ではそのような道具がなく、硬いパンや塩漬け肉などを齧って革袋に入れた水を飲むだけなので、それに比べれば遥かにマシなのだ


「そうなんッスよねえ。奏多センパイ達が楽な旅を出来てるって聞いたら、そっちに行きたくなるッスよ」


「うん、確かにね。馬車もだけど、クッションを敷いてもお尻が痛くなるからトレーラーとはいえ車に乗ってるのはズルいと思うよ。でもボク等は自分でこっちに残る事を決めたから、今更泣き言はなしだよ」


「分かってるッスよ。でも次に会ったら互いに情報交換して今後の身の振り方を決める事になるから、少しは考えていた方が良いッスね」


「そうだね。でも、ボクたちはあまり情報を集められていないから、外に出ている奏多達の方が多くの情報を得ていると思うよ。やっぱり外に出た方が真実が分かるのかもしれないね」


「それなんッスよね~。普段の講義も図書室の本も、何処か不自然な点が多くて怪しさ満点なんッスよ。魔族が悪で長年争ってるとか言っていた割には何の動きもなくて、共存路線を行っている南のエクレニウス皇国とは海路を行く為に交渉中とか言ってるッスけど、下手したら皇国との戦争ッスよね?魔族ではなく、人間同士での戦争とかウチはやってられないッスよ」


「それはボクだって同じだよ」


献立への愚痴から、徐々に召喚を行った王国への愚痴へ変化していた


近くには他に人はおらず、可能な限り声を抑えて会話しているから他に聞かれる心配はないが、それでも王国側の耳に入るのはマズイ話をしている


それを理解しているからこそ周囲に注意しつつ三人は会話を続ようとしたが、そこに人がやってきた為に会話を中断した


「鈴音、こっちは準備出来たよ」


「正義、今日も私はこっちで二人と食べるから、ごめんね」


「そっか……なら、僕もこっちで食べて良いかな?久しぶりに一緒に話がしたいし」


「えっ?それは……」


やってきたのは桐生であり、椎名を呼びに来たのだが本人に断られてしまう


だがそれでも諦めずに同席しようとし、それに困ったような視線で椎名は陽葵と司を見た


「まあ別に良いんじゃないッスか?どうせ献立は同じなんッスから」


「そうだね。分量も少し足すだけだし、そこまで変わらないか」


そしてその視線に対し二人は桐生の同席を許可した


それには桐生も笑みを浮かべ、元居たグループの新嶋や佐倉、綾瀬といった面々に話しに行くと、何故かその三人までついてきた


「折角だから皆で一緒に食べようって話しになったんだけど、どうかな?」


「ハァ、まあ良いんじゃないッスか?」


「別に、ボクも良いかな」


「えっと、ごめんね、二人とも。何だか大所帯になっちゃって」


「鍋は持ってきたんだから大丈夫だって!それよりオレ等は二人とも話してみたかったんだよな!」


「そうですね。普段はあまり言葉を交わす機会がありませんでしたから、これからは力を合わせて戦っていく仲間として親睦を深めたいと思います」


「はいはーい、美月も!いっつも灰村君達ばっかと話してたから、話してみたいと思ってたの!」


新嶋、佐倉、綾瀬の三人は自分達のところから鍋を持って来ると陽葵達の鍋の横に置いて火にかけた


その鍋を囲むように六人で座り、完成までの合間に会話が始まった


「それで、何の話をしようか?君達は普段、どんな会話をしてるの?」


「んー、別に普通ッスね。ウチはセンパイ達と学年違うんで、特に決まってたりはしないッスね」


「そういえばそうだね。気になった事を適当に言い出してたら話が繋がって、そのまま別の話題にって感じだね」


「初めてと言っても過言じゃない面子だし、難しいッスね」


しかし特に話題という物がなく、司と陽葵は早々に難しい顔になってしまった


そこに両方の話を聞いている椎名が助け船を出した


「じゃあ、それぞれ自分の事を話せば良いんじゃないかな?お互いの事も分かるし、それなら話しやすいよね?」


「う~ん、自分の事をと言われても分からないッスね。じゃあ適当に質問して欲しいッス。可能なら答えて、無理なら無理と言うから何でも良いッスよ」


「あ、じゃあ質問!ひまりんってスキルがスゴかったよね!あれってコツとかあるの?」


「ひまりんって、ウチのことッスか?まあ良いッスけど。そうッスね、実はウチ、完全没入型(フルダイブ)VRゲームをやってるんッスけど、あのスキルは全部ゲームの中で使ってたスキルの再現、模倣ってだけッスよ。スキルを使う感覚と似てるから他より上手く出来てるだけッス」


「そうなんだ~。ならなら、勇者たちの中だとひまりんが一番スキル使うの上手って事なのかな?」


「いやあ、それは無いッスね。少なくとも二番にはなれても、一番はムリだと思うッスよ」


「えっ?でもでも、陽葵(ひまりん)のスキルって正義(まさっち)よりもスゴいんだよ?なら陽葵(ひまりん)が一番じゃん!謙遜しちゃダメだよ!」


綾瀬がそうフォローをしようとするが、それでも首を横に振ると陽葵は理由を口にした


「本当に二番なんッスよ。ウチじゃあどうやっても奏多センパイに勝てるイメージが浮かばないッス」

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