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異世界召喚の傭兵操者《マーシナリー・ランナー》  作者: RABE
第二章 流星《メテオール》
29/72

剣技《ソード・アーツ》

俺は自分の中に現れた感覚を忘れない内に標的用の案山子の前に立つ


それから距離を開けて目算で5メートルくらいの位置で剣を抜き、構えをとる


左手と左足を前に出し、右足は引いて剣を持つ右手は肩の高さ辺りで後ろに引くが、その切っ先は案山子に向ける


その構えを取る事で俺の中の感覚はより強くなる、まるで早く解き放てと急かすかのように


その衝動に突き動かされるがままに俺は右足を踏み出し、突きを繰り出す


「《雷光一閃》!」


その瞬間、俺は雷を纏い案山子の後ろへと移動していた、手応えはしっかりと腕の中にある、背後を振り返ってみれば鎧の胴体部の中心から右側に掛けて大きく抉られた案山子の姿があった


《雷光一閃》、ゲーム内では片手剣用の技であり雷を纏っての刺突技になる


射程距離はおよそ10メートル程であり、高速移動が可能な技という事で使い勝手が良い、俺だけでなく片手剣使いは重宝し、応用を含めてかなり多用した《剣技(ソード・アーツ)》だ


とはいえ少し鈍っているな、まあ三年か四年も前のゲームだ、さっきまで体が覚えていた方を誉めるべきか


「さて、と。《鎌鼬》!」


今度は両手剣用の技であり、高速で振り抜く事で空気の刃を飛ばす一撃を放つ


剣士でありながら放てる遠距離攻撃であり、風属性の魔法が付与されて威力が底上げされており、ボロボロの鎧の兜が斜めに両断された


さっきの一撃で徐々に勘を取り戻してる感じはするがまだまだだな、今の一撃は鎧を斬った途端に霧散してしまった


バスタードソードは両手剣よりも軽いから振り抜く速さは当然ながら上だ、この技に関してはバスタードソードの方に分があるにも関わらず鎧しか斬れていない


昔ならもう一撃分の威力はあった筈なのに、確実に衰えてる


「マズイ、これじゃあ全然あの頃に届いていない」


《ソード&マジック》のシステムアシスト無しで鍛えられた剣技により続編の《ソード&マジックⅡ》では対人戦においてバスタードソード使いで頂点に近いと言われていたあの頃に比べると素人同然の動きじゃないか


「鈍ってる……本格的に鍛え直さないと……」


「いやいやいや!?今ので鈍ってるのか!?お前、どんだけ強いんだよ!?」


「ん?誰だお前?」


今の独り言を聞いていたのか、同年代くらいの探索者の男が驚いたような顔で突っ込みを入れてきていた


赤毛のツンツン頭な男で革鎧に身を包み、その下の肉体はそれなりに鍛えられている


身長は俺より少し高いくらいで、人懐っこそうな笑みを浮かべて目を輝かせていた


この場に居るなら物理的な武器を使う人間なのだろうと腰の方を見ると得物は俺と同じくバスタードソードの様だ、珍しい


「お前、何で初っぱなから《武術》が使えてるんだよ!?それもあんな威力!本当にオレ達と同じランクなんだよな!?」


「煩いな、少し落ち着け。《剣技(ソード・アーツ)》自体は四年くらい前から使えた。今回はそう、その時の勘を取り戻す為に参加したんだ。ただしランクはF、探索者組合には昨日登録したばかりの正真正銘の新米だよ」


「へぇ~、四年って言ったら幾つの時だよ!?お前スゴいヤツなんだな!ああ、オレはフェデリコっていうんだ。南の方にある農村出身だ。ランクは同じくF、三日前に登録したばかりなんだ、よろしくな」


「奏多だ。得物はバスタードソード、お前もだな?」


「おう、オレの親父が昔使ってた剣なんだぜ!なあなあ、同じバスタードソード使いのよしみでオレにも《武術》を教えてくれねえか?さっき二つも使えてたから、一つくらいならオレにも使えるだろう?」


結構図々しい奴だとは思うが悪人ではないのだろう、同じ武器を持った人間なら同じ技が使えると思うのも道理だ


袖振り合うも多生の縁、とも言うし同年代、同ランクの友人を作ってもおきたかったから俺はフェデリコに《剣技(ソード・アーツ)》を、この世界風に言うのであれば《武術》を教える事にした


「まあ、それは良いけどな。取り敢えず、お前はその剣をどうやって使うのが一番得意なんだ?」


「どうって、剣は思いっきり敵に叩き付ければ良いんじゃねえのか?」


「いや、確かに両手剣とかならそうだが、片手剣やバスタードソードは違うだろう。特にバスタードソードは片手剣と両手剣の中間武器だ。片手と両手の使い分け、それに加えての刺突技、使い方が幾つもあるんだからそれに得手不得手があってもおかしくないだろう」


「そうなのか!?」


「おい」


この男、もしや単に振り回すだけで魔物との戦いも乗り越えられると思っていたのではなかろうか


「はあ~、仕方ないか。取り敢えず一通り振ってみろ。片手、両手、刺突、全部見てそれから決める」


「分かったぜ!」


それからフェデリコはバスタードソードを振るったが、振るうのは良いのだが刺突があまり勢いがなかった


単に慣れていないっていうのもあるんだろうが、総合的に見れば両手で振るう方が得意そうだな


正直、これなら両手剣を持たせた方が良さそうなんだが、父親の剣を使いたいという気持ちがあるだろうから指摘はしないでおこう


「よし、大体分かった。取り敢えずお前がやるのは《鎌鼬》で良いな。単純な技だし、速ささえあれば繰り出せるからな」


「カマイタチ?さっきの見えない一撃の事か?」


「受ければ分かるが、あれは風の一撃だ。剣を鋭く振る事で風に刃物みたいな威力を持たせてるんだ」


「へぇ~、風であれなのか!なんか魔法にも似たような魔法があったな!」


「まあ、風魔法ならそうだろうな」


というかそのイメージがあるならやれるかもしれないな


《鎌鼬》は両手で使う技だが剣の振り方はどうでもいい、ひたすらに素早い一閃を放つ事が重要なのだ


その事を伝えて剣を振って貰ったのだが上手く発動しない


何度も何度も、繰り返し剣を振っては何も発動しない状態が続き、遂にはフェデリコの体力も尽きかけていた


講習の時間も残り少なくなってきたし、これで終わりだろうか


「ふうむ、発動しないな」


「ぜぇ……ぜぇ……速く振ろうとしてるのに、何でなんだ?」


「速く振ってるだけじゃなくて、それで風の刃を飛ばすのが目的なんだけどな」


「あ……」


「おい、まさかとは思うが……」


「ワリィ、剣を振る事に夢中で風を飛ばすっていうのを忘れてた……」


道理で一切発動しない訳である、ようはフェデリコ本人のアホさ加減が問題だったのだ


「よし、ならもう一回だ。剣を速く振って風の刃を飛ばす、《鎌鼬》!」


「おう!剣を速く振って風の刃を飛ばす!行くぜ《カマイタチ》!」


お手本という事で俺も《剣技(ソード・アーツ)》を発動させ、後にフェデリコが続いた


俺の方は問題なく発動し、本命のフェデリコの方だが少し俺の方にも風が感じられた


気になる案山子の方は俺の方は鎧を両断して地面に切れ込みを入れているのに対し、フェデリコの方は鎧に傷はついた様子がない


完全に発動していない不発かと思ったが次の瞬間、鎧が外れて地面に落下している


見れば肩の辺りを留める革紐が鋭利な刃物で切り裂かれたかのように綺麗な断面をしていた


「なあ、これって斬れたのか?」


「そうだな。まだ鉄を斬るには足りないが、ランクの低い魔物を相手にするなら大丈夫なんじゃないか?流石に硬すぎる相手には通用しないと思うが」


少なくともゴブリンやホーンウルフといったFランクの魔物相手なら十分だとは思う、後はフェデリコの研鑽次第だ


「いぃぃぃやったぜぇぇぇ!ありがとうな、カナタ!お陰で初めての《武術》に成功だ!」


「どういたしまして、と言いたいが練習を怠るなよ。他の技も考えて、しっかりと使いこなせるようになるんだぞ」


「おうよ!いやあ、それにしてもスキルってあんな感じに使うんだな!オレ、なんか感覚掴んだ気がするぜ!」


「そりゃ良かったな。とはいえ感覚を忘れない内にもう少しやるぞ。行けるな?」


「平気だぜ。使えるって分かったら急に元気が湧いてきやがった!」


まあこれでモチベーションが上がるのは当然だろう、フェデリコは張り切って剣を振るい、威力にばらつきはあるがちゃんと《鎌鼬》を発動させている


俺も懐かしい気分だ、俺自身が初めて《剣技(ソード・アーツ)》を使えた時や、他の初心者プレイヤーに教えていた時の事を思い出す


後は時間一杯まで練習を続ければ良いだろう、使い方が身に染み付いたら今度からは自分で訓練も出来るだろうしな


さてと、俺も他の技の練習をするか、可能なら連続技も使いたいがまずは基本を思い出さないとな


そう構えを取ろうとしたところで、背後から誰か近付いてきた


見れば他の探索者達がずらっと並んでいる


同年代から俺より年上まで、その年齢や性別、使用する武器は様々で纏まりがない


「なあ、アンタ。おれ達にも教えて貰う事って出来るか?」


「あ?それは構わないが、俺にか?見たところ、アンタ両手剣使いだろう?あの講師のところには行かないのか?」


「そうなんだが、見込みがないって追い出されたんだ。でもそこのフェデリコ、二日前からてんでスキルが発動する予兆すらなかったコイツが発動させてるだろう。なら、アンタに習った方が良いと思ったんだ」


先頭に立っていた両手剣使いの男が代表してそう言う、見ればヴィゴールは少し離れた位置で他の面々、少しスキル発動の予兆を見せる探索者のみを指導していた


見込みのない奴はあっさりと切り捨てる、そんな姿勢が見えるようで俺はヴィゴールに対して少し不快な印象を抱いた


「分かった、俺で良いなら分かる範囲で教えてやるよ。とはいえ残り時間が少ないからな、本当にやれる範囲でだが」


これだけの人数だ、全員に付きっきりで教えるという訳にはいかないし、武器の種類が多くて教え方が同じになるのはマズイ


これなら最初から教えない方が良いかもしれないくらいに中途半端な教えになってしまうだろう事を考えると、少し躊躇われるが熱意に応じたい


「本当か!?」


「ただ、時間が少ないのがな。せめてもう一時間あれば良いんだが」


「よし、探索者組合の方に相談してこよう!希望者が多ければ延長してくれるかもしれない!」


成る程、そういうことなら少しはマシな指導が出来るかもしれない、多めに見て二時間付き合うくらいなら大丈夫だ


「なら二時間くらいなら付き合えるぞ」


「分かった。誰か、受付の方で確認してきてくれ!」


「よし、任せろ!足なら自信があるんだ!」


「じゃあ他は訓練開始だな。とはいえ、延長されるか分からないから少し駆け足になるかもだが」


せめて触りの部分だけでも教えられれば御の字だな


「おーい、訓練場の使用時間、二時間延ばして貰ったぞ!」


「早いな!?まあ、それなら駆け足の必要はないか。じゃあまず武器の種類ごとに別れてくれ。それぞれ基本的なスキルを見せて、真似から始めようぜ」


『おぉ!!』


返事と共に他の探索者達が武器ごとにグループを作って集まっていく


剣が五人、槍が三人、弓が四人、斧とメイスといった当てはまらなかった奴等が四人か


「よし、まずは人数の多い剣士からな。取り敢えず、スキルの補助がある基本技の練習からだ。普通に斬るよりもスキルの補助があった方が威力は当然ながら高い。アイツは俺と同じ技を求めたが、普通は基本からだな。とはいえあの技は比較的簡単な部類だ。基本を習得したら応用で再現は可能だろう」


自らの想像力がスキルに発展するって話だからな、基本の斬撃が出来れば追加で風の刃を飛ばすだけだ


「まず手本を見せよう。基本的なスキルだからな、斬るという動きをより速く、より鋭く、より的確に放つ、その事だけに集中してやってみろ。槍使いや斧使いもだ。基本的な動きを、スキル無しの時よりも素早く力強く放つイメージを固めるんだ」


ゲーム内では無かったが、属性無しの通常の斬撃をスキルとして発動してみる


先程の《剣技(ソード・アーツ)》を発動した時の感覚を基にオリジナルのスキルとなるが、《鎌鼬》から風が無くなっただけだ、難しくはない


「まず普通の一撃がこうだ。そしてスキルを使用するとこうなる、《スラッシュ》!」


最初に普通の状態で全力で剣を振り抜く、そこそこ良い速度が出ていたが的にした鎧に傷をつけるだけに留まる


そして次に即席で名付けたスキルを使用した一撃を放つ、全く同じ軌道で放たれた一撃はしかし初めの一撃よりも格段に動きが速く刀身にはうっすらと青色の光が纏われて鎧を両断する


両断された鎧の上半分が放物線を描いて後方へと落ちていった


傷をつけるだけだった斬撃が鎧を切り飛ばしたのだからその威力の違いは分かって貰えたかな


「こんな感じに、単なるいつもの一撃さえスキルとして研ぎ澄ました一撃になれば威力としては申し分ない。いつも武器を振るっている感覚で自分の求める物を強く思い描きながら練習してみろ」


『応!』


俺の合図により各々でスキルの発動を行い始める


掛け声は俺と同じで《スラッシュ》にしていた奴が多いが、槍使いなんかは《チャージ》と叫んでもいる


そうやって自分に合った技の使い方を磨いていると、数回でスキルを発動させる者もいた


ヴィゴールという男がどれだけ適当な指導をしていたか分かったが、近接武器を持った連中は一先ずは放っておいて良いだろう


次は俺も上手く教えられるか不安だが弓を持った遠距離組の指導に入るとしよう

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