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異世界召喚の傭兵操者《マーシナリー・ランナー》  作者: RABE
第二章 流星《メテオール》
22/72

越境

《タラスク》に襲われていた村、後で地図で確認したところドルム村と呼ばれていた村から出発して三日が経ったところで、俺達は目的地であったカレスコ砦の近くまで来ていた


時刻は午後二時、この分なら今日中には越境が出来るだろう


途中、他の村に立ち寄ってウルフの毛皮や回復ポーションを換金したりも出来たから多少は資金も手に入った


その他にはこの三日間で回収した《鉄騎兵》の修理もハンガーで行えてその解析をしたり、新しい機体の構築を行ったり、機体の操縦系統を弄ったり、この世界についての情報をアーカイブで調べたりだ、特にアーカイブでは今後生活に困らないよう調べ尽くしたと言える


それによれば魔物を狩ったり危険地帯での物品の採取を専門に行う探索者組合(シーカー・ギルド)という物があるらしく、国家の枠を超えて世界中に支部があるのだという


報酬も貰えるし、実績次第では危険地帯への立ち入りの許可も降りる、この世界を調べて回りたい俺達としては所属しておきたいものだ


「もう少しで国境ね。それで、準備は大丈夫なの?」


「まあな。こっちはダンからの手紙を信じるさ。トレーラーもAFが兵器だからな、今後の無用な誤解を避ける為にも積んでるのは見せた方が良いだろう」


「例の、古代文明の遺物っていうシナリオね?」


「ああ、本当にあるみたいだからな、古代文明」


アーカイブで調べたら存在したのは事実であり、大陸には幾つかの遺跡が存在して国が発掘を行ったりもしているらしい


様々な物が発掘されており技術の発展に貢献している、《鉄騎兵》もそこから出てきた物を再現しようとして生まれた代物だとか


ただし未だに古代文明の防衛機構が動いているから壊れ掛けた兵器なんかが無差別に襲い掛かる危険地帯でもある


だから遺跡の探索も探索者組合で許可が降りたら入れるらしい、少なくとも民間人で入れる手段は探索者組合しか存在しない


その遺物を俺達はそれを偶然入手した、本格的に設定を詰めて話し合ったから聞かれても齟齬は出ないだろう


遺物の所有権は手に入れた者に優先権があるという話だから寄越せと言われても突っぱねる事が出来る、そもそもは俺の能力で出した物だから渡せないのだが


「後はエクレニウス皇国の方だが、そっちも同様だな。流石に外から兵器を持ち込むんだ、結構な時間が掛かると見て間違いない。こっちは正直に全部話す必要があるかもな」


王国に勇者として召喚されたが魔族なので逃げてきた、ステータスカードに表示される《異世界人》の称号を見せて説明する必要があるかもしれないが、その時はその時だ、少なくとも王国にいるよりはマシだろう


密入国出来るかもしれないが、後々面倒になりそうなので却下だ


「つまりは『高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に』という事だ」


「要するに行き当たりばったりって事ね」


「言うなよ、俺は別に犯罪のプロって訳じゃないんだから」


戦術、戦略なら少し齧ってるからな、ゲームで言えば戦闘関連での能力に特化してるユニットなんだよ、俺は


ほら、そうこう言っている内にカレスコ砦が見えてきた、もう腹を括るしかないぞ


「止まれ止まれ!一体何者だ!?」


カレスコ砦は平野の中にポツンと建っていた、国境沿いに造られている事から恐らくは見晴らしの良い場所に作って敵の発見を第一に考えているのだろう


少し小さめの街道をトレーラーで進み砦の近くまで来ると衛兵が出て来て槍を掲げて行く手を阻む


ちゃんと手続きを受けて出国するつもりだから大人しく停車し、運転席から降りて対応した


「旅人だ、出国の手続きをしたい。それと、モーガンっていう名前の百人隊長は居るか?手紙を預かってる。ドルム村の出身の筈なんだが」


「モーガン隊長だと?分かった、少し待ってろ。いいか、おかしな真似はするなよ?おい、ちょっとこっちに来てくれ!」


他の仲間を呼び衛兵は砦の中へと走っていった


俺は他の衛兵達に囲まれながら待つとして、どれだけ掛かるかな


「おい、これは何なんだ?荷馬車にしては馬も居ないし、何よりもデカい。一体何があるってんだ?」


「ん?ああ、小さな家が入ってる感じだな。それと、《鉄騎兵》が三機だ」


「《鉄騎兵》だと!?それも三機……隊長の件といいお前、一体何者なんだ?」


「単なる旅人だ。少なくとも、俺はそうとしか考えていない」


その中で一人の衛兵が俺へと話し掛けてきた、幾つかは答えるが何者かと言われても、今は旅人としか答えられない


別系統の組織とはいえ、教会から追われているなんて素直に言う訳がないだろう


なおも食い下がろうとする衛兵だがそこに一人、他の衛兵達よりも鎧の装飾が多い人物が現れた、恐らくは呼ばれていたモーガンという隊長だろう


「報告を受けて来た。お前が手紙を預かってるという者か?誰からだ?」


「百人隊長のモーガン、で間違いないみたいだな。ドルム村に住んでる親父さんからだ。確認してみてくれ」


「ふむ、分かった」


手紙の封を開け、中身を出して目を通すモーガン、一通り目を通すと一つ頷き俺に視線を戻した


「確かに我が父の字だ。そうか、魔物に村が襲われたのを救ってくれたのか。感謝する、旅人よ」


「通り掛かっただけだ。それに、積極的に関わろうとしたのは俺じゃない、もう一人の連れだ。瑠璃、降りてきて良いぞ」


対応は俺がしていたが、誠意を見せるという意味で瑠璃の事はちゃんと姿を見せた方がいい


だがそれで何かあれば相応の対応を取らせてもらう、そのつもりだ


「魔族、吸血鬼の少女か。確かに手紙にあった通りだな。ついてくるといい、手続きは任せてくれ」


「良いのか?」


「恩人の頼みだし、何よりも十年前にはよくあった事だ。あの頃は同じように国内から逃れようとした魔族が多かった。まだ王国軍は積極的に魔族を狩るように命令してはいない。今ならまだ出国の手続きをするくらいは平気だ」


そう言って砦の門の近くにあった受付で書類を記入するように促しす


この世界の文字は言語と同じくいつの間にか理解出来るようになっていた、そして書く事も問題ないレベルで身に付いているから書類の内容をしっかりと確認してから記入していく


身分証としてはステータスカードを提示したが、名前の確認だけだから俺達が異世界人だという事は露見しなかった、そして手続きは終わった


「後はこれを。正式に王国から来た事を証明する書類だ。この先に行った所にあるエクレニウス皇国側の砦で必要になるだろう」


「意外とあっさり終わるもんなんだな」


「人となりは父からの手紙で聞いているから信頼が置ける。よって本来なら荷車の中を全て調べるところだが、わざわざ《鉄騎兵》三機と申告してるからな。一機で良いから確認させて貰えるか?」


「分かった、今から出す」


左手首の端末を操作、ハンガーから出たのはこの間回収した《鉄騎兵》だ


この世界でのダミー用に装甲の形状を変えたり、色を黒に塗り直したりと手を加えてある


そのまま教会の物を使用しても面倒な事になりそうだからな、もっと解析が進んだらベースにして色々と改造するつもりだ


今はまだ手持ちの機体の中でも最弱だが、魔力炉という魔核を動力源としている点から俺の知らない未知の可能性を秘めている、そうでなくてもいらなくなれば売れば良いのだ、元手はタダなのだから


「成る程、確かに申告通りだな。よし、もう通って良いぞ」


「ありがとう、助かったよ」


「此方こそ、父を助けてくれた事に礼を言いたい。ではな、これからの旅が良きものである事を祈る」


そう言って俺達はカレスコ砦を越える事が出来た、モーガンという人物もドルム村の人達と同様な温かな雰囲気を感じられた


それからトレーラーを走らせて、十分もしない内に新たな砦が見えてきたが、あれがエクレニウス皇国側の砦だろう


後は此処を乗り越えれば晴れて王国からの脱出という事になるのだが、そこで少し予想外の事態が起きた


「はい、通っても良いぞ」


「は?」


この砦でも同様の手続きを行った、ただ書類の内容が入国の目的やら違法品の持ち込みの有無などに変わっているだけだ


そして目的は探索者組合への登録として、危険物の持ち込みの欄に《鉄騎兵》と書いておいたのでてっきり審査があるのかと思ったらステータスカードの確認だけで終わった


それも名前だけでなく称号の欄もチェックされたにも関わらずだ、犯罪者であればそこに罪名が表示されたりするらしいから分かるのだが、異世界人がスルーされるとは思わなかった


それにトレーラーの中身を確認したりもしない、これで密輸品とかあったらどうするつもりなのだろうか


いや、だからこそ称号の欄をチェックしたのかもしれないが


「どうした?通らないのか?」


「いや、あまりにも簡単には通すんだなと」


「ああ、それか。まあ色々とあってな。王国から出国してきた魔族というのが大きな理由だ。まあ最近になってはかなり珍しいが」


「あー、まあそれなら良いか。別に困るものでもないし」


拍子抜けだが、ステータスカードというある意味では強力な身分証明書があるのだ、多少は審査が緩くなったりするのだろう


それに魔族が王国で迫害されているのは周知の事実なのだろう、それから逃れてきたとなれば無理に追い返すという手段は取れない、そういう事だろうか


少し引っ掛かりはするが、許可が降りたのであれば先に進んでしまおう


「あ、そうだ。すまないが探索者組合に登録するなら何処かオススメの街はあるか?この国は初めてだから何も分からないんだ」


「それならストラスフォードという街が良いな。迷宮都市と呼ばれもする街で、周囲にダンジョンが多い事からそう呼ばれている。皇国北部では一番大きくて中心的な街だ。この先の街道をずっと真っ直ぐだから迷いはしないだろう」


「分かった、ありがとう。行ってみるよ」


ついでに衛兵に訊ねてみるとそう教えて貰った、まずはそこで探索者組合に登録して今後の活動をするとしよう


新たな目的地は迷宮都市ストラスフォードだ



エクレニウス皇国は北東大陸南部に位置する国家であり、皇国南部は海に面している事から魔人大陸との交易により発展している国である


その国土の中央から南寄りに位置する皇都エクレニウスには皇国の頂点である皇王の住まう城の他にも様々な施設が充実しており、区画整理により人々の往来はスムーズに流れ、各国から訪れた商人達により活気に満ち、まさに一国の首都に相応しい姿をしていた


その中に一つ、街の北部には大きな神殿があった、北東大陸北部意外で信仰されている十柱の女神、その内の一柱たる戦女神マルヴィナを奉る神殿である


大きく荘厳でありながら過度な装飾はなく質実剛健といった印象を見る者に与えるその神殿の一角で祈りを捧げる者がいた


白い法衣に身を包み、儀礼用の短槍を抱えて微動だにせず一心不乱に祈りを捧げるその少女の名をシャロン・ランドールという


それ自体が光を放っているかのような艶やかな金髪を肩の辺りで短く切り揃え陶磁器のように白い肌を持つ美しい少女は、しかしその目には黒い布を巻いて隠しており彼女が盲目である事を示している


与えられた個室で槍と剣を持った戦女神マルヴィナの像に向かい祈る彼女の下に廊下から一人の人物が入ってきた


「ランドール様、今しがた国境より報せが届きました」


「この声はウォルター様ですね。もしや神託に関する内容ですか?」


入ってきたのは同じく法衣に身を包む老いた男性であった


シャロンによりウォルターと呼ばれた男性は問いに対して肯定すると更に続けた


「はい、確かに先程、国境を越えた異世界人の称号を持つ者が二名、居ました。ランドール様が受けた神託のままに御座います」


「そうですか。知識神リリウム様のみを奉る北部の方々が異界より勇者として召喚したというのはやはり本当だったのですね」


「はい。ですがその者らは勇者としての称号を持たず、また力を覚醒させた際に魔族となった者が居た事で王国を離れたと話に聞いております。嘆かわしい事です、世界の危機に対処する為に神々が授けられた勇者召喚の秘術を戦争の為に利用しようなどと……」


「ええ、マルヴィナ様もそのように仰っていました。ただリリウム様の神殿にて覚醒を行ったので、お二人とも力が完全に解放されていないそうなのです。それぞれマルヴィナ様と創造神アーシュラ様に近い御方であり、その神殿でなければ力の完全解放には至らないとも言われました」


「なんと、それでは直ぐに此方にお招きして力の解放を行って頂くべきでしょう。直ぐに遣いの者を選びます」


「いいえ、なりません。マルヴィナ様は試練と仰っていました。時が来れば自然と此方を訪れると。その時まで此方から接触する事はならぬ、と」


「それは……マルヴィナ様であればあり得る事ですな」


「はい、そのお二人に関しても神託の内容は『黒髪の人間と銀髪の真祖の二人組が勇者達の中に居る。その二人は他の勇者とは違い自らの意志で世界に良い結果をもたらす、多分、きっと』でしたから……」


戦女神マルヴィナ、戦争のみに関わらずあらゆる勝負においても信仰される女神ではあるのだが、神話に於いても細かい事は考えずに突き進む豪快な女神として描かれている


そんな神からの神託だけに、二人は苦笑いを浮かべていた


「では、我らからは不干渉という事で宜しいのですな?」


「はい、いつか来るその時まで待ちましょう」


そう言って微笑むと彼女は再び祈りに戻った


シャロン・ランドール、皇国において彼女は戦女神マルヴィナにより見出だされた聖女として知られていた


彼女は今日も祈りを捧げる、信仰する女神に対し、戦争の緊張感が高まる皇国と王国に対し、その影響を受けるであろう民に対して、慈愛の心で以て祈っていた

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