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異世界召喚の傭兵操者《マーシナリー・ランナー》  作者: RABE
第二章 流星《メテオール》
20/72

旅立ち 2

窓の端からこっそりと外を窺えば村の入り口で停止した《鉄騎兵》の他には二頭引きの馬車が五台程見える


その内の一台から騎士が十人程降りてきており、恐らくは他の馬車にも物資と《鉄騎兵》の整備要員が乗っていると思われる


騎士の中で一人が前に出てくると、村の人間ではダンを中心に対応していた


『我々はリリウム教の白金騎士団である。此度は任務により訪れたが、この村の惨状はどのような経緯があってのものか?』


ヘッドホンからマイクで拾った音が聞こえてくる、会話をちゃんと把握できるからこのまま俺はマイクを向け続けた


『この村は魔物の、《タラスク》二体の襲撃を受けてこの様だ。村長が死んで今はオレが臨時で取り仕切ってる』


『成る程、その魔物はどうした?』


『先日討伐された。珍しい《鉄騎兵》を持つ二人によってな。今は復興の最中だ』


『ふむ、その者達の種族や外見は分かるか?それと討伐したというその二人組はその後どうした?』


『まだ若い男女二人組だ。共に人族に見えた。そして討伐した後、昨日村を出た。確か、西に向かうと言っていたな』


確かにダンは上手く誤魔化してくれるようだ、南に向かう予定だったのを西と言って連中の追撃を撹乱までしてくれた


後は連中が信じて西に向かっていけば時間をずらしてから南に向かうだけで良い、例え西に居なかったとしても見付けられなかったか、俺達が行き先の嘘をついていたと言えば疑われる事はないからな


それにしても嘘の中に真実を混ぜ混ませるか、なかなかに策士だな、連中の任務は俺達の追撃だろうからその組み合わせの二人組となれば連中にとってその情報の信憑性は増す


『成る程、事情はよく分かった。貴殿らに女神リリウム様の加護のあらんことを』


『ああ、それはどうも』


そしてダンの言葉を信じたらしい教会騎士、そのまま帰ってくれれば良いのだが、どうやら連中はトラブルを起こす事に関しては天才的らしい


『ところでその二人組は他に何もしてはいなかったのか?』


『というと?』


『なに、その者らは我々の追っている大罪人だ。穢らわしい魔族の分際で神聖なる女神リリウム様の神殿に入り込んだ挙げ句、それを庇った背信者である』


『それは、そうだったのか……』


入り込んだ、ね……自分達で呼び寄せておいてよく言うものだ


とはいえ連中がこんな言い方をするのは予想の範囲内だ、気にする事でもない


『とはいえ首都に於いて起きたばかりの事件だ。何も知らぬ貴殿らが責任を感じる必要はない。吸血鬼の女も恐らくは人族の振りをしていたのであろう』


『確かに、気づきかなかったな……』


『そうであろう。全く、やはり魔族というものは根絶やしにすべき悪しき種族なのだな。もしかすると魔物を誘き寄せたのもその二人かも知れぬぞ?楽に討ち取る為に、この村を囮にしたのだろうよ』


『いや、遠目に見ていたがそれはないだろう。連中の持つ《鉄騎兵》はあの《タラスク》を正面から打ち破っていた。わざわざそんな小細工を弄するくらいなら初めから仕留めていた筈だ』


ダンの口調には僅かだが怒気が含まれていた、だがそれはこの状況では悪手だ、今までは余裕そうな顔をしていた教会騎士の顔が憤怒に歪む


「マズイな……」


今の俺達を庇うような発言により騎士の怒りを買った


宗教絡みの人間は何をしでかすか分からない、俺はマイクを持ったまま家の外へと出て物陰に隠れつつ《アイテムインベントリ》から装備を出していく


狙撃用に購入していたライフル、M14EBRだ


使用弾種は7.62×51mmNATO弾であり、大戦後に開発されたスプリングフィールドM14を近代化改修した物で米陸軍を中心に配備されているマークスマンライフルになる


その銃を持ち地面へ伏せて銃身下部に追加で取り付けてある二脚(バイポッド)を立てて安定させると、その10倍から50倍まで倍率変更可能なスコープを覗き込む


『それが奴等の手口だと言っているのだ!手を貸し、信用させ、ここぞという時に裏切り困惑する様を嘲り嗤う!それが魔族の本質なのだ!貴様、既に奴等に拐かされたか!?』


『いや、そんな事は……ただ事実を述べたに過ぎない、それだけの力を彼等は持ってたんだ』


『黙れえぇぇぇ!やはり連中に惑わされたようだな!魔族とそれに与する者に味方するとは、万死に値する!その首、この場で落としてくれるわあぁぁぁ!』


ダンの言葉にも耳を貸さず教会騎士は剣を抜き放って上に構えると振り下ろそうとした


だが俺の方が早く引き金を引く事で阻止する、教会騎士の右手に命中した銃弾はその手を貫通し、剣を弾き飛ばす


『は………………?』


教会騎士は自分の身に何が起きたのか理解していないのだろう、間の抜けた声を出して自分の右手に視線を向けていた


その手から滴り落ちてくる血が顔を汚していくのを見てようやく負傷した事に気付き、その顔は驚愕から苦痛へと変化していく


『ぎ、あぁぁぁ!?お、オレの腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』


『い、今のは……』


腕を押さえ痛みに呻く教会騎士と、何が起きたのか理解できていないダン、そしてそれを傍目から見ていた事でまだ冷静だった他の教会騎士達が発砲した際の音に気付いており、俺の方へと視線を向けていた


『居たぞ、あそこだ!大罪人、カナタ・ハイムラだ!』


距離にして約700メートル、顔の識別が難しいだろう距離で俺の事を断定したのは驚いたが、やるべき事に変わりはない


伏射から膝立ちに姿勢を変え、抜剣した教会騎士達の足に狙いを変えて発砲を続ける


相手は銃の特性を知らず直線的に俺の方へと向かって来ており、最初の狙撃の時から使用していたスキル《集中》の効果もあってか次々に命中してはその場に倒れる者が出てきた


それで俺が目に見えない速度の遠距離攻撃をしていると把握したのだろう、当たらない為に残った数名の教会騎士達は近くの建物の陰へと身を隠す


『《鉄騎兵》だ!《鉄騎兵》で奴を押し潰せ!』


そこで命令を受けてか三機の《鉄騎兵》に動きが見えた


直線的に移動するには負傷した教会騎士達が邪魔になるからか真っ直ぐに向かっては来ず、それぞれ挟み込む形で俺へと近付いてきたのだ


「的確な指示だな、あの指揮官らしき男が倒れてからの動きも早い。優秀な副官がいるという証拠だな」


M14EBRをインベントリへと収納し、代わりに購入していた対戦車用の装備を取り出す


まずはMGL-140、六発装填可能な40ミリのグレネードランチャーだ


普段は榴弾を使い物陰に潜んでいる敵とかに使うのだが、今回の使い方はAFWに於ける対AF戦闘としては基本的な物になる


右手側から二機、反対から一機の《鉄騎兵》が駆けてくるが落ち着いて二機の方にMGL-140の砲口を向ける


《鉄騎兵》の頭に向けて狙いを定め、引き金を引くとポンッというガスによって発射されるグレネードランチャー特有の音に続いて打ち出された弾が飛んでいく


そして《鉄騎兵》の頭の高さ辺りで爆発すると広い範囲に煙幕が広がる、撃ったのはゲームで買えるスモーク弾であり、発射して一定時間で起爆し煙幕を張るのだ


『な、何だ!?』


立て続けに残った五発も発砲、それも同じく一定の距離を飛んだ後に起爆し、煙幕を広範囲に広げていく


それにより足止めされた敵を一旦は置いておいて、左手側の《鉄騎兵》に向き直る


『小細工を弄したようだが、此方には足りなかったようだな』


「いや、これで十分だよ」


弾切れとなったMGL-140は傍らに置き、インベントリから出していた装備の内の一つを担ぎ、迫る《鉄騎兵》へと向けた


SMAWロケットランチャー、これもまた米海兵隊で使用されているロケットランチャーであり、83ミリの砲口からロケット弾を発射する対戦車、対建築物用の火力支援兵器である


ゲーム内でも歩兵がAFにダメージを与える為の兵器として重宝されていた


「後方確認良し。喰らえッ!」


無反動砲と呼ばれる兵器は反動を消す為に前に飛ぶ砲弾とは正反対にも何かを発射するようになっている


SMAWロケットランチャーの場合はガスを発射するのだが、このガスの勢いだけで最悪人を殺せる


だから後方に誰もいない事を確認してから撃つ、スキルの効果か冷静な思考が出来ているから助かる


光学照準器を覗き込み、狙いをつけて引き金を引く


先程の狙撃で学習したのか、俺の直線上に居るのはマズイと判断したらしく止まって方向を変えようとするが遅い、その止まった時を狙って発射された対戦車用のHEAA弾が右膝を破壊した


一撃で右膝から下を失った《鉄騎兵》はその場で崩れ落ち、前のめりに倒れていく


まずは一機撃破、続けて煙幕に足止めされている二機に向き直り、SMAWの後方の弾薬ケース兼発射管を新しい物に取り替えてから照準器を覗き込む


視界の利かない中で下手に動けないのだろう、それでも棒立ちでいるのは誉められた物ではないが、構わずに膝の間接部を狙って引き金を引いていく


人型兵器の弱点は間接だ、可動域を広く作る必要があるだけにどうしても装甲が薄くなってしまう


そして足を破壊してしまえば人型であるが故に立つ事もままならない、手段さえあれば無力化してしまう事は簡単なのだ


ついでに完全に動けないようカメラのある頭や手足も新たに三発のロケット弾を使って潰しておいた、念には念をだ


そして武器として手持ちの中で近中距離では一番適しているMK17を構えて教会騎士の連中が隠れた建物の陰に近付いていく


建物から少し距離を取り、いつ飛び出してきても発砲出来るように構えつつ見てみると、少し拍子抜けした


剣を捨て、両手を上げて両膝をついた教会騎士達の姿を見付けたからだ


「何のつもりだ?」


「降伏する……」


「意外だな。宗教狂いというのは敵に降伏するくらいなら死を選ぶと思っていたんだが」


「我々はあんな狂信者共とは違う!ただ単に兵士として教会に仕えているだけだ!」


「成る程、まあ揃いも揃って狂信者だらけならまともに宗教戦争も出来ないか」


異教徒や他種族の排斥に集中し過ぎて撤退すべきタイミングを逃して全滅とかが連続して戦線の維持すら出来なくなりそうだ


目の前に居るコイツ等は注意するにしても放っておいて問題ないだろう、問題があるとすれば―――


「グァッ!?き、貴様……」


「狂信者、か。そこまで御大層なものなのかね、女神様とやらは」


―――バイザーのレーダーで把握していた、最初に手を撃った教会騎士の男だろう


無事な左手で剣を握り、俺の背後から忍び寄って来ていたがレーダーに赤点で写っていたから分かっていた


振り向き様に左腰のホルスターから抜いたHK45Tを二回発砲、両膝を撃ち抜いて無力化する


「おのれ……背信者め……」


「立場が分かっているのか?生殺与奪の権利はこっちが握ってるんだぞ?」


「貴様に屈するくらいならば死んだ方がマシだ!それに只の死ではない、我等は死して女神リリウム様の身許へと誘われるのだからな!これは殉教である!」


「そうか、ならお前は絶対に殺さないでおこう」


「は…………?」


向けていた銃口を下げ、安全装置を掛けてからHK45Tをホルスターに戻す


痛みに歪んでいた顔が思わず口をぽっかりと開けた間抜けな顔になる程、男は驚いていた


ろくに動けもしないから放っておいて俺は再び残りの騎士達に向き直ったのだが、まだ後ろから喚く声が聞こえてくる


「ま、待て貴様!?何故オレを殺さない!?」


「死んでも構わないって本気で思ってる奴に殺すなんて脅しても何にもならないだろうが。それに、生かした方が苦痛そうだからな。『憎むべき敵にわざと生かされた情けない男』、その方が苦痛だろう?」


「き、き、き、貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


まあ、俺が人を殺したくないっていう理由が大部分を占めていて今のは単に誤魔化しただけなのだが、思ったよりも効果があったらしい


さて五月蝿い奴は無視しておいて改めて残った騎士達に向き直る


「さてと、お前達には俺の要求に応えて貰うとしようかな」


そう言ってにっこりと微笑んだというのに、騎士達の頬は何故か思いっきり引きつっていた

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